かくりよ神獣紀 異世界で、神様のお医者さんはじめます。 /糸森環



かくりよ神獣紀 異世界で、神様のお医者さんはじめます。 (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★★
2020年5月刊。
面白かったー!いや、ほんとヤバいくらい面白かったな!?

糸森環先生の新作は和風異世界転生譚。怪異に侵された人々を手当して救う少女のお話です。

この作品、世界観が最高に魅力的でした・・・・・・あまりにも好きすぎるやつだった。
主人公の住まいは巨大な空き瓶で、それを改造して家具や雑貨を詰め込んで暮らしているんです。ボトルシップみたいなイメージかな。
異世界なのに空き瓶ハウスってなんだよ、と思った方こそぜひ読んでほしい。
「不思議の国のアリス」と日本神話を足して2で割ったような、めくるめくワンダーランド和風異世界が待ってますよ!

孤独な少女が自分の居場所をみつけようと足掻く物語としても読み応えばっちり。
色々と手厳しい虎様との関係も、サスペンスと愛嬌がたっぷりで、すごく良かったです。
これはもう絶対にシリーズ化してほしい!

☆あらすじ☆
異世界に転生したら、神様(怪異)の医者でした。世直し和風ファンタジー!
名により本質が定められる『此の世』——亥雲の国に転生した八重。ある日、化け物に襲われた八重は、かつて神だったという金虎・亜雷を解き放つ。俺様な彼に振り回されて弟捜しを手伝うが、見つけた弟・栖伊は本質を失い、異形と化す病に冒されていた。亜雷は、独特な魂を持つ八重ならば栖伊を治せると言うが……?
「俺はおまえのために解き放たれた」アブない虎に懐かれて、魂の意味を取り戻す“神様治療”はじめます!

以下、ネタバレありの感想です。

 

日本人としての記憶をもったまま、桃井八重は異世界に転生していた。
そこでは彼女のような転生者のことを『迂路児(うろこ)』と呼ぶ。べつの世で生まれ遠回りして還ってきた子、という意味である――

 

もうね、この「うろこ」の説明の時点でワクワクが止まりませんでした。
異世界転生と和風伝奇が混ざり合うような導入部。
今わたし糸森先生のセンスを浴びてる・・・・・・と恍惚としてしまった。

 

そんな信者脳を差し置いても、今回はいつも以上に魅惑的な世界観だと思うんです。

八重の家は、段々畑の中間に立っている。
外観は、蔓草に覆われた、苔生すウイスキーの瓶だ。
なにかの比喩ではない。
一軒家ほどにも巨大化した、某有名な日本製ウイスキーの瓶で間違いない。

ここの「うぇっ?」と思わせる描写だいすき。

 

古代日本を彷彿とさせる、原始的な部族単位の村社会が点在する『此の世』。
世界の中心は人間ではなく植物で、見渡す景色は圧倒的に自然の緑で埋まっている、そんな感じの和風異世界が本作の舞台となります。

しかし、その風景の合間に、なにやらニョキニョキと異物が生えている。

ウイスキー瓶だのコーラ缶だの電柱だのスニーカーだの、現代日本人なら馴染みのあるアレコレが、人が住めるほどの巨大サイズで異世界の景色に紛れているんです。

あまりにも非現実的な光景のため、逆に八重たち人間が縮んでるような感覚に襲われてしまう。まるで小さくなる薬を飲んだアリスのように。

これらの異物は『奇物』と呼ばれ、どうも日本から『此の世』に流れ着いたものらしい?
『此の世』と日本の関係は未だ不明な点が多いけれど、なにやらワクワクしてしまう設定ですよね。こういう世界観に弱い〜

 

そんな変テコな世界なのだけど、これがもう本当に魅力的。
序盤で八重が住んでいた「ウイスキーハウス」内部の描写とか、読んでるだけで楽しくなりました。
手作りタイルで覆った壁面、曲面を平らにするために板をわたした床、ベッド代わりのハンモック・・・・・・ああ、見学にいきたい・・・!

