りゅうおうのおしごと!12 /白鳥士郎



りゅうおうのおしごと!12 (GA文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2020年2月刊。
奨励会三段リーグ編クライマックス。
いつも以上に群像劇の様相を呈していて、あちこちで死闘が繰り広げられる第12巻でした。

☆あらすじ☆
奨励会編堂々のフィナーレ!
奨励会三段リーグ。
四段(プロ)になれる者は2人だけという苛酷な戦場。そこに史上初めて女性として参戦した銀子は、八一と交わした約束を胸に封じ、孤独な戦いを続けていた。八一もまた、新たなタイトルを目指し最強の敵と対峙する。
そんな2人を複雑な思いで見守るあいと、動き出す天衣。そして立ちはだかる奨励会員(なかま)たち。
「プロになるなんて、そんな約束をすることはできない。けど――」
大切な人の夢を踏み砕くことでしか夢を叶えられない。それが将棋の世界で生きるということ。
銀子が、創多が、鏡洲が……純粋なる者たちの熱き死闘に幕が下りる。
奨励会編堂々のフィナーレ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

今回はどこから感想を書くか迷うほど盛りだくさんな内容でした。

銀子や鏡洲さんの運命が決する三段リーグの最終局面。
そして、八一が挑むソフトと人類の限界を巡る帝位戦。

特に三段リーグの方は才能の篩が容赦ない存在感を発揮し、それによる悲喜こもごものドラマにとても胸が熱くなりました。

 

一番印象に残ってるのは鏡洲さんだなぁ。
個人的には鏡洲さんの好感度爆上げ回でした。
嫉妬や焦りから盤外戦術が横行するなかで、自分らしくあろうとする強さがとても格好良かった。
面倒見のよさや人当たりのよさが貧乏くじを引かせてばかりだとしても、その人格は誰よりも美しいと思うんです。

でも、そういう人ですら容赦なく切られてしまう酷さこそ、悲劇を際立たせるんですけどね。
なんかさ、3人目!って言われた時に「えっ、そっち!?」と思ってしまった。
どれだけ人間性に優れていようと、将棋を愛していようと、将棋の神様に愛されるわけじゃない。
努力は報われるとは限らないし、善行を積めば救われるわけでもない。
ああ、鬱になりそう。

 

そんな鏡洲さんの話は、鏡洲さんと全く正反対の存在によって少しだけ救いをみせてくれました。
鏡洲さんと創多の関係、すごくすごく良かった。
方や年齢的にがけっぷちの努力家、方やまだまだ未来がある最年少の天才。
そんな二人が真っ向勝負で殺し合い、最後には勝者が敗者の夢を担いで先へ行くんですよ・・・・・・めちゃめちゃ熱い!
王道スポ根ものみたいだった。二人の年の差がまた良いんですよね。世代交代しつつも、未来へ繋がっていく感じ。こういうの好きすぎる。

 

しかしなぁ。鏡洲さんはこれからどうするんだろう。
あとがきを読むにまだ物語から退場はしないようですが。

 

もうひとつ印象に残っているのは辛子さん。
これは良い意味じゃないのだけど・・・・・・
悪い人にみえて実はいい人だった的な印象を反転させる展開だったけど、どうにも掘り下げが足りていない気がしました。
銀子との繋がりについて色々語られていたけど、しつこく銀子の心臓を揶揄していた悪印象は変わらないような。
そもそも銀子が元気になっていたから自分も奮起したんじゃなかったのか。心配の裏返しで「他の子はみんな死んだ」とか言うの?
いや、彼の心境は色々と察することもできるんだけど、個人的にはもう少し反転後のフォローが欲しかったな、という感じ。

このあたり、今回は色んな話を混ざりすぎて一人ひとりの扱いが(他の巻と比べて)手薄だった気がするんですよね。。。

 

それはさておき。

 

竜王だの魔王だの、八一の呼び名が「なんかソレって討伐対象ではない?」という不穏な空気を漂わせてきました。
「もし、あいつの視点で書かれた物語なんてものがあったら、それはきっと・・・・・・」というセリフ、なかなかにゾッとした。

あれっ、おかしいな!?
銀子のために「勝つしかない」と戦い抜いた八一と、八一のために心臓を動かして戦い抜いた銀子―― という恋人たちのシンクロが感動的なクライマックスだったのに!?

