聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語 /春間タツキ



聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語 (角川文庫)【Amazon】【BOOK⭐︎WALKER】

評価:★★★★
2021年8月刊。
政争に敗れて追放危機にある聖女と、彼女のもとに乗り込んできた訳アリの騎士。
特殊な目を持ち洞察力に秀でた聖女は、騎士の腕力と真っ直ぐな心に助けられながら、彼が抱える問題の真実に迫っていくことになります。
次から次にトラブルが起こる波乱万丈なストーリーと、それを乗り越えながら絆を深めていく聖女と騎士の関係がとても好みでした。
ミステリー的な味つけも良かった。ぜひシリーズ化してほしいです!

☆あらすじ☆
王宮の謎を聖女が解き明かす!大注目の謎解きファンタジー。
霊が視える少女ヴィクトリアは、平和を司る〈アウレスタ神殿〉の聖女のひとり。しかし能力を疑われ、追放を言い渡される。そんな彼女の前に現れたのは、辺境の騎士アドラス。「俺が“皇子ではない”ことを君の力で証明してほしい」この奇妙な依頼から、ヴィクトリアはアドラスと共に彼の故郷へ向かい、出生の秘密を調べ始めるが、それは陰謀の絡む帝位継承争いの幕開けだった。皇帝妃が遺した手紙、20年前に殺された皇子――王宮の謎を聖女が解き明かすファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

不正な方法で聖女の地位を手に入れたとして糾弾されたアウレスタ神殿の第八聖女ヴィクトリア
亡母の遺産に紛れた手紙により、帝国の皇子であるとの疑いをかけられた騎士アドラス
互いに問題を抱えた二人は、アドラスの出生の真実を解き明かすため、手を取り合って神殿を飛び出してしまいます。

 

この序盤の神殿脱出シーンから面白かった。
なんといってもアドラスのキャラが立ってるんですよねぇ。敵地でもコソコソしない。堂々と正面突破。無茶苦茶なんだけど、その真っ直ぐさが格好良い。
相棒の片割れがこうも魅力的ならきっと面白い話になるぞ、という期待が高まるオープニングでした。

 

そして期待通りに面白いストーリーでした。
神殿相手に腕力無双したアドラスの次に活躍するのは、様々な真実を見通す「物見の聖女」ヴィクトリア。
魔力や幽霊を見るだけの能力といいつつ、彼女の本当の武器はその鋭い洞察力なのです。
物見の瞳はヒントを得るためだけの道具。魔法や呪いが存在する世界で、探偵役が手がかりを得るための力でしかないのです。
これ、能力によるチートを感じさせずにヴィクトリアの優秀さを引き立てていて、私的にすごく好みの設定でした。

 

ヴィクトリアの内面描写もすごく良かった。
迷いがなく真っ直ぐなアドラスと違って、ヴィクトリアは自分の能力や役割に対して少なからず負の感情を抱いているんですよね。
使い勝手の悪い能力は「聖女」に相応しいものではないと卑下しつつも、師の教えを受け継いで「真実」を見通す聖女であろうとする。
しかし「真実」が時として人を傷つけるものであることに罪悪感も抱いてしまう。
揺れ動く内心を抱えながらも、聖女として「真実」から目を逸らしてはならないと奮闘する姿にとても好感が持てました。

 

アドラスの依頼を受けたことで、聖女として大きく成長したヴィクトリア。
そして出生の真実が明かされたことで、これから更に大きな戦いが待っているアドラス。
師ジオーラが予見したヴィクトリアが役に立つ未来はこれからなんじゃないかな。今回のお話はあくまでプロローグに思えます。きっとそうだ、違いない!

 

「真実」と「秩序」の間で対立するヴィクトリアとオルタナの戦いも、これから激化する可能性はありますよね。
未来視によって引き起こされた虐殺の記憶から「秩序」を重んじるオルタナも、それでも真実を歪めてはならないと主張するヴィクトリアも、どちらの主張も面白いと思います。
世界各国に首を突っ込める「神殿の聖女」という特異なポジションが、彼女たちの論争を今後さらに盛り上げて
くれるのではないでしょうか。ワクワクします。

 

というわけで是非シリーズ化してほしいです。
すでに運命を感じ取っているヴィクトリアと、先に「負けた」アドラスの関係の行方も気になりますしー。むしろそこが一番気になりますし!(正直者)
続きを楽しみに待ってます。

 

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