楽園ノイズ /杉井光



楽園ノイズ (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年5月刊。
面白かった!
見失ってしまった音楽を取り戻していく、少年少女の青春ストーリー。
感傷的な心情描写と、鮮やかな音楽描写のミックスが最高。
ヒロインたちと主人公の軽快な掛け合いも楽しかったです。
自分が門外漢すぎて音楽ネタや用語を理解するのが若干難しかったんだけど、色々ググったりと杉井先生のブログを読んで補足していくのも面白かった。YouTubeは本当に便利だよなぁ。
1冊で綺麗にまとまっていてとても満足。もしもシリーズ化するなら読みたいです。

☆あらすじ☆
それでも音楽はまだ鳴り続けている気がした——あの日のあの場所で。
出来心で女装して演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生(男だけど)ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまう。顔は出してないから大丈夫、と思いきや、高校の音楽教師・華園美沙緒先生に正体がバレてしまい、弱みを握られてこき使われる羽目になる。
無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち——ひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音——によって騒がしく悩ましく彩られていく。
恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

再生回数目当てに女装して自作の音楽をネットにあげていた少年・村瀬真琴
かつてはコンクールを荒らしまくった天才でありながら、なぜか普通高校に通うピアニスト・冴島凛子
華道の家元の令嬢でありつつ、ひっそりとドラムを嗜んできた百合坂詩月
全パートをそつなくこなす優秀さを安売りし、ひとりで膝をかかえていた不登校児・宮藤朱音

同じ高校に通う彼らは、音楽教師・華園美沙緒によって引き合わされ、見失いかけていた自分たちの音楽にもう一度向き合っていくことになる―― というのが本作のストーリーです。

 

いやぁ、良かった。本当に良い作品だった。
音楽と青春の物語で『楽園ノイズ』とあるから、読む前はなんとなくタイトルに不穏なものをイメージしていたんです。
ノイズに惑わされて楽園を見失った子たちの話なのかなって。
ある意味そういう話だったのだけど、『楽園ノイズ』の意味は違った。

 

「雑音なんて音はなかったんだね」

 

真琴とセッションしたあとに凛子が言ったこのセリフ、すごく真っ直ぐ心に飛び込んできました。
あのシーンは「音楽」と「世界」が鮮やかに一体と化していく描写も本当に良かった。

楽園は統一され調和した美しい音が鳴り響くだけの世界ではなくて。
様々なものが様々な方向から様々な音を鳴らし、そのすべての音が楽園を形作っていく。

それは、真琴たちの「音楽」にも当てはまる話で・・・・・・

 

周囲からのノイズに惑わされ、自分の音楽に迷い、どこか投げやりになっていた3人の少女。
自分にはない(と思っている)非凡な音楽の才能に惚れ込んだ真琴は、彼女たちとのセッションを繰り返し、そのなかで彼女たちはノイズだと思いこんでいた様々な問題を自分の音楽の一部として取り入れていきます。
そうして、迷子のようだった彼女たちは自分の殻を脱ぎ捨て、大きく前へと進んでいくのです。

 

面白いのは、少女たちが抱える問題そのものに対して深く突っ込んだ話はしないんですよね。
ドラムに反対する詩月の母と対決する、みたいなベタな展開もなかった。
彼らの問題はすべて音楽の中で解決し、音楽に還元されていくんです。
雑音だと思っていたものすら、自分を構成する一部なのだと受け入れていて。

 

それはヒロインたちだけの話ではなく、主人公である真琴もまた同じ。
最後のライブのアンコールシーンとても素敵でした。ああいう演出とても好き。

女装して再生回数を稼げたけれど、それによって「女装したから」という言い訳を作ってしまった。
「自分じゃなくても・・・」という自信の喪失につながってしまった。
バンドを組んだことで、一人で演奏していた過去の自分の痕跡すら消してしまった。

それが、紆余曲折を経て、最後の最後に「みんなが、あの人が、僕を待っている」に繋がるんですよ。
他の誰でもなく、「僕」を待っている人がいることを受け入れたんです。
あれは感動したな〜。これぞ青春小説だと思いました。

 

恩師に導かれ、恩師に届くように歌を歌う、というのも好き。
卒業式みたいですよね。華園先生という優しいお節介な先生の庇護下から、真琴たちが巣立つかのようだった。
切ないけれど、清々しくて良いラストシーンでした。

 

うん、面白かったです!
正直、音楽用語?楽器用語?はちんぷんかんぷんだったのだけど、音楽シーンの情景描写が鮮やかだし詩的な表現のおかげで楽しく読めたのも良かった。
杉井光先生のブログも面白かったです。WANDSの話はどこまでガチなのか創作なのか・・・・・・

 

さて、綺麗に終わってるので単巻ものでしょうか。
個人的には、結成したバンドがどうなっていくのかも気になるところ。シリーズ化しないかな?
私は女装少年に釣られて読んだのに真琴くんはほぼ女装してないという詐欺(?)にあったので、続刊では女装してくれることに期待します(そこから脱却する話だったことは重々承知の上で)

created by Rinker
KADOKAWA
著者 杉井光 イラスト 春夏冬ゆう

 

スポンサーリンク
 
0

「楽園ノイズ /杉井光」への2件のフィードバック

  1. ご存知かもしれませんが、カクヨムで小話というかこの作品の短編載ってますよ~
    KADOKAWAラノベ横断企画というやつです

    1. コメントありがとうございます。

      あっ、完璧に忘れてました!
      ありがとうございます。読んできますεε=(((((ノ・ω・)ノ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。