―異能― /落葉沙夢



―異能― (MF文庫J)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年1月刊。
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞「審査員特別賞」受賞作。
面白かったです。というかコレは好きなやつだ!

とある街で繰り広げられる、異能を持つ少年少女のバトルロワイヤル。
なんというか「これぞ私が待ち続けていた現代伝奇!」って感じでした。こういうの読みたかったんだよ〜〜〜

世間の「裏側」で主人公たちが異能を使って色々やって、それが警察や市民などの「表側」の人々から謎多き怪奇事件として扱われる、みたいなやつ。
良いよね。そういうの大好きなんですよ。私の需要にがっちりハマッた作品でした。
1冊で綺麗に終わっているところも良かった。次回作も楽しみです。

☆あらすじ☆
この世界には確実に主人公側の特別な人間がいる。でも、それは僕じゃない。
自分の凡庸さを自覚している大迫祐樹(おおさこゆうき)には、成績優秀で野球部エースの赤根凜空(あかねりく)と学校一可愛い月摘知海(るつみちひろ)という友人がいる。二人は誰が見てもお似合いで、自分は間を取り持つモブキャラなのだ、と認識する大迫だが、なぜか月摘と2人で映画に行くことになってしまう。「デートだね」とはにかむ月摘に戸惑いながら帰宅した大迫の前に、見知らぬ少年が現れて問う。「君の願いは、なにかな?」それは異能を秘めたモノたちへのバトルロワイヤルへの招待だった。「僕……の中にも異能があるのか?」しかしそれすらも「完全な勘違い」だったのかもしれない——!!
予想を覆す怒濤の展開。審査員評が完全に割れた事件的怪作、刊行。

以下、ネタバレありの感想です。

 

これを読み終わってから新人賞の講評を見に行ったんですよ。審査員評が完全に割れたってあらすじに書いてるし、どんなものかと思って。

第15回MF文庫Jライトノベル新人賞

そうしたら、

一気に読み上げて「最優秀賞だ!」と確信して意気揚々と審査会に行ったら、べた褒めしているのは自分だけでした、な作品。
決して万人に評価されるものではありません。でも刺さる人間にはぶっ刺さる。他人にとっては短所と思われそうな地の文の淡々とした温度もシンプル極まる戦闘シーンも、何もかものが僕の好みでした。

という三浦勇雄先生のコメントがあって、「やっぱそんな感じ????」となりました。
客観的にみて万人に受けるやつじゃないのか・・・・・・こんなに面白いのに・・・・・・

 

少し前に現代伝奇読みたいって騒いでたら「現代伝奇は売れないんだよ・・・」と言われちゃったし、このジャンル自体があまり需要は大きくないんでしょうね。悲しみ。

 

でも!でも私は好き!!!
褒めちぎってた三浦先生に全力で同意するくらい私もこれ好き!

 

さて、物語の感想に入りますが、これはもうネタバレしないと何も語れないタイプの作品だと思います。

 

だって異能バトロワが始まった最初の戦いで、あらすじに出てくる男子高校生・大迫祐樹が死ぬんですもん。

 

えっっっっっっ!!!

 

衝撃でした。
本人も知らない彼の異能の正体が明かされることもなく、何もできないまま「主人公は僕じゃない」と劣等感を丸出しにしていた少年が本当に死んじゃうんだから。
本気で主人公じゃなかったのか・・・・・・こんなのびっくりするに決まってる。

 

そこからは、まるで異能者でリレーするかの如く視点人物がころころと変わっていきます。
群像劇風だけど、その実態は殺したやつを殺したやつに視点を移していくというエゲつなさ。ちょっと引くくらいあっさりとキャラが死んでいきます。

強そうなヤツも、弱そうなヤツも、軽々しく無惨に死んでいく。

一体これはどこへ向かう物語なんだ?このバトルロワイヤルで生き残るのは結局誰になるんだ?とワクワクが止まりませんでした。

 

一方、異能を持っているとはいえ彼らは普通の人間なので、戦いの果てに残った敗者の死体は消えたりしません。
異能バトロワの痕跡を「連続殺人事件」として調べていく刑事たちの動きも同時に描いていくため、物語はますます混沌とした空気を漂わせていくのです。

 

こういうの本当に好きなんですよね。
日常の中に忍び寄る非日常の恐怖。常識の下にある人々が、非常識の世界をのぞきこむ不安感。
そういうのが刑事パートではめちゃくちゃ伝わってきました。この不穏さが最高。

 

そしてバンバンを人を死なせ、どんどん刑事を困惑させていった一連の事件は、「そうくるかぁ!」という結末を迎えることに。
予想できた部分もあったし、予想を超えてきた部分もあって、私はとても楽しめました。
この物語をリレー形式で描いていたことの狙いがとても良かったし(「主人公」という言葉を最初に印象的に使っていたことも)、そこからのラストバトルはすごく気持ちがたかぶりました。

 

まぁ、強いて言うなら、強いて言うならだけど、バトルのスピード感は少し足りなかったかもしれない・・・・・・
あっさり人が死んでいく物語なので、戦闘描写があっさりしているのも「らしい」と言えなくもないのだけど。。。

 

あと、全てが終わったあとの余韻の残し方もお気に入りです。
一応はハピエンだったはずなのに全然ハピエン感がなくて、こんな終わり方とかある???ってなりました。
死体で終わるな、死体で。しかも電子版SSは生前の様子を描いたものだったし、鬼畜仕様が極まっている。
ただ、それは事件の残した爪痕を読者の心にだけは刻み残そうとするかのようにも思えて。
ハピエンっぽく綺麗に終わったけれど、一連の事件が残したものを考えると幸福な結末とはまるで言えないですからね。それをあえて思い出させる感じ。
そういうセンス、私は好きだ・・・・・・

 

やっぱ現代伝奇いいなぁ。もっと増えてほしいな。
本作は綺麗に終わっているので読み切りかもしれませんが、落葉沙夢さんの次回作も楽しみに待ちたいと思います。

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KADOKAWA
著者 落葉沙夢 イラスト 白井鋭利

 

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