恋を知らぬまま死んでゆく /捺



恋を知らぬまま死んでゆく【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年5月刊。
カクヨム×魔法のiランドコンテスト「大賞」受賞作。
心を剥き出しにする痛みを描いた青春恋愛小説で、とても面白かったです。

恋を知らない少女が、恋を失い死んだ少女の真実を知るため、「恋」について考える。
あまりにも曖昧で、形が定まらず、けれど時に暴力的なほど激しい感情。
そんな自分には理解できないものを、理解しようとする苦しみを描く物語でした。

恋が分からない彼女へ、何度も恋心を告げる同級生の存在も良かった。
彼女と彼の、「好き」という同じ言葉に込められた温度差が残酷で。
そこから生まれる感情の奔流が、すごく良かったんです・・・・・・

☆あらすじ☆
人を好きになるって、どうしてこんなに 幸せで切ないんだろう?
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト<大賞>受賞作!!】
「失恋した。この気持ちは聖良ちゃんにはわからないよね」
高校三年生の秋、私の携帯に謎めいたメッセージを残して菜々子は海で死んだ。事故だった。——でも、もし本当は自殺したとしたら?
幼なじみの死の真相を探るため、「恋を知らない」私は同級生とつたない恋人ごっこをはじめる。ニセモノの関係、ニセモノの愛情。そんな私を待っていたのは、甘くて切ない真実だった——。
ひとりの少女の死をめぐる、恋と痛みの青春ミステリー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

疎遠だった従姉妹の菜々子が、死ぬ直前に聖良に遺した不思議なメッセージ。

それは何を意味していたのか。
菜々子の死は不幸な事故だったのか。それとも失恋を苦にした自殺だったのか。

どちらにせよ、恋に振り回される菜々子の気持ちを、彼女が死んだ今も聖良には理解できない。
でも、心のどこかで、聖良は菜々子を理解したいとも思うのです。

「ねぇ、恋って死にたくなるほど苦しいものなの?」

恋を知るため、聖良は自分に好意を寄せる同級生・青井と試しに付き合うことを決めます。
しかし、それは、「恋がわからない自分」という聖良の内側を切り開くような日々の始まりを意味していて――

 

恋とは何だろうか。

 

たぶん、それは誰もが自分の感覚でしか語ることができない感情なのでしょう。
唯一絶対の正しい答えはない。だから、皆が皆、好き勝手に「こういうものを恋と呼ぶんじゃない?」と考える。
定義もままならない、曖昧で不確かな感情が「恋」ならば、人は何をもって自分が恋してると分かるんだろうか。

恋をしている人だって、その気持ちが恋だと思いこんでいるだけで、恋じゃないのかもしれない。
恋じゃないと思っている人だって、他の誰かの目からみたら、それは十分に恋と呼べるものかもしれない。

絶対の主観も、絶対の客観もない。
だからこそ面白い。

恋愛小説の醍醐味は、その登場人物たちが導き出す「彼らにとっての恋」を見せてくれる点にあるのかもしれません。
恋とは何か。愛とは何か。
確かな答えが出ない問いかけに、自分なりの答えを見つけようとする恋愛ものが、私はとても好きなんだ。

 

本作もまた、懸命に「恋とは何か」を探す物語でした。

ここで面白かったのが各キャラの配置。

特に、恋が分からない聖良と、彼女にあけすけな恋を伝える青井の対比はとても良かった。
哀しいほど恋を理解できない少女と、哀しいほど恋に振り回される少年なんですよね、このふたり。とても正反対な性格をしてる。

 

デートを繰り返し、恋について問答を繰り返し、一緒に過ごす時間を重ねていく聖良と青井。
その時間のなかで聖良は青井を好きになっていくし、青井は最初から聖良に惚れ込んでいる。
手だってつなぐし、キスもする。
でも、一歩身体の距離が近づくたびに、二人の抱える感情の温度差を実感してしまう。
その温度差は、そのまま二人の心の距離に思えました。
埋まらない断絶が、そこにあるのです。

 

そして、その距離を実感してからの、聖良の心の動きがまた面白かった。
青井が離れていくことに対する彼女の焦燥は、どんな感情に起因しているんだろう?
恋ではないと言いつつ、好きだと思う気持ちが止められないのは何故なのか。
それを私は「恋」と呼びたくなるけれど、彼女の中の計り知れないほど大きな感情の奔流がシンプルな言葉での断言を許さない。
人を求める心は、恋だけではないのだから。
ああでも、聖良が最後に青井に抱いた感情は・・・・・・

 

結局、恋とは何だったのか。
散々聖良を悩ませた「菜々子の恋」が、終わることを前提に始まり、終わることで満足できるものだったというのが良いですよね。
結局、恋というものは人それぞれで、決まった形も定義もないんだと思わせる。
ならば「恋」という概念に囚われず、聖良は聖良の言葉で自分の心に相応しい言葉を探していけばいいのでしょう。
生きてる彼女には時間があるのだから、たくさんの言葉で伝える努力ができるのです。
伝えたい言葉を手紙に封じて、それを自分で届けることができなかった菜々子のぶんまで。

 

でもさ、埋まらない温度差を埋めたいと願う気持ちを、恋と呼んでも良いと思うんですよ。私はね。

 

うう、ポエミーに語ってしまった。死ぬほど恥ずかしい。
でも面白かったです。喪失の痛みでセンチメンタルな気分になりつつ、スッキリと終わるのも良い。
グッドエンドと言えると思います。良い青春小説でした!

 

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