平安後宮の薄紅姫 物語愛でる女房と晴明の孫 /遠藤遼



平安後宮の薄紅姫 物語愛でる女房と晴明の孫 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年4月刊。
本の虫の女房が探偵役となり、青年陰陽師が持ち込む事件の謎を解く平安ミステリー。
平安京で起こる不思議な事件と源氏物語の共通項を見出し、興奮してオタク語りをしてしまうヒロインが良い。
日々のお勤めが聖地巡礼になるオタクは強いですね。

☆あらすじ☆
「平穏に読書したいだけなのに!」読書中毒の女房が宮廷の怪異と謎に挑む
怪異や難事件の最後の駆け込み寺・薄紅の姫。彼女に依頼が成立するのは、物語にまつわる品が差し出されたときだけ。薄紅は重度の物語中毒で、特に『源氏物語』には目がないというのだ。
——この異名が広がったのは、晴明の孫である若き陰陽師・奉親のせい。訪ねて来た彼に早く帰ってほしい一心で、物語知識を駆使し怪異の謎を解いたのが悪かった。薄紅を使えると判断した奉親は、言葉巧みにたびたび彼女をモノで釣っては謎解きにかり出すことに。
「また相談ですか? 私は読書に集中したいのでございます!」

以下、ネタバレありの感想です。

 

時は長元十年。
後朱雀帝の即位によって慌ただしい日々が続く後宮に務めている女房・菅侍従には、周囲に秘密があった。
それは、怪事難事変事を解決してくれる駆け込み処「千字堂」の主・薄紅の姫を名乗っていること。
噂をききつけた安倍晴明の孫・安倍奉親は、とある事情から千字堂を訪ね、薄紅の姫の手腕を確かめようとするのだが―― というのが本作のストーリー。

 

『源氏物語』の大ファンである薄紅は、奉親が持ち込む事件のなかに、『源氏物語』との共通点を見出していきます。
彼女の鋭い洞察力と『源氏物語』への深い愛は、事件の裏に潜む人々の愛憎を次々と解き明かしていくのです。

 

これは源氏物語が好きな人ほど楽しい作品なんじゃないかな。
源氏物語にある様々なエピソードや解釈を、薄紅は楽しそうに語っていくんです。そんな彼女の話を聞くだけでも面白かった。
私は学校の授業で触れた以外は『あさきゆめみし』を読んだ程度の人間なので、薄紅の解説をフムフムと楽しく読むに留まったけれど、自らも『源氏物語』のファンであれば更に深い部分で共感や対論ができたりして、そこでも楽しめたんでしょうね。

 

薄紅自身もそういう相手を欲しそうな感じ。
色ボケした坊さんの目を覚まさせるために源氏物語クイズを出してるときとか、本当は心を折らなきゃいけないのに、相手がどんどん知識を蓄えていくもんだから、本題を忘れて楽しんじゃったりとか。
そういうオタクしぐさがやたら可愛いんですよ。
わかるわかる、オタクだもんな。って頷くシーンが多い。
『源氏物語』のことは分からないけれど、推しを布教したい薄紅の気持ちなら分かるよ!笑

 

そんな源氏物語オタクの薄紅が、オタク語りをしながら事件の謎に挑むミステリーである本作。
問題を持ち込んでくる奉親と、彼に気を許さない薄紅の心理的な駆け引きも面白い作品でした。
そういえば、このふたりってアラサー女と二十歳男なんですよね。結構な年の差の組み合わせで意外だったり(そして恋愛色はなかった・・・)
なにが意外って「姫」というからてっきり薄紅も二十歳前後かと・・・・・・
ノリノリで名乗ってる薄紅自身も正体がバレたら出家するレベルだと自覚してるのは笑うでしょ!

 

薄紅と奉親については、二人とも自分たちのルーツにコンプレックスを持っているところが印象的でした。
偉大な祖先を引き合いに出され、見劣りする自分の現状を考えるたびに、彼らはどんな感情を心に抱いていたのでしょうか。
薄紅が「薄紅の名にかけて」を口癖にしたり、奉親が「若輩者の陰陽師なれば」としつこく繰り返す姿をみるたびに、必死にアイデンティティを保とうとしているように見える。
自分は自分でしょ、というのは薄紅の言だけど、あれは似たもの同士の経験者だからこそ実感をもって言えたセリフなのかも。
アラサーの彼女はもう乗り越えた問題なのかな。若い奉親はまだ囚われているように見える。

 

まぁ薄紅はご先祖に関係なく『源氏物語』の世界に耽溺できればそれで幸せなんでしょうけども。
読書仲間の義盛もいるしね!
薄紅と義盛の仲良し感はよかったな〜。
男女の友情とかそういう話ではなく、ただのオタ友感。
みじんも色めいた雰囲気がないオタ友感。あの空気、とても好きでした。

 

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