【WEB小説感想】リライト・ライト・ラスト・トライ /雨咲はな


異世界に召喚された少女と、彼女の護衛となった少年。
見知らぬ場所でも動じない少女を訝しげに見つめる少年は、彼女が背負う運命を何も知りません。
どれだけ切実で悲痛な思いが自分に向けられているのか、少年は何も知らないのです。

残酷な異世界で繰り広げられる少女の地獄と、彼女に手を差し伸べようとする少年の優しさ。
二人の関係性の苦しさと切なさに心を奪われ、揺さぶられ、悲鳴を上げながら一気読みしてしまいました。
あまりにも面白すぎた……最高でした!

☆あらすじ☆
神獣の守護人は、異世界からやって来る。
守護人の護衛官を務めることになった青年トウイ。そして選ばれた少女・椎名。
彼女の願いは、故郷への帰還ではなく、世界の安寧でもなかった。
──「望むものは、たったひとつ」

以下、ネタバレありの感想です。

 

「神獣の守護人」として異世界に召喚された女子高生・椎名希美
椎名の護衛官となったトウイは、初めて神ノ宮を訪れた椎名が慣れた様子であることや、彼女が自分に向ける不思議な眼差しを疑問に思いつつ、あっという間に死んでしまいます。

 

………ほう???

 

という感じで掴みから「なるほどループものね!」と分からせてくれる構成なのだけど、本作はトウイの死を回避しようとする椎名の最後のループを描いたお話です。タイトル通り、最後の挑戦が始まるのです。

 

その最後の挑戦に至るまでの椎名の道のりは、まさに地獄。
神獣の退屈を紛らわせるために始まった「100日間、トウイに迫る死の運命を回避する」というゲーム。

椎名はトウイが死ぬたびに二つの選択肢を与えられます。

それは、トウイの死の運命を受け入れて元の世界に帰るか、
出会いからやり直してトウイの死を阻止するか、
というもの。

 

意地悪…!とても意地が悪い!!
最初の出会いでトウイに救われた椎名にとって、トウイの死を回避できる可能性を捨てることはどうしてもできない。
「神獣の守護人」という空虚な肩書きしか持たない無力な少女が、国を巻き込む大きな災厄によって命を落とすトウイを守り切ることが、どれだけ困難なのか分かっていても。
こういう、優しさに救われたことで呪縛される話、とても業が深くていいですよね……辛いけれども。

 

そうして足を踏み入れた地獄は、トウイの死を繰り返すほどに椎名の心を蝕み、普通の女子高生だった椎名を変質させていきます。
危機にめざとくなり、俊敏に剣を振るい、権力者を翻弄するほど狡猾になり、表情も感情も動かせないほど心は張り詰めて。
変質した椎名は頼りがいがあるけれど、彼女の焦燥が伝わるだけに安心感は皆無。
トウイただ一人を救うために他の命を差し出してしまう罪を、彼女はずっと背負っているから。それが本当に痛々しくて悲しくなりました。
頼むから今度こそトウイは生き残ってくれ、椎名を解放してくれと願わずにいられないんです。

 

そんな椎名の運命を、何も知らないトウイ。
トウイ、優しくて直情型でちょっと考えなしで未熟な少年で、椎名の望みを知っている私は何度彼に「いいからそこでじっとしていて!」と願ったことか。
トウイは優しすぎる。自分の命を他者のために使うことに躊躇わないくらい優しいから怖いんです。
トウイのために命を取捨選択してきた椎名の前で、トウイが「命に優先順位はない!」と叫んだ時は絞め殺してやろうかと思ってしまった。知らないって残酷!君が椎名の優先順位ナンバーワンにしてオンリーワンだよ!

でもそんなトウイだから椎名は救われたんですよね。そんなトウイのまま救いたいと決意する椎名の気持ちもわかるんだよな……

 

途中までは優しさゆえに無茶をするトウイと、トウイを守るために無茶をする椎名にハラハラしていたのだけど、終盤になるにつれて二人の関係が変化していくと、その距離感にワクワクとドキドキが高まっていきました。

 

トウイ、最終的に本当に格好いいヒーローになりましたね。
優しい性格も直情型であることも変わらないまま、椎名への想いだけが変わることでこんなに頼りがいが出てくるのか。
特に神獣への啖呵が最高でした。閉塞した運命を切り開いたきっかけが少年の恋っていうの、私の好きポイントすぎる。

 

神獣といえば、登場する度にヘイトがすごいことになっていたけれど、最後のトウイに対する嫌がらせについてだけは「良い仕事するじゃねぇか…」と褒めてあげたくなりました。
あのまま椎名が目標を達成しても、彼女の傷ついた心はどうなるんだろうと心配していたので。
椎名の歩んだ道のりをトウイがしっかり理解してくれてよかった。椎名の想いを、彼女が一番守りたかった相手に伝わってよかった。本当に本当に良かったです。

 

椎名とトウイの関係性だけに絞って感想を書いたけれど、彼らが回避しなければならない「災厄」に迫る物語としても面白かったです。
特に中盤で旅に出てからは仲間たちとの絆が感じられてロードムービーのような楽しさがありました。まぁその道中にかつてないほどの地獄が用意されていたのは動揺したけれど。ニコの話は辛すぎた。たった一人の命を救うために選べない多くの命。選択肢があるゆえの苦しみだけど、そんなものは選択肢とは言わないのよ…!

 

ちなみに私の最推しはメルディさんです。めっちゃ好き。この物語の明るさを保ってくれている人だった気がします。

 

とても面白い作品でした。
今回はTwitter上でお勧めされたことに背中を押されて読んだのんだけど、以前からタイトルだけは聞いていたんですよね。評判が良く、ファンが多いのも頷ける。私もファンになりました!
雨咲はな先生の他の作品も読んでみたいと思います。

『リライト・ライト・ラスト・トライ』(小説家になろう)https://ncode.syosetu.com/n3326cw/

 

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