声を聞かせて3 精霊使いサリと魔法使いラルフの帰還 +番外編(小説ウィングス2021年春号掲載)/川上朔



声を聞かせて(3)精霊使いサリと魔法使いラルフの帰還 (ウィングス・ノヴェル)【Amazon】【BOOK⭐︎WALKER】

1巻の感想はこちらから

評価:★★★★★
2021年2月刊。
精霊の声を聞く女と魔法使いの男のバディが、入れ替えられた能力を取り戻し、人に怯える少女の心を救うため奮闘するファンタジー最終巻。
とても素晴らしかった…!
『声を聞かせて』というタイトルに込められた思いが、この物語の随所で優しく響いて胸がいっぱいになりました。

傷だらけの孤独な心を抱え込む相棒へ、その寂しさに気づいた男が不器用に歩み寄る姿が良かった。
偏った世界しか知らず落ち込む相棒へ、その気高さを知る女が尊厳を伝えようとする姿が良かった。

最初はあれだけ険悪だったのになぁ。こんなに最高のバディになるとは。
二人で協力して少女を守るなかで、互いの欠けた部分を埋め合い、新たな関係性を築いていくサリとラルフの姿は本当に美しかった。
人の心に触れる難しさと優しさが詰まったファンタジーでした。

それとこれは重要情報なのですが、『声を聞かせて』を単行本で読んだ方、あるいはこれから読む予定の方は、小説ウィングス2021年春号(No.111)も一緒に買ってください(公式サイトに飛びます)。公式通販なら手に入ると思うので。絶対に読むべき番外編が掲載されているから絶対に読んでください…!

☆あらすじ☆
追い詰められたエトの願いを叶え、白銀は四人だけの世界を作り上げた。世界を守る霧の壁にはいかなる力も及ばず、壊すことも進入することもできない。サリとラルフの記憶も操作され、偽りの平穏な生活が続いた。だが“化け物”への憎悪を募らせる村人たちが壁の外に火を放ち、サリはその優しい夢から醒める。そしてエトが再び白銀に救いを求めた時、白銀はすべての火を消すものの、人々の魂を手当たり次第に喰い始めてしまう。暴走する白銀を止めて皆を救うために、サリが呼んだのは……?

以下、ネタバレありの感想です。

 

読み終わってまず、ラルフは本当に良いキャラクターをしていたなぁとしみじみ思いました。
傲慢でプライドが高く、精霊使いを道具としか思わない、怒りん坊の魔法使い。
好きになれる要素など全くなさそうな男だったのに。

しかし鼻っ柱をへし折られ、叩きのめされる彼が必死に這い上がるたびに、どんどんラルフを好きになっていました。
そしてふと気づく。ラルフは、高慢な時も泥臭く足掻いてる時も、ずっと格好良かったんだって。

そう、ラルフって格好いいんですよ!

偉そうだし短気だし情けない失敗もするけれど、今はどのシーンを思い返しても「ああ、格好いい人だなぁ」と思う。
彼の言動には、民を救う公安魔法使いであることの矜持が込められているから。選ばれし者としての誇り高き使命感が感じられて、上手くいかないことにしょんぼりする姿さえ格好良いと思えるんです。
彼は自分の失敗を正面から受け止める人だから。その真摯な生き方が格好いい。

 

自分では無自覚なラルフの尊さを彼に伝え、読者にもラルフの格好良さを教えてくれるのが相棒のサリである点も良かった。
仲が良くなくてもラルフの矜持を正確に把握してるところ、「パートナー」としての絆を感じて大興奮でした。
2巻の「美しい魔法」のラストも良かったけれど、3巻の「ラルフは己の失敗を、命で償うような真似は決してしない」と言い切るところも最高。
自分の命にしがみついて多くの民を救うと宣言したラルフの格好良さは、サリの中で絶対の真実として存在するんだなって思えて。その揺るがない信頼が尊い。

 

