【WEB小説感想】she&sea /ia(糸森環)


糸森環先生のサイト「27:09の地図」(http://ash-map767.riric.jp/index.htm)にある小説をいい加減読むぞ!第2弾!!

第1弾は『Fーエフー』でした。感想はこちら。

続く第2弾は『she&sea』(サイト版はここ→http://ash-map767.riric.jp/sheandsea-TOP.htm)。
こちらもFと同じく書籍化されており、書籍版は読んでいます。その時の感想はこちら。

she&sea、私が読んだ糸森環作品の中ではダントツで鞭打ち展開がきついんですよ。私的に。
異世界で海賊に拾われた少女がたどる運命が残酷すぎて、読めば読むほど精神が摩耗していく。
しかし読むのをやめることはできない、魔性の魅力がある作品だと思うんです。うう、なぜ4巻以降が出ないのか・・・・・・

もう一度あの荒海に飛び込むのは勇気がいったけれど、サイト版の続きもすごかった。
めっちゃ面白かったです。でも更新分を全部読み終わって悲鳴あげちゃったよ!

というわけで以下はWEB版の感想、ネタバレありです。

 

 

日本で暮らす普通の14歳だった笹良が、なぜか異世界に迷い込み、そこで海賊王ガルシアに拾われ『冥華』として海賊船で暮らし始める――

そんな感じで幕開けする海洋ファンタジーの本作。
書籍化されたのは65話まで。
騎士団の話とか、骸骨に剥かれたハディさんとか、書籍化にあたって本当に大量の加筆があったのだと今更ながら知りました。
心情描写もかなり丁寧にブラッシュアップされていた感じ。
わかりやすいのは娼婦のルーアに慕われる過程と突き放すシーン。あそこは書籍版の方が自然だった気がするなぁ。
そういうのを思うとやっぱり書籍版で続きがほしかった・・・と悲しみが込み上げてくるので、この話はここまで!

 

でね、そういう書籍版との違いを気にしつつも、65話までは私にとって既知の内容だったわけですよ。

 

なのに何でこんなにも心が抉れるのか!!!

 

野蛮で、残酷で、無慈悲な、海の獣のごとき海賊たち。
でも彼らの陽気な顔と、気まぐれに与えられる優しさを、笹良はひとつひとつ受け取ってしまうんです。

それがどれだけ愚かなことか、予感しつつも目を背けて過ごす海賊船の日々。
彼女の欺瞞は、手痛いしっぺ返しとなって笹良を襲うのに。

 

結末を知っているだけに、笹良が無邪気を装って真実に蓋をする姿に、初読時よりも更に心が削れてしまいました。
だってさ、笹良が海賊たちに心を寄せてしまうのも分かるんですよ。本当に魅力的だもん!あんなに怖いのに!

 

そんな恐ろしい獣たちに小突き回されるように愛玩される笹良。
彼女がまた魅力的な主人公なんですよね〜
芯が強くて愛嬌のある笹良に海賊たちが少しずつ、でも確実に絆されていくのも分かる。

 

そして、両者の感情の動きが「分かる」からこそ、読者である私は、笹良と海賊たちの関係に何らかの変化が起こることを期待せずにいられなくなるんです。
言葉が通じない。心も通じない。でも何も伝わらないわけじゃない。
残酷な展開の合間で混ぜられる、ほんの少しの希望のようなものが、どうしようもなく心を揺さぶってくるんです。

 

まぁその期待の先に何が待つのかも知ってたんですけどね。
書籍版3巻の壮絶なバッドエンドは忘れないぞ!!!あそこで放置された書籍版読者だぞ、私!!!!

 

でも、書籍版3巻のラストシーン、そしてWEB版65話って、とてもとてもエモくて好きです・・・・・・

 

今まさに自分の命を摘み取ろうとする男に対して、花開いてしまった恋心。
裏切りを嘆いているのに、それ以上の強さで恋を自覚した笹良。
海が嫌いだった笹良を、海に沈めようとする男の、海のような「青」に恋をするんですよ。
ここね、私などでは表現できないほどの衝動が心を襲うんです。
残酷なシチュエーションの中で甘くかわされる口づけに、恐ろしいほどときめいてしまう。もう心がぐちゃぐちゃだよ!!

