吸血鬼に天国はない3 /周藤蓮


吸血鬼に天国はない(3) (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2020年5月刊。
やっぱりこのシリーズ大好きッ!!!!!と確信した第3巻。
暗くて血生臭くて、現実は容赦なくて、救いが見えない。
でも、その根底にあるのは切ないほどのロマンチシズム。
人と怪物。共に生きようとする彼らの在り方は愚かだろうか。罪だろうか。
答えを見せたラストシーンが最高でした。
本当に好きだなぁ。人外恋愛譚として、私的には満点です・・・!

☆あらすじ☆
監獄から抜け出した『死神』。死の匂いが充ちる街でルーミーたちは……。
「お兄ちゃんも真面目に生きて、天国を目指そうって気になってきたんですか?」
個人でやっていた運び屋を、会社として運営し始めて早一月。恋人のルーミー、そして社員として雇い入れたバーズアイ姉妹たちとともに仕事を回す日々。経営は苦しいながらもシーモアは、情報屋のフランから「真面目」とからかわれるような幸せに浸っていた。
だがある日シーモアのもとに捜査官から、ルーミーのもとに殺人株式会社から、脱獄した『死神』の捕獲・討伐に協力するようそれぞれ秘密裡に依頼が入る。
一方、『死神』の手による連続殺人事件が巷を騒がせるようになり、街は徐々に無秩序がはびこるようになっていた。はからずも同時期、街には新たなる怪異が産声を上げようとしていて……。

以下、ネタバレありの感想です。

 

脱獄した「死神」。
その日から、シーモアたちの街では死体が増えた。
死神は捜査官の娘を誘拐して逃げているのだという。
彼女は果たして、街の何をしようとしているのか―― という第3巻。

 

この世界の在り方って面白いですよね。
世界に願われて生まれた不条理である怪物と、願った不条理を世界に押し付ける死神。
それはどうにも不安定な世界に見えます。
どちらも同じく、願いで世界が変わるんでしょ?
そんなの足元が覚束なくなりそうだ。

 

でも、ロマンではある。
どんな苦しみも、悲しみも、人と怪物の罪深き恋だって、願うことで何かを変えることができる世界なのだから。

 

今回の話は、今まで以上にロマンチックだったと思いました。
少女を救おうとした死神、というシチュエーションがこれ自体で1本の物語を生みそうだし。
死神が見失った世界を怪物に恋した青年が証明してみせる、とかもね。ロマンを感じてやまない。

 

彼らが過ごす世界は今もまだ厳しくて、生きるだけでも苦労ばかり。
シーモアは立ち上げた会社を回すだけで精一杯だし、ルーミーは人を殺さないと生きていけない。
社会のしがらみは何重にも彼らを取り巻いていて、自由に生きているとは残念ながら言えそうにもない。

 

でも、拠り所となる価値があれば、それだけで生きていける気がする。
願いで変わりうる不安定な世界だからこそ、自分たちの願いも届くのだと・・・・・・

あるいは、これを愛と呼ぶとして。
たとえば、それを愛と呼ぶとして。

全てを振り払って、命を預けること。そう信じられること。
生きていくための拠り所となる価値を愛と呼ぶのなら、それはなんて愚かで美しいロマンでしょうか。
素敵すぎない?
こんなの読んだら思わずポエミーな気分にもなるよ。
昼を切り裂く夜の恋人たちを描いた挿絵も最高でした。

 

正直、状況は何も変わってないんですよね。
シーモアはこれからも会社経営で頭を抱えるだろうし、ルーミーは定期的に人を殺して血を啜らなければならない。
死神は人を殺すだろうし、少女も家には帰らない。

 

それでも世界が変わったような気がする。
気がするだけかもしれないけれど、それで十分だなって気分になるんです。
良いじゃんね、明日のことは明日考えよう。

 

彼らが見つけた愛が、最後に何を精算するのか。あるいは何を生み出すのか。
この物語の行く末がとても楽しみです。

 

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