鳴かぬ緋鳥の恋唄 /雨咲はな



鳴かぬ緋鳥の恋唄 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK⭐︎WALKER】

評価:★★★★
2021年2月刊。
すっごく良かった…!
舞台となるのは戦国の世。
島に流れついた少女と島の頭領である青年の出会いから始まる恋の物語です。
声も記憶も失くし、何ひとつ持たない寄る辺なき少女。
若くして頭領として立つために気を張り続ける青年。
それぞれが辛い重荷を抱えながらも、少しずつ歩み寄り、恐る恐る互いの心に触れていく。その焦ったくも甘酸っぱい関係性の変化にときめく物語でした。
そっと優しく琴線に触れるような筆致がとても心地良かった。
どうも続きものみたいなので2巻の刊行が待ち遠しいです。

☆あらすじ☆
過去を失った少女が、自らの居場所を見つける戦国恋物語。
戦国の世、とある島に一人の少女が流れ着いた。声と記憶を失くした彼女は島の頭領・千早に「ひな」という名を与えられ、しばし島で暮らすことに。ひなは千早にこれ以上迷惑をかけまいと自立しようとするのだが……。

以下、ネタバレありの感想です。

 

倒れた父に代わり千早が頭として治めるのは、海賊島としての顔を持つ羽衣島。
その島に流れ着いた少女に「ひな」と名付けた千早は、声と記憶をなくした彼女を本島の良家の娘だと推測し、彼女の出自がわかるまで島で面倒を見ることを決めます。
島での暮らしを始めたひなは、自分が何者か分からない不安を抱えつつも、優しい人々の手を借りながら自立した生活をしようと努力します。
最初は彼女を遠巻きに見ていた千早は、懸命なひなの姿に次第に惹かれていくようになりーー というお話。

 

ひなの失われた過去に一体何があるのか。
なぜ良家の娘と見られる姿にも関わらず海に落ちたのか。

何ひとつ自分のことが分からないまま、誰も自分を知らない場所で、声が出ないというハンディを抱えて始める新しい生活。
それはどれだけの孤独と恐怖に襲われる状況だろうと、想像するだけで鳥肌が立ちます。

でもひなは強いんです。
頼りなげで儚さのある風情なのに、一人で立とうとする心がとても強い。芯のあるヒロインって良いですよね。自分に何ができるのかをひとつずつ確かめて、ゼロから居場所を作っていくひなはとても格好良かったです。
もちろん島の人たちの優しい手助けがあってのことだけど、彼女の心が周囲の人々の優しさを引き出してるわけで。
ただ守られるだけ、ただ世話をされるだけの箱入りお姫様ではないんですよ。終盤で彼女の過去が明らかになると、余計にひなの気質が尊いものに思えました。生まれながらに身も心も抑圧され閉じ込められてきた少女が、自分の足で立って自分の力で生きていこうとするっていうのがね……

 

そして彼女のモチベーションの根底にあるのが千早への想いなのも良い。

(そうしたら、あの人は、ほんの少しでも後ろを振り向いてくれるのだろうか)

この一文、とても心に残っています。
ひなは恥じていたけれど、この「千早に振り向いてほしい」という淡い想いが、何も持たないひなが初めて抱いた願望なわけでしょう?可愛すぎる。
千早に向けるひなの想いは、いじらしくて切なくて、ぎゅうっと抱きしめたくなります。
名付け親を慕う「ひな」のように始まり、やがて恋にまで落ちていく少女の心の揺れ動きが本当に素敵でした。

 

そんなひなを、最初は警戒の目で見つめていた千早。
彼の気持ちの変遷はすごく良かったなぁ。ひなとの距離が少しずつ縮まるにつれて千早の強ばった心が解けていくようで。
頭としての冷たい顔が徐々に少年らしく柔らかい顔に変わっていくのが可愛くてたまらない気持ちになりました。

 

何も持たないひなと、多くのものを背負う千早。
二人の立ち位置は対照的なのに、「自分はどこへ向かうのか」と迷子のような心を抱えているのがそっくりで。
だから、そんな二人の心が近づいていくのも妙に納得できるというか、二人が寄り添う姿を自然に感じるのかもしれません。二人で笑い合う姿にすごくホッとするんだよな…

 

このまま何事もなく羽衣島で幸せに暮らしてほしいけれど、ひなの異能や本島の動乱の気配が不穏すぎる。
そこらへん微妙に消化不良に終わったと思ったのですが、WEB版を見ると前半だけが書籍化された感じなのかな??
続きもぜひ書籍化してほしいです。その前にWEB版も見に行こうかな!

 

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