 

さぁ、ここからが(私にとって)未知の領域!

あの後の笹良がどうなるのか、彼女に何が起こるのかドキドキしてしまいました。
怖々と読み進めたんだけど、いや〜〜〜、そこからの展開も面白かった!

 

まずガルシアの過去がもうさぁ・・・・・・
ロンちゃんとの関係にもびっくりだし(そういや母の話は出てきても父の話は出てきてなかったのか・・・?)、なにより、ガルシア自身が歩んできた人生が重い。
道化のように振る舞っていたガルシア、その頃から笑みの仮面で心を隠してたのか。
弱者の頃からの習慣なら、それは本当にガルシアの盾だったんでしょう。
強者としてのガルシアしか知らない娘に、その盾を剥ぎ取られそうになったら、そりゃあ頑なにもなる・・・のか・・・?
ガルシアの心は、私にはまだ複雑怪奇です。

 

それはさておき、ここからの展開は、笹良の世界がぐんぐん広がっていくような印象を受けました。
海賊と騎士団の衝突が本格化するし、笹良がガルシアたち以外の海賊と行動を共にすることで外側から「海賊王」を知っていくのも楽しい。
瀕死のイケオジ海賊を拾って疑似父子になったり、海賊の島で女海賊と女子トークしたり、どこにいてもアグレッシブな笹良は最高でした。

 

一方で、笹良がガルシアの庇護を離れたことで危険度も鞭度も地味に上がっていた感じ。
捕虜になって殴る蹴るの扱いを受けるシーン、あっさり書いてあったけどめっちゃ辛かった・・・・・・
she&seaって笹良がこういう性格じゃなければ私にはしんどすぎて楽しめなかったかもな、と、不意に思いました。
喜怒哀楽は激しくても負の感情に囚われすぎないポジティブ元気な笹良の性格は、この物語の主人公として大正解すぎるんだろうな。

 

しかも恋を自覚したことで、笹良はますます強くなった気がします。
ガルシアから離れ二転三転する運命のなかで、どんどん膨らんでいくのはガルシアへの恋心。
あれだけ心を傷つけられたのに、それでも恋焦がれて戻りたいと願う笹良はやっぱりぶっ飛んでると思う。

たしかに心が繋がった瞬間もあったけど、直後に海に沈められてるんだよ?
戻ったらまた沈められるって普通なら逃げない??私なら尻尾巻いて猛ダッシュだ!

でも笹良は全てを理解した上で、それでも「会いたい」「帰りたい」と願うんですよね。あの海賊船が第二のホームだと・・・・・・。
裏切られたくらいでは揺るがない強靭なハート。嬲られて傷だらけなのに、なんでそんなに真っ直ぐなんだ。もはや恐ろしいくらいだ。

 

笹良の愛情はガルシアだけでなく、同じく彼女を見捨てた海賊たちにも注がれたまま。
再会シーンの予想以上の能天気さに笑ってしまった。ぽかーんとする海賊たちが可愛く見えたじゃないか。
そういえば、放り出されて後も、ガルシアの船にいたときの知識が笹良の身を助けたんですよね。
海賊たちとの日々は笹良から奪うだけではなかったんだなぁ、と思うと、・・・・・・くそう、笹良と海賊たちの再会を素直に喜びたくなるじゃないか。

 

あとね、「冥華」として海に沈められたあとの笹良って、本質的な部分でも、なんだか以前とは変わった気がするんですよ。
ガルシアの過去を知ったこと。海賊と騎士団の抗争に触れたこと。海賊たちの側に立つと明確に示したこと。そして言葉が流暢になったこと。
気のせいかな・・・・・・笹良という存在がアルバシュナの世界に馴染んできたような気がする。
冥華扱いされていた頃の「異邦人」という雰囲気が薄れたというか。うーん、気のせいかなー?
笹良、これからどうなっちゃうんでしょうか。最後に彼女はどこへ「帰る」のかな。

 

上手く言語化できない笹良の変化が気になりつつ、もっと気になるのがガルシアの変化!!!

