テスタメントシュピーゲル3 上・下 /冲方丁



テスタメントシュピーゲル3 上 (角川スニーカー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
上巻2017年1月刊、下巻2017年7月刊。
最高でした・・・・・・本当に最高だった。

国際都市を舞台に繰り広げられる、機械化された少年少女の戦い。
そこで彼女たちが対峙する過去の傷と因縁。
果たして過去を乗り越え未来を掴み取ることができるのか――

素晴らしい青春小説でした。
クライム・アクションで近未来SFなんだけど、それ以上に青春小説としてパーフェクトだった。
過去の暗闇を這いずりながらも未来へ進み続ける少年少女の物語好き・・・・・・シュピーゲル大好き・・・・・・
読んで良かったです!すっごく楽しかった!

☆あらすじ☆
鬼才・冲方丁の原点にして記念碑的大河ライトノベル、ついに完結へ――。 都市を驀進する蒸気機関車とともに、6人の少女は希望への道を切り開く!!
「前へ進み続けろ!! 真っ直ぐ前へ――!!」
西暦2016年、国際都市ミリオポリス。憲兵大隊の涼月は、敵の情報汚染への対抗ユニットを目標地点に運ぶため、機能不全に陥った都市を蒸気機関車で驀進する。そのころ、仲間2人――陽炎/夕霧もまた、のっぴきならない危機に直面していた。やがて散り散りになった仲間たちは集い、全ての事象はひとつに収束していく――。機械化された肉体を武器に闘う少女たちの物語、いよいよ最終章!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

1巻の衝撃と絶望を引きずって読んだ第2巻。
暗闇に落ちていくようなMSS組にハラハラしまくり、ラストの涼月の格好良さに撃ち抜かれて、さぁ最終決戦だ!とワクワクしながら読んだ第3巻。

 

どちらも本当に面白かった・・・!

 

テスタメント3巻、最初から最後までクライマックスなんですよ。
あんなにページ数があるのに、ずっと最高潮だった。
1巻も2巻も絶望の淵に沈むようだったのに、3巻はどこまでも前へと進み続ける意思に、私の心まで満たされていくように感じました。
味方も敵も総力を振り絞って、ミリオポリス全域を駆け巡る。その展開にシリーズの総決算であることを強く感じる。
まぁ、あまりにも広域で散発的に戦いが繰り広げられるので、「地図を・・・地図をくれー!」と呻いてしまったんだけど下巻にマップが収録されてましたね。このマップ、上巻でほしかったナ・・・・・・

 

そんな感じで広域において展開される最終決戦。
混戦と乱戦の連続のなか、特甲児童たちはバラバラになって戦い、それぞれが過去から引きずった闇と対峙していきます。

特甲児童が特甲児童となった原因である過去の様々な事件や因縁。
それは彼女たちに拭い難い傷を負わせつつ、同時に彼女たちのアイデンティティを形成するものであって。
だからやみくもに否定するのではなく、正面から殴り抜いて、自分のなかで昇華していくところが本当に良いなと思った。
過去で負った傷を今の自分が受け止め、受け入れ、乗り越えて、未来に向かって突き進む若き衝動。
これを青春と呼ばずになんと呼ぶ?私はライトノベルで描かれるこういう青春が一番大好きなんだ!!!

 

具体的に好きなシーンをあげるなら、特甲を剥ぎ取られた涼月が這いずりながらアゲハのところにたどり着いたところあそこは号泣しました。
外的解離性ビジョンの洪水。トラウマの嵐。
背負い続けた苦しみに襲われながら、泣き叫んで、それでも前へ前へ突き進む涼月の勇姿が心から離れない。
トラウマを乗り越えるシーンで原点を再現するの最高すぎない?
もう無理。1巻ラストでも2巻ラストでも惚れたけれど、3巻まで読んで涼月に惚れないとか無理すぎる。

さぁ進め。
進めと自分に命じろ。
進めと命じる自分に応えろ。
応えることで進むことで手に入れろ。
あたしがここでこうしていることが、誰かを進ませることになるから。
あたしがここで諦めずにいることが、誰かを支えていることになるから。
あたしがここで握りしめている手は、誰かの手を握り続けていることと同じだから。
あたし達は大丈夫だ――あたし達は、実際のところ何も奪われちゃいない。
何も奪わせやしない/くそったれどもが奪ったと思っているもの全て――取り戻してやれ。

ここのくだり、全部まるごと好きです。
涼月の信念。強さ。これまで得てきたもの。
その全てが込められているように思えて、何度読んでも鳥肌が立ちます。ほんと好き。

 

涼月が一番強烈なインパクトを与えてきたけれど、特甲児童たち全員が自分の戦いを貫いていて本当に良かった。

そのなかでも、我ながら驚くほど好きになっていたのが雛!

