魔神少女と孤独の騎士1 /三月ふゆ



魔神少女と孤独の騎士 1 (ヒーロー文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年2月刊。
やや人には勧めにくいけど(独特な雰囲気なので)、私はとても好きな系統の作品でした。

内気で自罰的で吃音気味のいじめられっ子。
何かあればすぐ謝り、他者と上手くコミュニケーションを取れない自分に嫌悪して、更に内へ内へと逃げていく。
そういう女の子が、残酷な異世界に突き落とされ、望まぬ力を手に入れて波乱の運命を歩みだす物語です。

まさにダークファンタジーという感じで、主人公のキャラクターも合わさり、物語は常にどんよりと暗く重い空気をまとっています。

けれど、そこで主人公は少しずつ変わっていくのです。
3歩進んで2歩下がるように、繰り返されていく成長と後退。
自分がどんな存在になったのかも知らないまま、主人公は異世界の迷宮を進むことになります。
彼女が罪を犯して眷属とした、哀れな騎士と共に。

異世界と現実世界の交錯や、迷宮を巡る各国の思惑、そして人を惑わす「魔」の恐怖。
今まさに動乱が起こりつつある異世界で、少女の運命はどこへ転がっていくのか。

まだまだ謎の多い物語です。続きも楽しみ。

☆あらすじ☆
内気な女子中学生が、亡国の騎士を従えて魔の王になる。現実と異世界が交差する、残酷で美しい珠玉の異世界冒険譚。
気が弱く、クラスで孤立している女子中学生・篠原七子。
ある日、七子は同級生の活発な少女・瑞樹優花 に、秘密にしていたノートを貸してほしいと頼まれる。
そのノートが翌日クラスで回し読みされていることを知り、ショックで図書館へと逃げ込むが、そこで不思議な本と出会う。
「この世界から逃げ出したいなら、お手伝いしてあげる——」
七子は本に取り込まれ、気がつくと異世界にいた。
恐怖に震えながら森を彷徨っていると、血まみれの騎士に会い、「眷属」へと変えていく。
内気な少女・七子と、無口な孤独の騎士・エリアス。
歪な主従関係の二人は、「魔の森」を歩きだすのだが……。
これは一人の少女が残酷世界を生きていく物語である。

以下、ネタバレありの感想です。

 

クラスに馴染めず、大切な趣味を笑われ、ひとり泣いていた女子中学生・篠原七子
逃げ込んだ図書館で不思議な黒い本 《□□□で□□になる方法》 を見つけた七子は、その本に頭から飲み込まれてしまう。

気づけば異世界の「魔の森」にいた七子。
そこは世界に五つ出現した「大迷宮」の中にあり、この大迷宮から現れる「魔」の脅威にさらされる異世界の人々が迷宮を休眠期に移行させようと踏破を目指していた。

そして、なぜか人々から「高位の魔」と呼ばれる七子は、自分が人ではないものとなっていることに気づき、底しれぬ恐怖に襲われることになり―― というストーリー。

 

女子中学生が本に捕食されるというショッキングな幕開けをした本作は、非常に重苦しい雰囲気で物語が動いていきます。

この暗い雰囲気づくりに一役も二役も買っているのは、主人公である七子のキャラクター。
これがね、本当にネガティブで内向的な子なんですよ。
もどかしくて堪らないくらい、ひたすら自分で自分をいじめ続ける七子。
何かあれば「私のせい」。少しでもやらかしたと思えば「ごめんなさい」。
周囲全てに怯えて縮こまる様は見ていて可哀想になるし、同時に少し苛立たしく感じます。

 

そういう子が、たった一人で異世界に突き落とされた。
しかも、出会ったばかりの騎士・エリアスを衝動的に食べて(※比喩ではない)、彼を「眷属」とし、そのことで恨みをぶつけられ、拒絶されてしまうのです。

