探偵は御簾の中 検非違使と奥様の平安事件簿 /汀こるもの



探偵は御簾の中 検非違使と奥様の平安事件簿 (講談社タイガ)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年5月刊。
たのしかった〜〜〜!!
平安ミステリー×夫婦ラブコメ。
政略結婚だから浮気はご自由に!という妻と、浮気するほどの元気はない夫のお話です。
強気な耳年増と泣き虫なヘタレの夫婦なんだけど、これがホントめちゃめちゃ可愛くて・・!

ミステリーとしてもばっちり楽しい。
毒気が強くて血生臭くて、人こそが怪奇。

超面白かったです。
やっぱり汀こるもの先生の語り口とても好き。
毒っけも癖も強いのにぐびぐび飲めちゃう。美味い美味い。

☆あらすじ☆
夫はヘタレな警察トップ、妻は隠れた名探偵。
夫にかわって謎解きよ!
平安ラブコメミステリー誕生!
恋に無縁のヘタレな若君・祐高(すけたか)と頭脳明晰な行き遅れ姫君・忍(しのぶ)。
平安貴族の二人が選んだのはまさかの契約結婚!?
それから八年、検非違使別当(警察トップ)へと上り詰めた祐高。
しかし貴族仲間からはイジラれっぱなしで不甲斐ない。
そこで忍は夫の株をあげるため、バラバラ殺人、密室殺人、宮中での鬼出没と、不可解な事件の謎に御簾の中から迫るのだが、夫婦の絆を断ち切る思わぬ危機が!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

家同士が決めた政略結婚により出会った祐高

 

平安の世では結婚とは生活のためにするものであり、色恋は後でするもの。

――という身も蓋もない話を少女時代から乳母たちに聞かされ続け、立派な耳年増に育った忍。

そういうわけなので、浮気はOK!世間体のために結婚生活はするけど、落葉の宮が現れたら言ってね!!と物分りの良い年上女房ぶって、忍は祐高にエールを送るのです。

 

で、なぜか契約結婚ムーブに張り切る忍と夫婦になり、3人の子をもうけた祐高。
この時点で「めっちゃ仲良しやんけ!」と思った私は間違ってなかったらしい。
あとがきで超出オチラブコメと書かれていて笑いました。出オチだったかー。

 

祐高、元からたいして女に興味がないし、嫁の「脅迫」がトラウマになってるし、20代にして枯れきってる風情なんだけど、恋しろ恋しろと散々つついた結果が逆若紫作戦大成功!!!というシロモノ。
やったじゃん忍さま。「育てながらわたしなしでは生きられないように刷り込むの」の有言実行を果たしてるじゃん。ちゃんと責任取りましょう。じゃないと泣いちゃうよ。

 

それにしても祐高、最初の頃は妻が面白人間すぎて辛い・・・みたいな感じだったのに、この人もかなりのオモシロ人間じゃないですか。
ヘタレがこじれすぎてヤンデレ半歩手前。
いやもうヤンデレか?だって妻に対する感情が重いんだよ〜。
思えば檻に囚われてるってアンニュイに桜を見てるあたりで気づくべきでした。
この時代の貴族男性である祐高が妻に囚われてることの意味ってさぁ。そしてその後の浮気ごっこに爆笑。
出バナでしくじったマンネリ夫婦に必要だったのは環境の変化とシチュエーション萌えだったらしい。要するに刺激が足りなかったんですね!

 

この夫婦はなんだろうなぁ。
破れ鍋に綴じ蓋ってこういうカップルのこと言うんじゃないのかなぁ。
いや、本作にならうなら偕老同穴と言うべきか。ところで偕老同穴ってこんなにヤンデレな響きだったっけ。蠱毒って!(ここも笑った)

 

て、そんな仲良し夫婦(?)が挑む平安京のミステリー。

怪奇現象としか思えない奇妙な事件の数々に遭遇する検非違使トップの祐高。
そして、祐高から話を聞き、安楽椅子探偵よろしく華麗なる推理を披露する忍。

一見すると探偵が忍で助手が祐高みたいなんだけど、そう割り切れる関係じゃないのが楽しいんです。

耳年増で聡明だけど、あと一歩ツメが甘くて世間を知らないお姫様な忍。
ヘタレで泣き虫だけど、貴族社会で生きてきた男として世間を知ってるし、世渡りも割とできてる祐高。

祐高の話を聞いて、忍が着想点を見出し、粗がたくさんある推理を祐高が補強する、みたいな感じかな。それに限らないんだけど。
くるくると探偵役と聞き役を交代しつつ、一緒に謎を解く夫婦。
あけすけな会話はテンポが良くて楽しくてずっとニヤニヤしてしまいました。
あと世慣れしてるように振る舞ってるくせに、実はかなりの箱入り娘な忍ちゃん可愛い〜〜夫以外の男性と口をきくことすらできないのが更に可愛い〜〜〜にこにこしちゃう!

 

まぁ事件自体は結構おぞましかったりするんだけども。

治安維持の役割を担う検非違使は、貴族たちの平和を守るために事件を隠蔽したりするんですよ。
あの真面目でヘタレな祐高がせっせと他殺体を自殺に見せかけてるシーンとか、少しびっくりしてしまった。

検非違使の名にかけて、今このとき、歴史を動かすわけにはいかない。

この一文を眺めながら、検非違使が守るべき「治安」について思いを馳せるなど。
ヘタレなくせに意外と世渡りできてるのも祐高の面白さですよねぇ。

 

あと、忘れてはいけないのが陰陽師!

本作に登場する陰陽師は呪詛も呪法も式神も使えない。その代わり悪知恵をよく巡らせるのです。
これがもう楽しくて楽しくて。あやつめは狐狸の類だと思う。
主人公夫婦が揃って悪巧みできるタイプではないため(育ちが良いんだよな・・・)、黒幕&参謀役としての陰陽師のキャラが綺麗にたっているんですよ。
忍は恩を着せて云々とか言ってたけど、どうかなー。この陰陽師は全て理解してそうだけどなー。
でも理解した上で恩義も感じてるからちゃんと味方でいるのでしょうね。敵に回すには怖すぎる。

 

はぁー、満腹満腹。
平安ミステリーとしても夫婦ラブコメとしても満足しました。
平安貴族における「色恋」の業の深さと切実さを描いておきながら、なんとなく可愛い感じで話を締めたところも好み。
いや可愛いんだろうか、これは。
でも泣いてる夫のために死ねないな!って悟る妻って可愛くないですか?共に墓に入るが良い。

綺麗に終わってるけどシリーズ化したら嬉しい。もし続いたら忍さんは8人とか10人とか子どもを産んでそうですね。

 

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