帝都コトガミ浪漫譚 勤労乙女と押しかけ従者 /道草家守



帝都コトガミ浪漫譚 勤労乙女と押しかけ従者 (ことのは文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年3月刊行。
帝都×異能×主従の和風ファンタジー。
面白かったです。和モノが好き!という著者の愛が詰まっていたと思う。

本に封じられた神魔「言神」を使役する者たちが活躍する帝都。
その帝都で働く主人公は、あるトラブルから言神の青年に懐かれ、彼と共に言神絡みのトラブルに巻き込まれていきます。
物語嫌いで芯が強くて優しいヒロインと、頬を赤らめつつ押しが強い自称従者。
凸凹なふたりの掛け合いがとても楽しかったです。
このイケメン、かなり面倒くさ可愛い。すぐ照れるし、いじけるんですよ。可愛い。

舞台となる帝都の雰囲気も良かったです。
神魔という超常現象を昔から当然のものとして認識するくせに、近代化によって非科学的だと排斥する空気もある。
果たしてそれは時代の変容の始まりか、それとも・・・?

キャラ・設定が楽しい作品だったからシリーズ化してくれたら嬉しいな。

☆あらすじ☆
――本には神様が宿っている。
想いを紐解くレトロモダン・ファンタジー。
帝都で職業婦人をしている朱莉は、ある日、巷を騒がせている怪異に襲われ、住んでいたアパートが全焼してしまう。
途方に暮れている朱莉を助けたのは、眉目秀麗な青年・智人。
だが彼は本に奉られた神様・言神(ことがみ)で、ある洋館の住み込み管理人の仕事を朱莉に紹介する。
寝食が保証されることで住み込みを了承した朱莉だったが、案内された洋館は一癖も二癖もある言神たちの住まう、問題山積みの物件だった!?
ワケあり洋館ではじまる、個性的な言神たちとの同居生活。
今、緩やかに動き出す、人ならざるものが本に綴られ奉られる時代を生きる恋(?)と物語の奮闘記!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

天涯孤独の身の上にあり、帝都で職業婦人として商社に勤めている御作朱莉
突如あらわれた雷獣に襲われた朱莉は、同じく突如現れた青年姿の言神・夜行智人に窮地を救われる。

言神とは、荒ぶる御霊をもつ神魔を鎮めて書物に封じ、再定義して奉られた神のこと。
そして、言神を封じた「言語リ」を語ることで彼らを使役することができるのが「活動弁士」と呼ばれる存在。

朱莉は物語嫌いであるため、言神や弁士に近づかないつもりだったのに、なぜか主をもたない異質な言神である智人に「僕のご主人様になってください!」と迫られてしまいーー というお話。

 

書物片手に神を使役し、人を害する神魔を調伏する。
そういう「弁士と言神」のバディ・アクション要素があるお話なのだけど、鍵を握る「言語リ」の設定が面白いんです。

封じられた神は様々な逸話を持ち、その一面を脚色したり編集したりして、「言神」として使役しやすいように調整がされている。

仮にも「神」に対する扱いとして、なんだか畏れ多いというか「大丈夫かそれ?」みたいな不安を感じる設定ですよね。
もちろん大丈夫じゃない。
本来の形を不当に歪められた言神は暴走し、災害と化してしまう。それを対処するのも弁士の仕事となるのです。

 

主人公・朱莉は弁士ではないのだけど、弁士としての才能を持っていることから、弁士のお手伝いのようなことをしたり、様々な言神たちと関わっていきます。
「言語リ」という性質上、朱莉もまた独自の視点で言神たちを「語って」いくことになるのだけど、これがとても痛快でした。

歪められたり、失意を抱いていたり、負の側面を強調された神魔たちを、次々と語り直していく朱莉。
そこで見せるのは、朱莉なりの「物語の再解釈」と言えるのではないでしょうか。
優しい彼女の視点から、言神たちの物語を、優しく受け止めていくのです。

それはまさに「物語を読む」行為だと思うし、そんな朱莉のことを「良き読者」と呼ぶのがとても素敵。
特に「鬼神殺し」の忘れられた善の一面を、朱莉が必死に訴えたシーンが好きです。
汚点も欠点も決して間違いではないけれど、それだけで語り尽くせるものじゃない!というのは、物語を読む上で(あるいは感想を語る上で)忘れてはいけない視点だと思う。私も一面だけに囚われないよう、広い視点を忘れないようにしなければ。それが難しいんだけども。

 

さて、そんな「良き読者」としての本質を持つにも関わらず、当の本人は「物語嫌い」を公言している。

なぜ彼女は物語を嫌うのか、なぜ言神を忌避するのかーー

物語は、朱莉と言神たちの愉快でにぎやかな生活を描く一方で、彼女すら知らない彼女の過去を描いてくことになります。

 

この後半で更に魅力を増していくのが、押しかけ従者・智人でしょう。
もうねー、めっちゃ健気。
照れ照れと朱莉を慕って付きまとう姿は面倒くさい&可愛いの権化だったのに、こんな過去エピソードを明かされたら好感度が上がらざるをえないでしょ。
人ではないから話が通じないところもあるけれど、その忠義や親愛も人の尺度で測れるものではなくて・・・・・・
他の言神にヤキモチ焼いて拗ねてるところなんか、あざといくらい可愛かったのにね(真宵ちゃんとバチバチしてるシーンとか可愛いの二乗だった)
そんなに嫌なのに、朱莉のために用意して準備して残していこうとする姿が、本当にいじらしいんですよ。ずるい〜!笑

 

これは今後ますます良い主従になりそう。
てか続くのかな?
なろう版(https://ncode.syosetu.com/n0927fl/)はここまでみたいだけど。
朱莉が弁士として本格的に動き出せば更に面白くなりそうなので、シリーズ化に期待したいと思います。

 

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