銀座琥珀屋雑貨店 神様と縁結び /佐々木匙



銀座琥珀屋雑貨店 神様と縁結び (角川文庫)【Amazon】【BOOK⭐︎WALKER】

評価:★★★★☆
2021年8月刊。
優しさが心に染み渡る感じがすると、佐々木匙さんの文章を読むたびに思います。
大正時代の東京を舞台に、不思議な雑貨店で働くことになった少女が、さまざまな縁が呼ぶ騒動に巻き込まれていくファンタジー。
縁を望む人々は様々な想いを抱えていて、それに親身に接しながら自らの心を見つめていく主人公の成長が素敵でした。きつめの性格だけど優しい子なんだよなぁ。とあるトラブルメーカーに対する彼女のスタンスがすごく好きでした。
口数少ない神様との関係の変化もよかった。じわじわゆっくりと距離が近づいていく感じ。こういうの好きだ。

☆あらすじ☆
訳あり少女と孤独な神様が紡ぐ、切なくも温かい「恋」と「縁」の物語。
時は大正。わけあって東京に逃げるように出てきた18歳の弓子(ゆみこ)は、自立した女性に憧れて張り切って仕事を探すも、門前払い続き。
そんな折、銀座の裏路地の小さな欧風雑貨店の求人を見つける。
ガラス小物などが所狭しと詰め込まれた、宝石箱のようなその店――琥珀屋雑貨店は、美しいが傲岸な店員・間 靖之(はざま・やすゆき)と、彼にかしずく店主の秋成伊三郎(あきなり・いさぶろう)という妙な男性2人が営んでいた。
商品に“縁結び”の力が宿るという不思議なこの店で働く中で、弓子は「縁」をめぐる不思議な事件に出会い、大切な想いを知っていくことに……。
孤独な神様と訳あり少女。一生ものの、運命の恋と縁の物語。
切なくも温かい、大正お仕事ファンタジー!

以下、ネタバレありの感想です。

 

故郷の川の神様に生贄とされるところを逃げ出し、東京に上京して職探しをしていた少女・貝原弓子
偶然知った雑貨店に就職できた彼女は、不思議な青年・間靖行と店主の秋成伊三郎と共に、「縁結びの噂」を聞いたお客の様々な事情に関わっていくことになります。

 

前作『水神様がお呼びです あやかし異類婚姻譚』の前日譚というか、主人公のご先祖のお話ですね。内容的にはほぼ繋がりがなく(川の神様の話くらい)、独立していますけど。
ちなみに弓子のひ孫の名字は「間」………ほうほうほうほう。
神様との間でも子供ができるんだ?血筋的に人外と恋愛する運命にあるのか??

 

まぁそれはさておき。

 

本作は大正時代のお仕事ファンタジー。
可愛らしい雰囲気の雑貨店を舞台にしていて、お店の雰囲気もとても好みです。私も行きたい!色ガラスとか扱ったお店いいよねぇ。
しかも、そこにある品々には「縁結びのご利益があるかも?」という曰く付き。
嘘か誠か信じるのはお客様次第ではあるものの、実は接客している神様が力を込めているという。

 

面白いのは間さんは別に縁結びが本業の神様じゃないんですよね。
縁結びも接客も苦手すぎてぶすっと口下手な感じになっちゃう神様かわいい。
神様だけど専門外なので、効力もささやかなもの。でもそれがきっと背中を押す程度の優しいご利益になっているんだろうなぁと想像できました。
だって最後に縁を結ぶか決めるのはその人次第なのだから。
「縁」と一口にいっても、それがどんな縁なのか、何を求めた縁なのか。
神様にきっかけをもらった人は、よくよく考えながら自分で縁を紡いでいく。
少年二人の友情を願う縁結びの話とかめちゃ良かったです。気休めのおまじない程度の縁結びが、最後には誓いのような力強さを得ていて。
人の心次第なんだよな。それを見守る神様のあり方も素敵でした。

 

そんな優しい縁結びではあるものの、神の力が関与しているためにトラブルは起こってしまう。
そのトラブルに奔走する弓子たちの活躍が描かれていくのだけど、特に良かったのは人や神様と接する弓子のスタンスでした。
疫病神相手でも「この程度なら自分は我慢できるから大丈夫」と言ってしまえるのが素敵。自己犠牲とかではなく、さきと会うのが楽しいから、その程度なんてことはないのよって気楽に構えている感じ。
器が大きいというか神経が太めというか。生贄にされかけたことがあるからか、不思議なトラブルに対する耐性が強いんでしょうね。強いヒロインだな!とニンマリしました。
あの三人娘の友情自体が好きなんですけどね。良くも悪くも「縁」が結ばれた関係で、切ない結末になってしまったけれど、優しい想いが最後まで根底を流れていたのが良かったな……さきさん、幸せになってほしい。

 

様々な縁と巡り合っていく弓子は、次第に間との距離が近くなっていきます。
遠くにあった目線が、だんだん近くに下りてきて、そうして弓子と目が合って。
目線で距離感の変化が描かれるの、すごく良かった。遠い存在が近くなって隣に来たっていうのが分かりやすいし、間自身の変化も伴うから鮮やかな印象が残りました。
縁結びに四苦八苦していた神様が落ちたのは、意図しない縁で結ばれた少女だった、というのも大変にエモい。それを人は運命と呼ぶのじゃなかろうか。
だんだんと口数が増える割に、言葉は端的なままなのも良い。
「おれは嬉しいが」の三段活用(違う)とても可愛かったです。ごちそうさま!笑

 

お仕事ものとしても、弓子と間の恋の話としても良かったんだけど、もし続くなら秋成の話もたくさん読みたいなぁ。
眠りについた主を少しでも長らえさせるために店を営む忠義者で一途な狐。何だか切なくなるエピソードの持ち主でした。この先の彼はどうなっていくんだろう。

 

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