鬼恋語リ /永瀬さらさ



鬼恋語リ (集英社オレンジ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2020年2月刊。
鬼と人が争う世界で、和平のために鬼の頭領へ嫁ぐことになった幼い少女。
兄の首を落とした男の妻となった主人公は、兄の死を巡る陰謀を探っていくことになります。

なかなかにサスペンス要素の強い和風ファンタジーでした。
全体的にダークな雰囲気なのだけど、主人公の夫である鬼の天然具合が可愛くてシリアス中にもふふっと笑えることが多々ありました。
キャラがとにかく魅力的な作品だと思います。
おにロリならぬ鬼ロリ・・・とかくだらぬことも考えてしまった。

心に棘を残すような終わり方も良かったと思います。
ただ、もう少し掘り下げてほしかった部分や、世界観・設定が掴みにくいところがあったので、続刊があればそのへんにフォローがあれば嬉しいかも。
期待します。

☆あらすじ☆
泥沼化した鬼と人間の争いに終止符を打つため、戦の最前線を担った椿ノ郷の郷長の妹・冬霞は、兄を討った鬼の頭領・緋天へ嫁ぐことに。兄は以前、「自分の首を取る者がいたら、それは親友だ」と語っていた。その死になにか秘密があると感じた冬霞は、自分がしあわせになるためにも真相を探るべく奔走する。少しずつ真相へ近づく中、冬霞は緋天の心にふれ――?

以下、ネタバレありの感想です。

 

人を食らう鬼が出没する国・櫻斗国。
人と鬼は長い間争ってきたが、人間側の英雄・椿臣雪疾が鬼の頭領・緋天に討たれたことで、朝廷は鬼から提示された降伏勧告を受け入れることになる。
その条件のひとつは、雪疾の妹・冬霞が緋天に嫁入りすることだった――

 

種として捕食者であり、兄の仇でもある鬼のもとに嫁ぐことになった主人公・冬霞。
弱冠12歳の少女でありながら、厳しい環境で育った彼女の心に幼さはなく、冬霞は毅然とした態度で緋天のもとに向かうのです。

 

まず、この冬霞のキャラクターがとても良かったと思います。
冬霞は子ども扱いされることに怒るんだけど、確かに彼女の精神性はすでに「子ども」と侮ることはできないレベル。
冷静に物事を見極め、感情に振り回されず、時に大人たちをやり込める。
相手が朝廷の偉い人であろうと怖い鬼であろうと、落ち着いた態度で堂々と渡り合う姿は「英雄の妹」と呼ぶに相応しい。

まぁ「子ども扱いされて怒るうちは子ども」という部分もあるっちゃあるんだけど、そこがまた愛嬌でもあって。
大人の皮を被った子どもというよりは、背伸びして大人になろうとする(あるいは、ならざるを得なかった)子ども、という印象を受けるんですよね。
子どもでも大人でもない歪さが不思議な存在感を生んでいたし、そんな自分の二面性を目的のために利用できる強かさが好ましい主人公でした。

 

不思議な存在感といえば、冬霞に負けず劣らず面白いキャラクターをしていたのが夫である緋天。
寡黙を超えてコミュ障の域に達している・・・・・・いや、それすら超えるド天然な鬼でした。
何を考えているのか分からないというより「こやつ、何も考えていないのでは・・・!?」と思わせるんですよね。終盤でそのまんまのセリフが本人から飛び出してきてめっちゃ笑いました。
緋天、後半にかけてどんどんキャラが良くなっていくんですよね。
頭領がこれだと下は苦労するだろう。「なんだその自己完結は!?」が最高でした。

 

さて、そんな濃いキャラ同士が夫婦になる話ではあるんだけど、恋愛要素はあるにはあるけど、薄いと言えば薄い。
冬霞が夫に恋をする様子は面白かったものの、緋天の側がそこまでたどり着かなかったので(最後は意味深に締めたけど)
緋天の冬霞に対する感情が気になるなぁ。続刊があれば、もっと詳しく掘り下げられるのでしょうか。

 

それはさておき。

 

物語の本題は「なぜ雪疾は死んだのか」という点にあり、鬼の里に入った冬霞はその謎を追っていくことになります。
このサスペンス要素も面白かったです。
陰謀の黒幕は割とあからさまだったけれど、最後の最後でゾッとさせてくれたのが良かった。
情念と執念の末路。いつか冬霞にも彼女の気持ちが分かるようになるのでしょうか。それが分かるような、恐ろしい女になるのかな。
それはそれでちょっと楽しみな成長かもしれません。なにせ彼女は鬼の花嫁なのだから。

 

女の情念といえば、兄の想い人の話はもう少し掘り下げがほしいと感じました。
というか彼女と雪疾の間に何があったのか詳しく知りたかった。
あまり細かく描くと蛇足になったのかもしれませんが、親友本人ではなく彼女に託した割に、実際に二人の関係がどの程度のものだったのか、いまいち分かりにくくてモヤモヤしてしまいました。

 

あと、少し気になったのは鬼の領地となる椿ノ郷が具体的にどうなるのかという点。
「人を食う」と言いつつ食べなくても問題ないらしいけれど、鬼の里で生活するのかな。それとも隷属?鬼の里での人の扱いが上手くイメージできなくて。唯一のサンプルがああいう感じでしたし・・・・・・
まぁ緋天が何も考えてなかったから不透明に見えたというのもありそう。本当に大丈夫か、あのリーダー!笑

 

引っかかった部分については続刊に期待します。
キャラはとても良かったし、冬霞と緋天の夫婦生活がもっと見たい!
シリーズ化待ってます。

 

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集英社
著者 永瀬さらさ イラストレータ ねぎしきょうこ

 

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