プロペラオペラ5 /犬村小六



プロペラオペラ 5 (ガガガ文庫)【Amazon】【BOOK⭐︎WALKER】

評価:★★★★★
2021年8月刊。
最悪の三角関係から始まった、恋と空戦の架空戦記最終巻。
凄まじいお話でした。
しんどいやらキュンとするやら感動するやらで私の情緒がめちゃくちゃにされてしまいました。
史実をベースにしつつ、ロマンスとファンタジーをたっぷり盛り込んだ本作。
後書きにあるように、確かにこれは人間賛歌の物語だと思います。
最後まで読んで良かった。とても面白かったです!

☆あらすじ☆
日之雄ガメリア最終決戦、開戦!!
 極東の島国・日之雄。その皇家第一王女・銀髪の美女イザヤ。同い年で幼なじみのクロトは、10才の時にイザヤにとんでもない“狼藉”をはたらき皇籍剥奪された曰く付き。
 しかしふたりは今、第八空雷艦隊司令官と、その超キレ者首席参謀として国民の人気を独占する!
 ガメリア大統領となったカイルは、兵器史上もっとも巨大凶悪な飛行戦艦「ベヒモス」を建造し、日之雄に迫る。奴の戦争の目的は、イザヤを娶ること。バカか!!??そんなこと許せるわけがないクロトは、カイルの仕掛けた「三角関係大戦争」の直接決戦を断固受けて立つ!!
 イザヤ、リオ、速夫、ミュウ、ユーリ、クロト、絶望的戦闘を共に生き延びてきた愛すべき乗組員の野郎ども、そしてカイル。誰が死に、誰が生きるのか。
 戦場の爆砕音と怒号と鼓膜を殴打するプロペラの叫び!!「恋と空戦」を書かせたら世界一の犬村小六は、今巻に、自身の生きる力の全てを叩き込んだ!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

資材も人材もどんどん摩耗して弱体化する日之雄。
カイルが大統領となり圧倒的物量で攻めるガメリア。
もはや勝敗の行方が明らかな二国間の戦争は、東京上空を舞台とする最終決戦へとなだれ込むことになります。

 

これがもうしんどいったら…!

 

正直にいうと、あまりにも史実が頭にちらつく物語は苦手でして。フィクションとして切り離すことが難しくなってお話を存分に楽しみづらくなる事が多いので。。。
そんな憂鬱な苦手意識が呼び起こされるほど、『プロペラオペラ』の物語にはリアリティを感じました。
これはフィクションで、この人たちは現実には存在しないのに、あまりにも強烈に彼らは物語の中を“生きて”いる。
登場人物たちの人生に凄まじい生々しさを感じ、そのエネルギーに圧倒されるほどに。

そんな彼らを容赦ない展開が襲うものだから、ガリガリと精神が削られていくのも当然でしょう?
ベヒモス突入シーンでは、愛着のあるネームドキャラクターが次々と無惨に命を散らしていき、辛すぎて一度本を閉じました。
主人公のクロトがどうなるのか、その結末を見届ける勇気を振り絞るのが本当に大変でした。私はメンタルが弱いのだ。

 

でも、本作はそこで気持ちが止まりませんでした。
うーん、どう書けばいいか。
確かに憂鬱になるほどのリアリティはあるんだけど、同時に、フィクションの娯楽作品としても昇華されているようにも感じました。
現実感と非現実のバランスがすごく慎重にとられていたというか。生々しいのにロマンがある。荒唐無稽な設定や展開が史実との接続を容赦なくぶち切ってくれていたのも一因かな。
自称純愛を貫く大統領との史上最悪の三角関係とか、空に浮かぶ巨大艦船バトル(本作独自の設定から生まれた盲点を突く展開、鳥肌ものでした)とか、むちゃくちゃだー!となるたびに創作物としての楽しさ、面白さを感じました。

たくさんのキャラクターが退場することも苦しいばかりではなく、ドラマとしての感動が詰まっていました。
大切な人のために命をかけて未来をつなぐというドラマチックな盛り上がりが素晴らしくて、彼らの勇姿を泣きながら見届けました。仲間たちに素直にデレたクロトの演説も感慨深くて涙が止まリませんでした。クロトがイザヤにプロポーズしたシーンも胸が熱くなってときめきで目が潤んだし。もはや泣いてばかりだったな……

まぁ一番気持ちが昂ったのは鬼束の「男の子はな、好きな女の子のためなら、世界をぶっ壊していいんだ」なんですけど。これよ!!これ!!世界と好きな人を天秤にかけて好きな人を選ぶ話が好きなのよ私は!!!鬼束さんこそ同志だったか…!(そして彼の最期を思い出して崩れ落ちる)

 

投げ出したいくらいに辛いのに、続きが気になって投げ出せない。
苦しくて仕方ないのに、面白くてたまらない。

んあああもう!もう!!私の情緒はボロボロです!!!

 

ただ、情緒への攻撃が激しかった最終決戦を乗り越えてからの長い長いエピローグのおかげで、読後感はとても穏やかなものになりました。
このエピローグの長さ、本当に良かったな……
ドラマチックな物語にするならイザヤたちの再会で終わるのもアリだったと思うんです。
でも、全てを奪われ焼け野原となった場所で、新しい命とともに新しい人生を始めるイザヤたちの姿が丁寧に描かれていたから、私は本作を人間賛歌の物語として確かに受け止めることができました。

苦難に打ちのめされても人は再び立ち上がり、命で繋がれた命がまた新たな命を紡ぐ。

苛烈で生々しく、けれど理想と希望に満ちた物語でした。とても素晴らしかったです。

 

追記。
感想に書きそびれたんですが、一番好きなキャラはユーリです。ユーリがトムスポンとくっついたのは意外だったけど笑
カップリングで好きなのはリオと速夫。身分差男女の敵中突破はロマンスとして強すぎる。二人がばっちりハッピーエンドを迎えてくれて喝采をあげました。犬村先生、信じてたよ…!

 

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