次期風紀委員長の深見先輩は間違いなく病気 /稲井田そう



次期風紀委員長の深見先輩は間違いなく病気(角川書店単行本) 【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年3月刊。
面白かったー!

他者の心が聞こえる少女と、彼女への愛情を暴走させる先輩。
元気に狂った先輩の心の声にドン引きしつつも、風紀委員として共に過ごす中で、彼の人間性を知っていく主人公。
異端の能力ゆえに絶望の淵にいた少女は、自分に異常な執着をみせる先輩の姿に何を思うのか。

内向的で心が死んでるヒロインと、変態的で心が元気すぎるヒーローのすれ違いがとても楽しいラブコメでした。
結構シリアスな話なんだけど、先輩の元気な声で闇が吹き飛ばされていくかのよう。こういう救済物語は大好きです。
先輩、変態は変態でも、健全に真面目な変態なんだよなぁ。
この変態は良い変態(良い変態とは)

☆あらすじ☆
ある秘密を抱え、家族と離れて暮らす高校1年生・石崎鏡花は、特待生に選ばれるために入った風紀委員会で、眉目秀麗にして校内一の優等生・深見先輩に衝撃を受ける。なぜなら、鏡花の秘密とは「他人の心の声が聞こえること」。そして深見の心の中では、初対面のはずの鏡花への、異常な愛の叫びが渦巻いていたのだ。全力で接触を回避し続けようとする鏡花と、冷静沈着を装いながら、内心でとんでもない妄想を繰り広げる深見。2人のすれ違いの行方は……。
心の声が聞こえる少女と本音が言えない優等生の恋の行方は——。
出会いに笑い、ラストは号泣!
「小説家になろう」発、異能ラブコメ×青春小説!

以下、ネタバレありの感想です。

 

他人の心の声が聞こえる高校生・石崎鏡花
生まれつきの異能のせいで、家族関係も友人関係も壊してしまった鏡花に、生きる希望は何もなかった。
生活費を稼ぐためにバイトを詰め込み、特待生を維持するために勉強も課外活動も頑張らねばならない。
そのため時間の融通がききそうな風紀委員会を選んだ鏡花だが、その最初の集まりで、彼女は自分の失敗を悟るのです。

 

間違いない天使だ。絶対に俺の天使だ。天使が俺のもとに舞い降りた!俺に会いに来てくれたんだ!俺の!ために!自ら!会いに来てくれたんだ!)
(天使の声だ・・・・・・鼓膜から俺の醜い内側が浄化されていく。い、し、ざ、き、きょ、う、か。たとえ俺が明日全ての言語を忘れてもこの名前だけは覚え続けている。)
(愛してる・・・・・・愛してる・・・・・・永遠に君を幸せにするからな・・・・・・!)

 

変態がおる!

 

初対面のはずなのに、なぜかテンションMAX・執着心全開で鏡花に重い愛情を示す風紀委員の仕切り役・深見透悟
その心の狂乱は括弧に閉じられ、決して外には出さず、表面上はクールな優等生。
なんだけど、肝心の鏡花本人に全てが筒抜けもちろん読者にも丸見え。
常に興奮してハァハァと幸せを噛み締める変態の高ぶりが、凄まじい勢いで紙面を埋めていくのです。
文字で読んでこれだけうるさいなら、耳で聞いたらさぞ頭痛がすることでしょう。だいぶ同情した。

ただでさえ鏡花の能力はオンオフができず、他人の心の声に聴覚が占領されているんです。
葉のさざめきも小鳥の鳴き声も聞こえないほど、他人の心の声しか聞こえない鏡花。
そこで更に騒音がプラスされたら、そりゃあイライラが募ることでしょうよ。

 

実際、前半の鏡花はひどく余裕がない様子で、深見先輩の病的な愛に心をすり減らしていたようでした。
その心の声を外に出してくれたら通報できるのに、とかね。
酷いこと言うなぁと一瞬だけ思ったけど、よく考えなくても酷いセクハラを受けてるのは彼女の方でした。
先輩が実際には何も言わず行動も起こしていないとしても、体臭を感知されたり目視で体重を看破されるのはキモい!怖い上に嫌すぎて笑う・・・!

 

とはいえ、深見先輩は本当に思うだけ。
何もしないし、勢い余ってそんなことを考える自分を恥じている。

そこに鏡花が気づいてからは、「変態の狂気に怯える少女の物語」「変態の狂気に呆れる少女の物語」へとシフトし、物語は柔らかなラブコメの雰囲気を増していくのです。

 

これ、面白いのは、深見先輩は何も変わってないんですよね。
この物語を通して、深見先輩は最初から最後までブレずに病的な愛を叫び、ひたすら鏡花を案じているだけなんです。

だから、鏡花の態度が軟化し物語の雰囲気が変わっていく原因は、ひとえに鏡花の内面にあるのだと思う。
頭のおかしい深見先輩や優しい風紀委員たちと過ごす時間のなかで、少しずつ広がっていくのは鏡花の視界。
周囲に人がいることの楽しさに戸惑う姿は、なんとも切なくなるのだけど、その戸惑いこそが彼女の変化に思えてホッとするんです。

 

とはいえ、鏡花が変わるのは簡単なことではなくて。
異能ゆえに他者を拒絶し、自分の孤独死を想像しながら絶望感を持て余す鏡花。
その心の傷はあまりにも深いものでした。

 

深見先輩が鏡花に執着する理由を知ってからは、一度は浮上したかに思えた雰囲気が一気にどん底へ。
あの終盤の閉塞感はとても苦しかった。
自分は幸せになってはいけない人間だ、好意を向けられるべきではないという、鏡花の強い自罰的感情が辛い。
彼女が追い詰められる理由が決して理解できないものではないから、余計に心がしんどくなる。
でも幸せになってくれよう、深見先輩を幸せにして、深見先輩に幸せにしてもらえよう・・・!とめちゃめちゃ強く思いました。

 

そこからのクライマックス!

 

変態だけど、頼りになる。
心は自由だけど、自制心はある。
そして何より、鏡花が好きで好きで、ただ彼女の幸せだけを願っている。
そんな深見先輩の本領発揮だったと思います。
理性的な表の顔と、情熱的な心の奥。その両面全てで鏡花を想い、彼女の心の傷を包み込む―― あの告白シーンには深見先輩らしさが詰まっていました。このブレなさが最高なんだよ〜〜
物語を覆う憂鬱な空気を、変態的な愛情深さで見事に吹き飛ばしてくれました。超すっきり!

 

うんうん、本当に良い青春ラブコメでした。
この変態は良い変態で、良いヤンデレ(デレ方が病気の人)だ。

 

ところで、一昔前とは違って最近の電子書籍はカバー下もちゃんと収録されるようになりましたね。
本作でも、美しい桜を描いた表紙の裏にあるものがばっちり収録されていました。
めっちゃばっちり深見先輩でした。「良かったな、桜。」に死んだ。
深見先輩は間違いなく病気!

 

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