オルコスの慈雨 天使と死神の魔法香 /染井由乃



オルコスの慈雨 天使と死神の魔法香 (メディアワークス文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★
2021年1月刊。
あとがきに書かれていたコンセプト(?)がこの作品の魅力を見事に示していると思うので引用します。
“暗い過去のせいで仲違いしてしまったが、今も互いに憎み切れず、軽口をたたき合いながら一緒にいる“
これが本作の主人公と幼馴染の関係性ですよ!めちゃくちゃ良かった!

殺意と憎悪で心が掻き乱れるのに、かつて抱いた慕わしさが消えてくれない。
今すぐ消えてほしいと思いながら、隣にいることが当たり前で自然に思う。
少年への愛憎に苦しむ少女と、少女だけに慈愛と執着を見せる少年のお話でした。
とても面白かったけれどプロローグみたいな内容だったので、絶対に続刊が欲しいです。よろしくお願いします!

☆あらすじ☆
その魔法には、香りと想いが込められている――。
 互いに偉大な魔術師と同じ魔法香を持つ孤児のシルヴィアとルグ。二人は優しい魔術師に引き取られ、日々幸せに過ごしていた。しかし、ある事件を境に溝が出来てしまう。
 それから数年後。16歳になった彼らの元に、名門と名高いフォルトゥナ魔法学園への入学案内が届く。期待に胸を膨らませるも、あまりにも珍しい二人の魔法香に、様々な噂が立ってしまい……?
 彼らの魔法香に秘められた謎、そして忌まわしき事件の秘密。魔法学園を舞台に、運命の歯車が回りだす――!

以下、ネタバレありの感想です。

 

孤児院で共に育ち、魔術師のアルに引き取られたシルヴィアルグ
ずっと一緒にいた二人の関係は、ルグがアルを惨殺したことにより壊れてしまう。
アルを殺した理由を語らないルグに対して憎しみを募らせながら成長したシルヴィアは、ルグと共に魔法学園に入学し、彼と「オルコス」と呼ばれるペアを組むことになるがーー というお話。

 

上でも書いたけれど、二人の関係性のコンセプトが本当に良いです。
ルグへの憎しみを募らせ、いつか殺そうという暗い願いを抱えるシルヴィア。
そんなシルヴィアの殺意に気づきながら、彼女の傍から離れないルグ。

表面上は幼馴染らしい気安い関係でありながら、ふとした瞬間に溝を見せる距離感なんです。それが切なくてもどかしくて。
シルヴィアがルグに抱いてるのは憎悪だけじゃなく、かつて彼を兄のように慕っていた気持ちも残っている。
いっそ憎みきれたら楽になれるのに、ルグが見せる優しさや彼のペパーミントの香りが幼い頃の慕わしさを思い出させ、その矛盾がシルヴィアの心を締め付けるんです。これぞ愛憎……

 

この魔法香の設定がまた素敵なんですよねぇ。
かつての思い出を呼び起こすきっかけであり、
香りを感じるほど近い距離感を示すものであり、
もはや素直になれなくなった互いへの気持ちを暗喩するものであり。
蜂蜜の香りは冷静なルグを落ち着かない気持ちにさせるし、ペパーミントの香りはどんな時もシルヴィアを落ち着かせるんですよ…!
うわああって転がってしまった心情表現!間接的なのに直接的!香りはその人そのものですからね!!

 

めっちゃテンション上げてしまった。

 

魔法を使うときにそれぞれの魔法香が匂い立つというのもいいですよね。
魔法学校ものとしても授業風景にオリジナリティを感じて面白かったです。
調香の授業とか楽しそうだったなぁ。まぁ、あのシーンを読んでる時は互いの香りを知り抜いているシルヴィアとルグに悶えて忙しかったんですが。

 

誰よりも近い存在に苦しい愛憎を抱え続けて疲れてしまったシルヴィアは可哀想で、ルグが説明してあげればいいのにとずっと思っていたんですが、彼も肝心なところを知らないから説明しようがなかったのか。
テロリストである世界樹派の存在、シルヴィアの前に現れた「あわいの魔術師」、そしてアルの正体。
色々な謎が残っていて、気になって仕方ありません。
そもそもシルヴィアとルグは何者なのか。
魔術師の始祖である天使と死神の再来と言われる二人に、一体どんな秘密があるのか。

 

ぜひぜひ続きをお願いします。楽しみに待ってます!
ところで今回のルグもだいぶ執着が病んでて狂気を匂わせていましたが、きっとこの先でさらに病むに違いない。シルヴィアもだいぶ病んでると思うし、これはもしやヤンデレ×ヤンデレのカップルになるのでは?(この二人を同時に怒らせた双子は馬鹿だなぁとおもいました)

幸福の象徴であると同時に、不可逆的にその人を壊し得る引き金になるということが、誰かの最愛になるということだ。

ここ好きすぎる。「最愛」の定義まで病んでて最高です。

それと染井先生の後書きのヤンデレ愛にふふっとなりました。素晴らしい野望だと思います。応援してます!

 

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