 

ああああああああああああああああああああ

 

サイト版ここで止まってる!!!!!ぐわああああああああああああああああ

 

だって、ガルシアが!
ガルシアが明らかに変わった!!
舞い戻ってきた笹良に動揺するガルシア!!!なんだおまえ思春期か!?可愛いじゃねぇか!!!!!

 

ああああああああああああああああああああああ

この続きが気になる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

 

鞭鞭鞭に耐えて耐えて耐えて、「なんかこの鞭ちょっと甘くない?」と錯覚するまで耐えて、そのご褒美の飴がここから始まるんですよね!?!?!?!?

 

最初から更新停止中とわかって手を出したけど、「F」とはまた違った意味で、ここで止まるのは辛い・・・・・・
ほんとめちゃめちゃ良いところで止まってるんだね!!!泣

 

一人称「笹良」で、ナマイキな感じに上から目線が可愛い子猫科のいきもの。
喜怒哀楽がはっきりしていて、子どもっぽい振る舞いが愛らしいんだけど、それを武器として使うし、本当に心の奥底にあるものには目を背けて蓋をするあたり(そしてそれを自覚しているあたり)、笹良の心こそ海のように深淵です。

she&seaは笹良の内面描写がとにかく秀逸だと思うんですよね。
徹底的に過酷な運命に置き、笹良の心を傷つけて切り開き、その欺瞞と本音を暴き立てる。
そうして剥き出しにされるのは笹良という人間の本質。
何があっても汚れて腐ることがない、その無垢な魂。
どん底でこそ輝く笹良の本質を、何度尊いと感じたことか・・・・・・

「笹良は乙女なのだ!」と繰り返すのは自分を守り、鼓舞する無敵の呪文なんですよね。そこも可愛くて良い。
笹良のなかの乙女像は武士とイコールらしい。乙女は強く気高い生き物なのだ。

 

更新分を全部読み終えて「ガルシアーっ!!!」と叫んでしまったじゃないですか。ガルシアーっ!!!
陽気で無慈悲な海賊たちの王様。優しく甘やかして冷たく見捨てる王様。
私はそのガワが剥がされたあとの中身を詳しく見たいのよ・・・・・・続き・・・・・・続きください・・・・・・

 

疑似お兄ちゃん。
ヴィーの苦労性なところが好き。最も笹良に振り回され、最も絆された人なんじゃないか?

 

人懐っこい性格で、でも実は人間嫌いっていう二面性あるキャラだーいすきっ!
笹良に懐いてるけど、誰よりも簡単に笹良を殺しそう。殺されたら話が終わっちゃうんだけど、笹良を殺したあとのジェルドの様子もIFとかで見てみたい。

 

TSっ娘。
カシカの事情めっちゃ気になるんだけど、明かされる日はくるのだろうか。
ガルシアそっちのけで笹良と女子の空間をつくるシーンとても好きです。かわいい(騙)

 

疑似お父さん。
後半から出てきたのに、気づけばめちゃめちゃ好きになってました。イケオジ良いよね〜〜〜
笹良は裏切りに怒ってたけど、感覚が麻痺して「全然裏切ってなくない?」とか一瞬思ってしまった私は倫理観を取り戻したい。
王の椅子に座らせるくだりが好き。後々揉めるだろうなぁと思ってた通りに揉めたけど、あの時間の二人の距離感はガルシアとはまた違った感じで良かった。ほのぼのゆったり。
この後のガルシアの変化を見ていなければ「アサードと父娘海賊として船出するのも有りでは?」と思ったままだったに違いない。

 

お色気お姉さんの顔して一途純愛乙女というギャップが大変けしからん。好き。
笹良と別れるシーンで、こっそり小さくバイバイするしぐさが可愛すぎて悶えました。
そんな可愛さで海賊の頭領とか大丈夫か!?海賊になるならレッド姐さんのところで決まりです。

 

うーん、she&seaは登場キャラ多すぎて雑感全部書くの無理だわ力尽きた・・・・・・

 

今後はオススメされたものから『花術師』、『恋愛事件』の順で読んでいく予定です(最終的には全部読むつもりだけども)
完全に未読の領域に入ってきたぞ・・・!楽しみ!!

 


she & sea 海賊王の退屈 (角川書店単行本)

 

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