スプライトの時点ではこんなにハマると思わなかった。
なのに、最終的には涼月とトップ争いするくらい好きになっていました。
でも陽炎も好きなんだよな・・・・・・悩ましい・・・・・・

雛は2巻の裏切り展開でギョッとして「えっ、仲間捨てて本気で逃げるの・・・?」となって、「いやいや、彼女の境遇からすれば逃げたくなるのも当たり前だよ逃げろ逃げろ(ナチュラルに「逃げろ」といえる涼月が素敵すぎる)」と思い直して、途中からは「むしろ逃げて・・・!」と叫んでしまうという、終盤にかけて容赦なく心を揺さぶってくる子でした。

雛は本当に最後までどうなるのか不安だったなぁ・・・・・・逃げてほしいけど逃げてどうなるの・・・?って。

おかげでエピローグの雛のキスに喝采をあげてしまった。
がんばれー!最後まで逃げなかった雛は追いかけることで幸せを掴み取ってほしい!!

 

キスといえば陽炎のラストシーンも素敵だったなぁ・・・・・・
過去の因縁に報いを果たして皆がそれぞれの未来を手に入れるなか、陽炎と中隊長はどうなるんだろうと気になって仕方なかったのだけど、もうさぁ、私の期待通りですよ、これ・・・!
やっと奢れたんだな・・・と思うと感慨もあった。
ミハエルはこれから成長していく陽炎にタジタジになり続ければいいよ。。。
ミハエル、初期は大人の男として綺麗に去ってほしいと思っていたこともあったけれど、彼らの本当の因縁を知ったあとでは、このラストシーンこそ最高のアンサーだと思いました。
あ、でも山の中でミハエル狩りする陽炎はちょっと見たかったな。

 

うーんうーん、書きたいこと沢山あるけどまとまらないなぁ。
本当はSFとしてのギミックの面白さとか、犯罪に立ち向かってきた大人たちの格好良さとか、色々あるんですよ。シュピーゲルの魅力。
でも、なんだろう、最後まで読むと「シュピーゲル、青春小説として抜群に面白い・・・」という感想が一番に出てくる。
奪われ続けた子ども時代を取り戻す形で成長して、そして未来へ羽ばたいていく青春の物語。
何度も書いちゃうけど、そういう話として本当に本当に面白かったなぁって。

 

まぁね、激戦の果ての穏やかなエピローグが心に沁みちゃったから仕方ないよね・・・・・・

まるで卒業式みたいな辞令式とか、アゲハと涼月が語り合う駅のホームとか。
ああ、彼らの物語は今この瞬間に新たなステージへと進むけれど、私はここでお別れなんだな。さようなら、良き人生の旅を・・・・・・と心で旗を振ってしまった。

喜びも悲しみも分かち合った戦友と、それぞれの人生を歩むために、ひとまずの別れを。
そして見知らぬ未来にひとりで向かっていく。ひとりで立ち向かう強さを手に入れたから。

もう、、、青春じゃん、、、、、、最高じゃん、、、、、こんなの感涙にむせぶしかない。

 

ラストシーンが駅のホームで、「世界とか救えそーな気分」で〆るところも最高すぎて胸がいっぱいになる。
駅のホームって、今までの自分から卒業してこれからの自分に会いに行く象徴的な場所ですよね。
世界を救いたいと思うことで確かめたかった自分の価値を、世界を救った上で、試しにいくんだ・・・・・・
真っ白だけど輝かしい未来。希望にあふれすぎて眩しいほどです。

 

ああ〜〜〜〜〜(ため息)
素晴らしい読後感でした。この晴れやかな喪失感よ・・・・・・
シュピーゲルを読み続けた1ヶ月弱、とても幸せな時間でした。面白かったです!

 

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