なんだかとんでもない勘違いをしてしまった気分。
二人の心が重なったように見えて、スルリとすれ違ったような・・・・・・

 

思えば八一と銀子の対比はいつも残酷ですよね。
将棋で繋がり、才能という圧倒的な断絶を抱えた二人。
いつか指す、二人の公式戦のことだけを。
最初はロマンチックに思えた一文なのに、なんでこんな現実逃避の叶わない夢を見てるような気分にさせられるのか。はぁーーーー、辛い。

 

竜に翼を与えた天使と、竜が守ろうとした白雪姫。
この二人の関係もどうなっていくのか。
銀子はあのお祭りのとき、何を思ってあいに八一を託したんだろう。死亡フラグっぽくていやだ〜〜!
うーーーーん。怖い。まだ続くのか。今回も読むのが怖かったのに。
心臓の話はなんとなく今回で終わったようにも見えるけれど(肋骨折る勢いでセルフ心臓マッサージできるの強い)、前回のあれやこれやの伏線は未回収ですよね・・・・・・清滝師匠にまだ何か懸念があるようだし。

 

ところで、まだ付き合ってないから浮気じゃないよね?とか考えてた八一、本人に悪意はなくても押し流されて関係をもってあーだこーだ言い訳しながら浮気を続けるクソ男の素質がある。

 

奨励会編が終わり、次から新展開が始まるわけですが、私の願いは最終巻まで変わりそうにありません。

銀子ちゃん、生きて、幸せになって!!!!!

created by Rinker
SBクリエイティブ
著者 白鳥士郎 イラストレーター しらび

 

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「りゅうおうのおしごと!12 /白鳥士郎」への8件のフィードバック

  1. 姉弟子は肋骨と一緒に死亡フラグも折ったって信じてます(震え声)
    最後の八一が信頼できない語り部っていうのはちょいちょい感じていたのでしっくりきました、常に自分は才能ないと言って対戦相手褒めてるけど結局吸収して超えてるし
    八一は自分の中にあいがいるとか言ってますけど弟子の才能を開花させて自分が吸収しちゃうのは本当にひどくて笑えます

    1. コメントありがとうございます。

      肋骨と一緒に死亡フラグを叩き折ったんですよ!絶対に!私もそう信じています・・・!
      八一、愛と勇気と努力の人みたいな雰囲気だしてるけど、隠しきれぬ人外感がありましたもんね。

      >八一は自分の中にあいがいるとか言ってますけど弟子の才能を開花させて自分が吸収しちゃうのは本当にひどくて笑えます

      めちゃめちゃ笑ってしまいました。ですね。本当にそれです。あれ?本当にそうですね????wwww

  2. 半年たちましたので参りました。

    鏡州さんと創多のやり取りは確かに良かった!生意気で機械めいた不気味な雰囲気すらあった創多の掘り下げもよかった!あの態度にも理由があり結構熱さを秘めていたのはよかったです。

    辛香さんの件 
     私はこちらにひかれたんですよ。奨励会時代、熱意がみなぎっていたような人が、将棋を憎むにいたるも、もう一度
    戦おうとすべてを擲ち、すべてを武器にして戦う様が。
    銀ちゃんに外道発言して首取りに行ったのは、ただの病人ではなく、一人前の立派な全力を尽くさねば殺せない敵と認め、ある種の誠意なんだと思います。「 武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つ事が本にて候(朝倉宗適)」
     だからこそフォローあの控えめさでいいんだと思います。
    辛香さんはきっと、銀ちゃんに好意を持ち強さを認めるからこそ、次も(あるのかはわかりませんが)容赦なく外道もためらわず殺しにくる。それでいいのだと思います。

    そして驚きの於鬼頭曜さん!創太以上に機械めいたこの方!
    4段昇格時の文章!いきなりウルっと来てしまいましたよ。

    あと蛇足ですがもうおしまいとあきらめて帰ろうとしたら
    実は助かってた坂巻さん。実際これと同じ事件がありまして
    中座真さんという方が、やはり年齢制限最後の年に敗退して
    もうダメだと思いかえり支度をいていたら、ライバルが全滅
    して首の皮で昇格!其の呆然とした写真は結構有名。
    しかしこの中座さん。デビュー後まもなく中座飛車という
    戦法で将棋界を驚かせることに!この逸話は、前回こちらに
    訪問した際紹介した「聖の青春」作者大崎善夫さんの第2作
    「将棋の子」の冒頭部で紹介されています。「将棋の子」は
    まさしく12巻同様奨励会で敗れ去っていった人々の物語です。

    1. タングステンさん、コメントありがとうございます。お久しぶりです!

