破滅の魔術師は、人形姫に終焉の恋を捧ぐ /染井由乃



破滅の魔術師は、人形姫に終焉の恋を捧ぐ (電撃の新文芸) 【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★
2022年3月刊。
生贄となる日を粛々と待つ姫と、彼女の隣で物語を語る朗読師。
二人の恋がバッドエンドを迎えたところから始まるやり直しの物語です。
読みながら「血みどろ皆殺しのヤンデレ発狂エンドと、○○○○○○エンドどっちが良い?」と聞かれている気分になりました。地獄の二択か?
正直どっちも大好きですが、やり直しによって紡がれる幸せな悲恋の物語はとても美しかったです。心に響く表現がとても多かったなぁ。
終盤の展開も好み。最後までとても面白かったです!

☆あらすじ☆
生贄の姫と孤独な魔術師が織りなす、悲しき【運命のやり直し】の物語
王国を守る生贄の「人形姫」として育てられた王女コーデリアは、幼い頃失明して以来、専属朗読師の青年レイヴェルを心の支えに生きてきた。しかし生贄の儀式も間近のある日、レイヴェルの魔術によって国が滅ぼされてしまったと知る。優しい彼が何故……? 絶望するコーデリアに“女神”が救いの手を差し伸べた。視力を与えられ、一年前に戻った彼女は、レイヴェルが起こす災厄を必ず防ぐと決意する。たとえ彼を殺してでも。悲劇の運命を書き換えるために――!

以下、ネタバレありの感想です。

 

王国の安寧のため、18歳になると命を女神に捧げなければならない「人形姫」。

初っ端から設定が重い!!
若くして死ぬために囲い込まれ、王女ではなく「人形姫」として文字通りの人形のごとく扱われ、しかも母親から視力を奪われてしまった盲目のコーデリア
オブラートに包むことなくはっきりと人形姫のことを「生贄」と呼び、それを誇りある役目だとコーデリア自身が捉えてる事実が重くうて辛い。彼女はこの世の不幸を美しく形どったかのようだと思いました。

 

生贄としての運命を受け入れるコーデリアでも、実は密かに恋をしていて。
相手は、彼女が幼い頃からそばにいてくれた朗読師レイヴェル
けれど、その恋はあっけなく破滅を迎えてしまいます。コーデリアが命を捧げて守ろうとした王国をレイヴェルが滅ぼしたことによって。

 

ここで「ははーん?レイヴェルはコーデリアの命を救うためにその他の命を潰し尽くしたんだな!?さすがヤンデレ!」とか思った私は甘かった。
何が甘いって、そういう展開も確かにあるんだけど、それだけがレイヴェルの愛と歪みを示しているわけではないんです。

レイヴェルの歪みを感じるなかで特に面白かったのは、当初、彼はコーデリアの誇りある死を全うさせようと考えていたこと。
彼はコーデリアの望む「幸福な結末」を見届け、自分も後を追うことを夢見ていたわけです。
うんうん、それもまた病んでるね。。。

 

あとがきにヤンデレフルコースをしたかったとあったけれど、確かにこの作品はレイヴェルが抱える影の強い愛情を色んな角度から見せてくれた物語だと思いました。
前半の発狂も、中盤の皆殺し未遂も、終盤の終わりへと向かう蜜月も、どのシーンでもレイヴェルは隙なく優しく病んでいた。彼の背景を知ればコーデリアに恋焦がれる想いが痛いほど理解できるんだよなぁ。
染井先生はこの辺のキャラ造形、ほんと上手いですね。

 

レイヴェルが引き起こす破滅を回避しようと目指すコーデリアは、盲目の闇の中では知り得なかった様々な真実を目にしていきます。
残酷な現実が次々と彼女を襲うのだけど、苦難の運命に翻弄されながらも恋をし続けるコーデリアが紡ぐ世界が、私はとても好きでした。

私たちは互いに仲間外れだから、こうして巡り会えたのだ。
もどかしい葛藤を涙に溶かし込みながら、彼の温もりに寄り縋る。
きつく抱きしめあうこの瞬間が、永遠であればよかったのに。
それすら叶わないのなら、暁なんていらない。
未来なんてなくていいから、ただふたりきりでこの星の夜に、閉じ込められていたかった。

引用が長くなりますが、ここ、ほんと「この本を読んでよかったなぁ」と思いました。とても悲しくて、とても美しい。悲恋ゆえの儚くも繊細な感情。それに胸が苦しくなりました。

 

コーデリアとレイヴェルの悲しい恋は、終盤に向かうにつれてどんどん甘く、刹那的になっていきます。
切ないんだけど、このまま終焉を迎えても私は満足できるかもしれないな…と思えるくらい二人のもつ空気は幸せそうなんですよね。そこがすごく良かった。私はメリバは美味しくいただける派なのです。
ちなみに、冒頭で伏せたのは「ラブラブ心中エンド」です。やばいよね。

 

いろいろ書いたけれど、すっきりとした気分で読み終えることができたのも満足!とても面白かったです。

 

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