霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない /綾里けいし



霊能探偵・藤咲藤花は人の惨劇を嗤わない (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★
2021年11月刊。
面白かった!!
異能を持つ一族の「かみさま」になれなかった少女と、彼女の従者。
心の傷に苛まれながらも仲良く二人で暮らす主従が、様々な「人の生死」に関わっていく現代伝奇ミステリーです。
この主従関係、めちゃ良かったです。
互いに向ける感情は巨大で重いのに、微妙にすれ違っていて。それが哀しくて切ない。
それでいて怠惰な彼女をせっせとお世話する従者の姿が可愛くて和みました。空恐ろしく感じるほど一途で甘々なスパダリ主人公だった…!笑
生と死について残酷に描写していくミステリー要素も面白かったです。
早々と続編の刊行が決まったそうなので、今後も期待できそう。応援してます!

☆あらすじ☆
その少女は「かみさま」のなりそこない――。
藤咲藤花の元に訪れる奇妙な事件の捜査依頼。
それは「かみさま」になるはずだった少女にしか解けない、人の業が生み出す猟奇事件。
人の姿を持ちながら幽世のものに触れる異能をもつ彼女は、事件の解決に自分の居場所を求めて歩む。
そして、その隣には「かみさま」の従者として彼女を守る役目を負うはずだった青年・藤咲朔の姿が常にあった。
数奇な運命のもとに生まれ――そして本来の役割を失った二人は現世の狂気のなかで互いの存在意義を求め合う。
これは、夢現の狭間に揺れる一人の少女と、それを見守る従者の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

子どもの頃に引き合わされ主従関係を結んで以来、藤咲藤花のそばに居続ける藤咲朔
彼女が「かみさま」ではなくなり、主従関係を維持する必要がなくなった今もまだ朔は従者として藤花の世話をし続けているのです。一つ屋根の下で(同棲カップルじゃん)

ていうか、20歳の男子大学生が15歳のニート少女をめちゃ自然に介護してる!!
尽くし系彼氏にニヨニヨするオタク、朔くん好きでしょ……私は好き。
朔が藤花のためにリングフィット買ってきてバナナドリンクを作ってあげるくだりがなんか好きです。介護が手厚い。
朔、色々と小言を言うんだけど、口を動かしつつ手もしっかり動いてるんですよね。常に甲斐甲斐しくお世話してて可愛い。
そういう朔の優しさを無碍にしない藤花も好きです。リングフィットは討ち死にするよな。わかるよ。。。

 

しかし、そんな可愛い主従の背景にあるものはとても重いのです。

「ははん、さては僕が『劣化品』だから差別しているな。劣化品差別だ。訴えてやる」
「誰に」
「朔君に」
「お前には俺しか頼れる人間はいないのか」
「いませんよ!うわああああああんっ!」

この会話、ノリが可愛くて笑って読んでたけれど、二人の事情や想いを知ると何とも言えない気分になりますね。
自らを「劣化品」だと繰り返す藤花に染み付いた劣等感や自己肯定力の低さとか。
「藤花には朔しかいない」という「事実」を、二人はどんな気持ちで口にしているのかとか。
色々と考えてしまいました。

 

この二人は、本当に互いしかいない。でもそれは想いが通じ合っていることを意味していなくて。

 

「かみさま」になれなかった藤花に残った居場所は朔のそばだけ。
でも朔には他に望まれる場所がある。彼が藤花のそばにいる理由は彼の気持ち一つだけ。
それってどれだけ藤花を不安定にしているんだろう。自分が生きる価値すらわからない彼女は、朔に隣にいてもらう価値を自分に見つけられないわけですから。
なるべきものになれず、世界にただ一人いればいいと思う人の隣にいることにも負い目を持つ。
超越者にもなれず普通の人にもなれず、フラフラと「死」を見つめる藤花の姿は、彼女の背景を知れば知るほど哀しくなるものでした。

 

一方で、読者の私は朔の視点から二人の関係をみているから歯痒くなるんです。
朔が藤花に向けるクソデカ感情が強すぎて「藤花ちゃん頑張って!生きろ!!朔と共に生きろ!!!」と思わずにいられない。
藤花が死ぬときは朔が死ぬときだし、逆もそう。そんなフラフラと死を見つめるのはやめて、ただひとりの大切な人を生かすために生きたらいいじゃない…!
朔の想いが藤花に届いてなさすぎて切ない。藤花が「かつての主従関係に縛られてる」と思い込んでるその男は、藤花のためならセルフ目潰しも辞さない男ですよ。主従とか実際あんまり関係なかった。恋心に殉じる男だった。ほんと危ないから二人セットで永遠に仲良くこたつに入っててくれ。

 

主役二人の関係性についての感想が長くなってしまったけど、霊能探偵として二人が遭遇する様々な怪奇事件も面白かったです。
個人的には内臓落下連続殺人事件が動機に意表を突かれて楽しかったなあ。「天使の自殺」にネットが虜になるのはなんとなく想像がつくし、そういうネットの無責任で不条理なブームへのカウンターが面白くて。いや事件自体は笑えないくらい陰惨なのだけど。
そういう悲惨な事件が藤花の異能によって救いようのない結末を迎えてしまうのも、心がズキズキしつつ楽しめました。全くもって容赦のない話だ。

 

藤花と朔の物語はきれいに終わっていますが、続編刊行も決まったことだし、今後は他の異能の一族も絡めながら様々な怪奇事件が描かれていくのでしょうね。楽しみです。

 

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