一方のサリは2巻以降急速に不安定になって心配したのだけど、そんな彼女にラルフが不器用に寄り添おうとする姿がまた素敵。
感情表現が乏しいサリと感情表現が激しいラルフ。
性格も能力も境遇も何から何まで全然違う二人だから、まるで噛み合わないのも仕方ない。
でもその違いを、衝突を繰り返しながら辛抱強く噛み合わせていくんですよ。
互いを理解していく過程がとても優しく、そして繊細かつドラマチック描かれた作品だと思いました。
バディの関係性の改善を通して、ラルフの成長とサリの救済が描かれるのが本当に良かった。
長年溜め込んだサリの悲痛な叫びがようやく出たことと、それを受け止められるくらい成長したラルフに泣けました。

 

そんな二人の庇護の元で心を癒していくエトの物語としても素晴らしかったです。
エトが白銀にお別れを告げるシーンで泣いたし、サリに将来なりたいものを伝えたシーンでも泣きました。
迷子のような幼児が、たくさんの人に囲まれて愛され、自分の意思で道を選べるようになった姿に感動しないわけないでしょう…!エトを包み込む優しい空気に涙が止まらなくなる!
ラルフとサリがエトを愛する姿、エトが二人に愛を返す姿、どちらも心が温かくなります。
愛する養い子のために不審者になることも厭わないサリ、本当、本当に、可愛いなぁもう!
頑張ったエトにいっぱいご褒美をあげようとしてサリに怒られるラルフは新米パパ…

 

大変な冒険を乗り超えた先に待っていた、幸せいっぱいの後日談に心がぽかぽかしています。良いファンタジーだったなぁ。
幸せな後日談の中で、ジーナの声が聞こえなくなって寂しそうなラルフの姿が印象的だけど、きっとこれからもサリが優しくジーナの声をラルフに聞かせてくれるはず。

 

そこも含め、最後まで読むと、『声を聞かせて』というタイトルの素晴らしさを実感します。
優しく寄り添い合う人々の姿が思い浮かぶ、これ以上ないほど本作を表しているタイトルだと思う。

 

この世界観を完璧に表現していたハルカゼさんのイラストも素敵でした。
物語との雰囲気がピッタリ合っていて、絵と文章の両方を楽しめるライトノベルの良さを噛み締めてしまう。本当に作品と合ってたし、作品の魅力を底上げしていたと思います。

 

良かった良かったと何度でも繰り返したくなるほど面白かったです。
川上朔先生の次回作も楽しみにしています!

 

余談ですが、、、
男女バディの信頼関係が尊くて恋愛色がほぼなくても満足できる作品だったのだけど、最後の最後で「ラルフはエトにサリに言いよる人がいないか確認してくる」「サリはラルフの傍で時々すごく可愛い顔をする」と聞いた私は…!カプ厨の私は…!

 

 

「声を聞かせて 番外編」(小説ウィングス2021年春号掲載)の感想

私はこの番外編の存在を全く知らず、Twitterで2巻の感想を呟いたタイミングで匿名の親切な方に教えて頂きました。とんでもなく有難い、感謝してもしきれない情報でした。

いや、これ本当に良かったんだが!?!?なんで3巻に収録されてないんだ!?

いえいえ本編は全3巻で綺麗にまとまっているんですよ?
番外編を読まなくてもバディものとしての完成度の高さは揺るぎません。

でも、でもね?

ラルフとサリの「パートナー」としての関係はすごく素敵だけど、恋愛関係に発展しないのかなぁ?とかチラチラ考えていた私にとって、こんなにも素晴らしい後日談はありませんよ…!

しかも顔面崩壊級に甘い!挿絵も甘い!!

サリがラルフにプロポーズしたことから始まった、サリの戸惑いとラルフの懊悩。
その結末がすごく素敵な上、本編のサリのセリフが更に味わい深くなるという。本当になんで3巻に収録されてないんだ…

サリの言動や思考回路が精霊に近いということが、ラブロマンス方向でこんなに生きてくるとは思わなかったです。めっちゃキュンキュンした。サリは物事の本質を火の玉ストレートで投げてくる女!ラルフ頑張れ!トキメキで死ないように頑張れ!笑

不器用にすれ違う二人を見守る周囲の人々の温かみにほっこりもできて、本当に素晴らしく後味の良い後日談でした。
最高でした。単行本化してください!(必死)

 

 

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