誰も知る人のない世界で、眷属となったエリアスは七子にとって保護者に等しい存在。

でも彼は七子に心を許さない。決して味方ではないのです。

七子の仕草を真似るエリアスをみて、「彼から信仰を奪った」と気づくシーンの恐ろしさよ・・・・・・
魔を憎む男を、魔が眷属にしたことの罪深さに心がギュッと絞られる。
互いに望まぬ主従関係は二人の間に溝をつくり、ギクシャクとした空気のまま、二人は迷宮を進むことになるのです。

 

こんな状況でメンタルがしんどくならないわけがない。
ただでさえボロボロの心は更に追い詰められ、七子はどんどん小さくなっていきます。
七子の暗い心情描写は執拗なほど丁寧に描かれていて、胃が重くなるのに読ませる圧は異様に強い。
こういう読み味、私は結構好きだったりします。

 

エリアスと迷宮を探索することになった七子は、その中で彼が抱えた事情や、この世界が抱える問題を知っていくことになります。
同時に、「高位の魔」と呼ばれる自分が何者なのか、何ができる者なのかを知ることになるのです。

 

何も分からない状態で始まり、迷宮の中で様々な経験と知見を得ていく七子。
「魔」に蹂躙され、あるいは「人」に蹂躙された命の声を聞くたびに、七子は少しずつ変化していきます。

それはとても頼りなく、鈍重な変化ではあるけれど、確かな変化でもあって。

元々、七子は軽率に謝る割に「これは自分を許すだけの謝罪」と客観的に評価する不思議な敏さもあって(そのバランスがあるから読みやすかった)、極端に臆病だけど決して愚者ではないんです。

だからこそ、少し心持ちを変えるだけで驚くほど見違える。

七子が自分を奮い立たせた瞬間に「おおっ!」とこちらも高揚感を得るんです。
小さなカタルシスが何度も起こる感じ。これがとても楽しかった。

 

まぁ、ポジティブモードは全然長続きしないんですけどね。
それでも一歩一歩、後退しながらも成長する七子をみて、この子がどんな道を歩んでいくのか固唾を呑んで見守りたくなるのです。

 

とはいえ、七子が歩む道はとても険しいものになりそうな予感。
活動期に入った迷宮から現れ、エリアスの祖国を滅ぼした魔神ジャムジャムアンフ
今なお諸国の中枢に入り込み、撹乱と誘惑を繰り返す魔神に対し、人々はどうやって立ち向かうのでしょうか。

 

また、迷宮に対する国家や宗教の思惑が錯綜している点も気になるところ。
裏から魔神が手を引いてる可能性があるとは言え、ハイリスクハイリターンな迷宮を前に人が割れるのも当然だと思うし、そこらへんもどう収拾をつけていくのか。

 

そして、七子とエリアスは動乱前夜のような世界で何を成すのか。
未だギクシャクしてる二人がマトモな関係を築けるのかも気になるところですが・・・・・・「エリアスさんと友達になりたい」という七子の願いは叶うのだろうか。
エリアスさん、こっそり七子を気にかけてる様子はあるんだけど、思考停止と口下手(「ここはどこですか」「森です」は笑った)とあれやこれやで溝が埋まる日は遠そうなんだよなぁ。

 

異世界に落とされたもうひとりの少女の動向も気になるし、やばそうな「英雄」(?)も何かしでかしそうだし、色々と先行きが不穏。本当にどうなっちゃうのでしょうか。
特にユウカちゃんは、状況だけ見れば女性向けラノベの主人公みたいなんだけど、裏側が丸見えだから悪夢の予感しかない。
うーん、これはワクワクしますね!(悪意)

 

ちなみにWEB版は完結している様子。
かなり続きが気になるし読んでしまおうか。でも書籍版の続きも楽しみに待ってます!

◎魔神少女と孤独の騎士(旧:異世界で魔王になる方法):小説家になろう
https://ncode.syosetu.com/n2506br/

 

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主婦の友社
著者 三月ふゆ イラストレータ ともぞ

 

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