椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録2 カンパネルラの恋路の果てに /糸森環



椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録(2)カンパネルラの恋路の果てに (ウィングス・ノヴェル)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
椅子を愛して人類を憎む変人オーナーと、霊感持ちバイト女子高生。
そんな二人が、椅子にまつわる幽霊騒動に巻き込まれるホラー・ミステリー第2弾。
相変わらず怖かった・・・!ぶるぶる震えるような怖さじゃなくて、ぞわっと瞬間的に鳥肌が立つ感じ!
でも面白いです。1巻に続き、椅子薀蓄と謎解きに読み応えがある作品です。
そしてヴィクトールと杏の関係が本当に楽しい。
糸森環印のヒーロー、「気にするのそこ!?」っていうズレたヤキモチが可愛すぎてときめくんですよね。

☆あらすじ☆
霊感体質の女子高生・杏はアンティーク椅子工房「TSUKURA」でバイトを続けている。極悪人顔揃いの職人たちは相変わらずみんな心優しく親切だし、死にたがりで人類嫌いで変人美貌のヴィクトールからは人類扱いされず、時に楽しく椅子談義が弾んだりもする。アレさえ出なければ本当に良い職場なのだ。ところが、ある二つの椅子が工房へ持ち込まれて以来、杏はたびたび恐ろしい目に遭うようになってしまい……?
バイト継続の危機勃発、ふんわりオカルティック・ラブ第二幕!

以下、ネタバレありの感想です。

 

またも「TSUKURA」に幽霊がご来店。
しかもとても怖い。私の脳内イメージは椅子に座る貞子でした。怖すぎ・・・!

シェーカーチェアに取り憑き、杏に嫌がらせをする謎の幽霊。
ロマンと恐怖を刺激する、廃車となった鉄道のボックスシート。

二つの「椅子」は様々な怪奇現象を呼び、更に「別の恐怖」が杏を襲うことになり―― という第2弾。

 

本当に怖いのは生きている人間、というのはホラーの話題でよくある言い回しだけど、正直どっちも怖いよ!
貞子みたいな幽霊にまとわりつかれるのも、人気のない屋内にお面かぶった男が現れるのも、同じくらい怖いよ!!

あの状況で「椅子が汚れるから汗かきたくない・・・」と考える杏の静かなるパニックにゾッとしました。
しかも助けてくれたのも幽霊っていう。杏って他のシーンでも「幽霊に襲われるところを幽霊に助けられてたりしてましたよね。大丈夫かな。ちょっとだいぶアッチ寄りの存在になりつつあるような・・・・・・

 

杏、ヴィクトールや「TSUKURA」のために幽霊騒動を解決しようと意気込んでいるけど、それってなんだか深淵をのぞいてるような不安感に襲われるんですよね。
彼女は死人を見つめすぎだと思う。生者と死者の区別がついてないから無理もないんだけど(普通に会話したあとで「誰と喋ってたの?」はやめろー!)、心配でたまらない。
本当はヴィクトールのように我関せずで「何も見えてないし感じてません!」と目を閉じ耳を塞いでるのが正しい反応なんだろうなぁ・・・・・・それで済む状況じゃないから結局ヴィクトールも逃げられないんだけど。

 

そんな訳で、またも怪異現象から逃げられなくなった二人が挑む今回の事件。
ミステリー的にも面白い話でした。
「禁断」が何重にも重なる関係で、しかし想いの深さが食い違ったゆえの悲劇。
そのドラマには切なくなったけれど、それでも「ハレルヤ。恋は幸いだ」と言いきる姿には不思議な清々しさがありました。
あのセリフはとても印象的だったし、透明な恋心が好きだと思った。
あんな結末になってもそう言えるのが、その愚直なまでの恋が、なんだか美しくて。

 

それにしても「恋は生きている間にするもの」だから、そのまま死ねば想いは永遠になるのかな。
この後に収録された短編で生きてる人間たちの醜悪な恋愛事情が描かれたものだから、余計にそう思ってしまいます。
「恋は幸いだ」と思えるうちに終わらなければ、恋は災いになりかねない・・・・・・

 

まぁそういう恋だの愛だのは、杏とヴィクトールにはまだ早い話の様子。
でもこの二人の距離感、とても好きです。
杏は必死に気持ちに蓋しようとしているけれど、どう見ても特別扱いされてるからなー。
人類嫌いのヴィクトールから「人類」の枠外だと言われた上に、フルネーム呼びでもなくなったし。
これを意識するなっていうのは酷だよ!笑

 

ヴィクトールの名前呼び、杏を引き止めるための特例的なアレかと思いきや(あのシーンで二人が交わす切実な空気がとても良かった)、その後も継続してましたからね。ちょっと意外だった。
恋愛否定派のヴィクトールがそう簡単に落ちるとは思わないけれど、この「結局どういう関係なんだ?」と突っ込みたくなる距離感が楽しくて仕方ないので、杏にはぜひとも今後も悶えてほしいと思います。

 

あとがきを読むに3巻も出るのかな?楽しみです。

 

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