西方守護伯付き魔女の初陣 /守野伊音



西方守護伯付き魔女の初陣 (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年5月刊。
偉大なる母の威光の影に押し込められ、周囲の心ない言葉によって自信を根こそぎ奪われた王女。
見かねた母によって「少年」に変えられた少女は、むくつけき男たちが守護する西方の要塞で何を知るのか。
それは知らなくても・・・!という悲鳴から始まるコメディ分おおめなファンタジーでした。
快活で優しい人達にもみくちゃにされ、頼りがいのある上司に励まされ、少しずつ立ち直っていく少女の成長物語として面白かったです。
あと思った以上に甘かった。終盤にかけて激甘の洪水状態。良き良き。
でも今までの作品より読みづらさを感じたのは何故だろう?

☆あらすじ☆
WEB掲載作品を大幅加筆修正! 落ちこぼれ魔女は恋を知って最強に!?
魔法がうまく使えず引きこもっていた王女ミルレオは、男になる呪いをかけられ、西方守護軍で少年魔女(!?)として修行することに。しかも自力で呪いが解けなきゃ即結婚! ところが西方に、王女が来たとの知らせが——って、ありえない! ミルレオは“女装”して、守護伯ガウェインと己の名を騙る偽王女の正体を暴きに行くが……「お前、女か!?」「きぃあああ!!」 落ちこぼれ魔女が世界を変える、最強ラブコメファンタジー!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

迫害された魔女が逃れ辿り着いて建国した、人と魔女の国・ウイザリテ。
稀代の魔女王として名高いレオリカ女王の長子である王女ミルレオは、「女王と似ているのは容姿だけの紛い物」と周囲から侮蔑され、心を押しつぶされた少女だった。

そんな彼女を未熟者と叱咤した女王によって少年姿になる呪いをかけられたミルレオは、「ミル・ヴァリテ」と名乗り、西方守護伯ガウェインが治める要塞城で働くことになるが―― というのが序盤の流れ。

 

TSものっぽい設定なんですよね。
いや、「っぽい」も何もないか。男装ではなく、実際に少年に変化しているので。
序盤から同僚たちの手で娼館に投げ入れられてて笑いました。正体を知ったら切腹ものでは??
でも西方守護の兵士たちの遠慮ゼロ(しかし気遣いはアリ)なコミュニケーションによって、ミルの心はどんどん解きほぐされていくんです。ここの賑やかさが良かった。流石に女の子にはここまでできないよなぁ・・・・・・できないよね・・・?(ジョンたちはやりそう)
ザルークとの空中遊泳シーンとか好きです。
西方生活の和やかで騒がしくてカオスな雰囲気は、読んでてとても楽しかったです。

 

その一方で、ミルの内面にこびりついたドロドロとした劣等感はしぶとく、彼女は呪いの解除に苦戦してしまいます。

偉大な母への憧れ、魔女の国の王族としての責任感。
周囲から向けられる失望と、母のようになれない自分への絶望。

可憐な少女のなかに、ギュウギュウと押し込められてきた他者の悪意が辛い。
すぐ消えようとするのも「ごめんなさい」が口癖なのも彼女の自衛手段であって、それはなんて痛々しい防御反応なんでしょうか。
特にガウェインが褒めた直後に、彼の瞳を探ろうとするシーンがね・・・・・・

あれだけの力を持った子どもに、大人は容赦なくレッテルを貼り付けた。幾度も幾度も重ねられ、いつしかレッテルだけしか見えなくなった視界で、ミルは更なるレッテルを望むかのように相手の瞳に色を探す。役立たず役立たず役立たず。傷つくくせに、いつか貼られるならば今でいいと。自らを傷つけるだけの存在に縋るように、失望を探す。

実際には家族とは良い関係を築けてきたとはいえ・・・・・・こんなの、虐待された子供だよなぁ。つらい。

 

それにしても実力だけみればミルも最初から規格外の魔女に思えたんだけど、王宮の大人たちは一体何を見ていたんでしょうか。
本番に弱いから小さな失敗を積み重ねた結果、大きな失望に育ったのだろうか。それとも母が更に規格外の魔女だから?
ミルレベルで失望って、お母様はどれほどの怪物なんだよ・・・・・・(怯)

 

とはいえ、その結果としてガウェインに出会い、ミルレオが美しく才能を開花させるというのは、「呪いにかけられたお姫様の物語」としては最高の展開。
愛する国と愛する人を守るため、先陣を切って血まみれで戦うプリンセスの姿はとても格好良かったです。

 

で、その「愛する人」との関係がね、もうね、甘いんだわ・・・・・・!

ガウェインとミルの馴れ初め話とか大好きなやつでした。
ミルと同じ苦しみを持っていたガウェインをミルが救い、そのとき貰った言葉をガウェインがミルに贈って彼女を救う。
巡り巡る優しさの連鎖にときめいてしまう。フェアリーテイルのような原風景も綺麗でした。
これは正しく「自分」を見失った者が「自分」を取り戻すお話なんですね。ラブストーリーとの噛み合わせがばっちりだ。

 

正直、中盤までは結構な読みづらさを感じたんだけど(目が滑るというか、視点が混じると言うか。状況も掴みにくかったかも・・・)、最後は楽しい気持ちで読了。
本作は守野さんの初期の作品らしいのだけど、そのせいで色々と粗いのかな。終盤になってようやく「あ、守野さんだ!」となりました。

 

さて、物語としては綺麗に終わっているけど、続くでしょうか?
WEB版はここまでしかないみたいだけど、名前だけ出てきた宰相さんに登場してほしいし、西方に戻ったミルの日常もみたいし、シリーズ化を希望します。

 

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