      >鏡州さんと創多のやり取りは確かに良かった!
      創多くんの掘り下げ、とても良かったですよね!
      ナマイキ〜〜って思っていた天才少年の抱えていた寂しさと孤独がとても刺さるし、そこからの救済や盛り上げも素晴らしかったです。

      >辛香さんの件 

      感想では不満を書いてしまったんですが、辛香さんの挫折は今回いちばん刺さったんですよね・・・
      必死に打ち込んだあとで何も手に残らない絶望感とか、あまりにも生々しくて。
      それだけにもう少しフォローがほしかった(すべてのモヤモヤを解消してほしかった)んですが、確かにフォローのために説明しすぎても無粋だし、あそこで止めるのが丁度いいのかもしれませんね。
      殺し合いという意味では、あの銀子との一戦がまさしくそうでしたから。

      >そして驚きの於鬼頭曜さん!創太以上に機械めいたこの方!

      於鬼頭さんに関しては、なぜ、あそこの挿絵がないのかと・・・!笑

      >あと蛇足ですがもうおしまいとあきらめて帰ろうとしたら実は助かってた坂巻さん。

      あれってモデルのエピソードがあったんですか!?めちゃめちゃドラマ持ってるな、将棋界・・・!

  3. 棋界にはリアルハーレム作ったヤバイ人がいるので主人公の性格的に不安です
    銀子の死亡フラグも心配、生贄に主人公魔王化とかはやめてほしいけど作者が激重展開大好きなのが怖いです

    1. ななしさん、コメントありがとうございます。

      リアルハーレム!?将棋界、もはやラノベなのでは???
      八一は本命を銀子にしたまま2番以下もキープしそうな空気がめちゃめちゃ出てますよね。。。
      もしも銀子が死んじゃったら「死んだら永遠になる」的な感じで正妻枠が永久欠番扱いもありうる。怖い。
      激重展開な上に個人的に超苦手な展開なので、本当に憂鬱です・・・・・・

  4. 遅ればせながら読了。夏祭りで姉弟子が言った「強くなった雛鶴あいともう一度盤を挟んでみたかった」が不穏ですね…。プロ棋士になるから二度と対局の機会はないという天衣の見解にはあいが疑問を抱いており、物語の流れ的に間違いでしょう。
    だとすると姉弟子の病気は再発しており、本人も薄々気付いているというのが濃厚ではないでしょうか。最終戦で吐血したのは心不全で肺の血管に血が溜まり破裂したことが原因と思われます(折れた肋骨が肺に刺さって吐血したなら、呼吸もままならず、とても将棋は指せないはず)。

    もはやメインヒロインとなった姉弟子が簡単に亡くなるとは思えませんが、ここまで伏線を敷いている以上、姉弟子の病気が今後八一の将棋や人間関係に大きく影響を及ぼすことは間違いないと考えて良いと思います。
    そのときは姉弟子から八一を託されたあい…彼女が物語の鍵を握りそうな気がしています。

    1. hiyuさん、コメントありがとうございます。

      >夏祭りで姉弟子が言った「強くなった雛鶴あいともう一度盤を挟んでみたかった」が不穏ですね…。

      そこ、本当に不穏ですよね。なんであんな嫌なフラグが・・・・・・

      >だとすると姉弟子の病気は再発しており、本人も薄々気付いているというのが濃厚ではないでしょうか。

      今回でようやく一段落したのに、次巻あたりからまた姉弟子に試練がくるんですかね。そういう雰囲気ありますね・・・・・・
      姉弟子死亡で気落ちする八一を支えるあい、という構図、あまりにも簡単に思いついちゃうので外れてほしい予想ではありますが、彼らの三角関係がどうなるのか本当に気になります。気になりすぎて胃が痛い・・・・・・

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