帝都つくもがたり /佐々木匙



帝都つくもがたり (角川文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年5月刊。
WEB小説『夜猫ジュブナイル』が最高に面白かったので(感想記事)、作家買いして読んでみました。
怖がりでアル中の作家と、その悪友で怪談を集める記者が、震災後の帝都で様々な怪奇現象に遭遇する物語。
ホラーな設定・展開ではあるのだけど、恐怖を感じると同時に切なくなるようなお話が多い印象でした。こういうの好き。
悪友二人の関係もとても良かったです。特に人でなしの関くんが好き。関くんはね、ずるい男なんですよ・・・!(後半以降の好感度の上げ方がえげつない)

☆あらすじ☆
第4回角川文庫キャラクター小説大賞〈読者賞〉受賞作!凸凹コンビの怪異譚
舞台は昭和初期の帝都・東京。酒浸りで怖がりの文士・大久保と、腐れ縁の記者・関が、怪談を集めるべく東奔西走。百物語にはどこか足りない、日常の中に潜む怪異巡りの日々が始まる――凸凹コンビの怪異譚!

以下、ネタバレありの感想です。

 

元来虚弱で気鬱を患い、酒に溺れ、たいして売れてる訳でもない三文文士・大久保純
そんな彼のもとに腐れ縁の記者・関信二が訪れ「紙面に載せる怪談を集めているから取材を手伝ってほしい」と頼んできた。
そうして、帝都を舞台にした様々な怪異事件に巻き込まれる大久保と関の騒がしい日々が始まるのです。

 

まずキャラクターが良いと思う。
主人公・大久保の、暗くて、ジメジメしてて、いつも憂鬱で、人情味があるというより共感性が高すぎて、「お前〜〜〜〜しっかりしろぉぉ〜〜〜〜〜」と揺さぶりたくなるヘタレた人間性がとても可愛かったです。お近づきになりたくないけど!

ただでさえ面倒な性格をお持ちなのに、恐ろしい世界から逃げるように酒を飲むんですよ、このひと。

僕は、もう本当に帰って寝ていたかったのだが、どうにか震える手で懐からジンの小瓶を取り出し呷った。酒の香りと酩酊感が、どうにか僕のなけなしの勇気を守ってくれた。
「わかったよ。行けばいいんだろう!」

持ち歩き用の酒を・・・懐に忍ばせて・・・!笑

僕は赤痢にもコレラにもならず、無事に二日程が過ぎた。念入りに中身をアルコール消毒したのが功を奏したと考えている。

これはとても恐ろしいことだけど、大久保くん、真面目にそう思ってそうなんですよね。

その辺りから、僕の記憶はどうにも曖昧だ。気がつけばいつの間にか家に帰っていて、布団にくるまって寝ていた。頭がガンガンと響くように痛いので、飲み過ぎたのだろう。僕はこれで前後不覚になる事などそうそうない体質だから相当だ。ひとまず、迎え酒でもして宿酔いを抑えようと枕元に手を伸ばした。
手は空を切る。寝酒用の酒瓶がない。

笑うところか・・・!?笑うところだろうか!?!?

 

大久保くん、あまりにも自然に酒を飲むからドン引きです。
でも丁寧で落ち着いていて理性的な文体に、スイッと自然に飲酒描写が挟まれるの巧すぎて笑う。

 

大久保の感受性はとても高く、怪異たちのドラマを繊細に切なく見守ってくれるのだけど、同時に真正面から受け止めることに怯えて酒に逃げるんですよね。これを「臆病者め!」と責めたら更に落ち込んで酒を飲みそう。
心が弱くて内にこもりがちで、全てに怯えながら酒瓶を抱えて布団で丸くなっている。そういう主人公なんです。ダメすぎてかわいい。おつまみあげたい。

 

さて、そんな引きこもり男の尻を叩いて連れ回すのが悪友の関。

関くん、途中まではマスコミ根性丸出しで怪異を追いかける姿に引いてたのだけど(引いてばかりだな)、彼の本領発揮は後半からでした。
ていうか第陸話の『炎のあわい』が良すぎた。
「人の気持ちがわからない」と揶揄された関くんの人間性が、ここでようやく分かるんですよ。ずるいよ、こんなどんでん返し。好きになっちゃうじゃん・・・!

儚くて美しく、そして深い哀しみを感じる刹那の抱擁。

その瞬間でさえ涙を見せなかった男の姿に、胸が締め付けられるように痛い。つらい。
大久保と幽霊の恋も切なかったけれど、これは生前のドラマも垣間見せての結末ですから。
奇跡は起きても時は戻らない。すでに失われた者には、もう手が届かないのです。つらすぎる。

 

関くん、これはずるいよー・・・・・・と思ってたら更に追い打ちをかけるのが第捌話『鏡のむこう』。

なぜ関は大久保のもとに現れたのか。なぜ文を書かせるわけでもないのに取材に同行させたのか。

「どうして俺はいつも見送る側だ。」

あああ、、、、あんなに飄々と過去を語っていた男が、耐えきれなくなったように出した言葉がこれかよ。やっぱり抱えてたんじゃないか。関くん・・・!

 

色々と裏事情がわかると、序盤で関のことを大久保が心中でボロクソに貶していたこと自体が、彼が友に守られていた証明なのだと理解できてしまいます。
そうやって外のことを考えさせて、内に目を向けすぎないように気を配ってくれていたんだ。
悪友じゃないわ、これ親友だわ。。。大久保くん、一生お金借りとこ。。。

 

しまった、主役の男2人のことを語ってたら満足してしまいました。
怪異譚自体も面白かったんですよ!
目玉とられる古書店の話が怖くて好きです。
本を読む上で目玉って大切なのに、それと引き換えに本をもらうという本末転倒感。
それに気づかぬ欲に溺れた人間と欲につけこむ怪異のおぞましさ。
まさに怪異譚のお手本のようなお話でした。楽しかった!

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