 

さて、『此の世』の不思議なところはそれだけではありません。

今まさに生まれゆく世界なのか、それとも一度滅びた世界(現代日本?)が生まれ直しつつある世界なのか。

詳細は不明ながら、とにかく黎明期にある『此の世』では、森羅万象のあらゆるものが曖昧な存在なのです。
そこで強く意味を持つのが『名前』。
存在を定義する「名」を失い本質も失ったものは「奇現」という病を患い、やがて「朧者」「堕つ神」として暴れ狂う存在に成り果て、人々に災厄をもたらしてしまうのです。

 

この災厄と対峙することになるのが、本作の主人公である八重。
他の「うろこ」とは違って前世の記憶を鮮明に保っていた八重は、その特質ゆえに、「奇現」を治療しうる稀有な存在であることが明らかになっていくのです。

 

病んだあやかしのお医者さんと、荒魂を鎮める儀式を執り行う巫女。
そんな2つのキャラクターが合わさったイメージでしょうか。
巨大化した患者の体内に侵入して、病原となっている蟲を駆除するシーンとか良かったなぁ。
つくづくワンダーランドな世界観と設定です。楽しい。楽しすぎる。

巫女的要素も最高なんですよ。
八重が祭事のなかで唱える呪が本当に格好よくて・・・・・・
「ひふみよ いむなやこと えりうちいかけよ」という字面だけだと訳がわからないのに、そこに漢字を当てられ、その意味が理解できた瞬間のゾクゾク感。
相変わらず抜群のセンスをみせてくれます。本当にどれだけの知識を背景に物語を構築してるんだろう??

 

そんな医者兼巫女である八重ですが、彼女の内面や人間性を描く物語としても読み応えがありました。というか刺さった。

自分の内にこもり、愛を求めつつ人を拒絶する八重。

自己嫌悪の堂々巡りをする八重を、彼女の守護者となった虎様・亜雷はグサグサと正論で貫いていくんだけど、これがもう私にまで刺さる刺さる。
私は「失望が怖い。孤独が怖い。死が怖い」と怯え、自分を守るために薄ら笑いを浮かべる八重の気持ちに共感してしまうので・・・・・・「無意識の後回し」の話とか、あっあっわかる、やめろそれはわたしにもきく

 

そんな八重が、自分のできることを知り、孤独と疑心暗鬼から立ち直り、居場所を見つける姿が描かれていくのです。
少女(?)の成長と救済、変化の過程をたっぷりと堪能できる素晴らしいストーリーでした。

 

主従のような同居人のような亜雷と、その弟・栖伊とのトリオな関係性も楽しかったですしね。
距離と真意をはかり合うような亜雷と八重の緊張感ある関係において、のほほんとした栖伊の存在が良い緩衝材になっていました。

そして何より、もふもふ虎兄弟が可愛いんじゃ〜〜。

でも一番かわいいのは振動機能付きの太刀だったりするんですよね。
私も太刀が変化して亜雷が飛び出てくるに違いないって予想してたよ、八重ちゃん・・・・・・

 

ところで亜雷と栖伊の正体って今後明かされるのでしょうか。
もう彼らの本質は変質してるらしいから、正体が判明しても同じものにはならないかもしれないけれど、気になるんだよなぁ・・・・・・

 

最高のスタートをきった新作だと思います。あとはシリーズ化するだけ!
めっっっっちゃ応援してます!!

 

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「かくりよ神獣紀 異世界で、神様のお医者さんはじめます。 /糸森環」への2件のフィードバック

  1. はじめまして
    こちらのブログのおかげですっかり糸森環作品のファンになった者ですが、
    今回の新作も最高に面白かったですよね…!

    異世界転生を糸森先生が書くとこんなに面白くなるのか…と読んでいて唸らされました。
    (糸森環+和風ファンタジーの時点で間違いなく面白いと読む前から予想していましたが)
    是非とも末長くシリーズ化してほしいですね!

    1. 遠山さん、コメントありがとうございます。

      はじめまして!
      おおお、、、私のブログから糸森環先生のもとへ・・・!嬉しいです本当に嬉しいです!!ありがとうございます!!
      糸森先生の異世界転生、転生要素の使い方もエッジがきいていて最高でしたよね・・・
      どんな思考回路を持っていたらこんな面白い本が書けるのか。信仰心が高まるばかりです。

      絶対にシリーズ化してほしいですよね。応援したいです・・・!

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