天才少女Aと告白するノベルゲーム /三田千恵



天才少女Aと告白するノベルゲーム (ファミ通文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年12月刊。
高校でゲーム制作を行う少年少女。
彼らのもとに届いた1本のノベルゲームが、彼らの過去を暴いていく―― という学園ミステリー。
青春ミステリーとして面白かったです。
「もしもあの日、こういう選択をしていたら」という、誰もが思うifをゲームの形であぶり出す構成がよかったし、そこから再び人間関係を修復していく物語には青春を感じました。
個人的には引っかかる箇所もあったけれど、仲間たちの物語としては良かったと思います。

☆あらすじ☆
バッドエンドの先は優しく、せつない——。
大好きなフリーゲーム制作者Aに会うため、桜山学園ゲーム制作部に入った水谷湊。しかしAと思われる部長の菖蒲は不登校になっていた。彼女の幼馴染みで学園きっての変わり者由井と、菖蒲が学校に来るよう企画をたてるも不発に終わってしまう。大人しくゲーム作りに励む湊のもとに、ひとつのノベルゲームが送られてきた。『バッドエンドを探せ』と題されたゲームには菖蒲と部員のトラブルが綴られてゆく。これは告発? それとも——。

以下、ネタバレありの感想です。

 

母からモラハラ的虐待を受け、田舎に暮らす祖父のもとで育つも、そこでも村八分にあった少年・水谷湊
自身の鬱屈を自主制作ゲームによって救われた湊は、その製作者がいる桜山学園に入学する。
しかし肝心のゲーム部には湊とやりとりをしていた「A」と思われる菖蒲が不在で―― というストーリー。

 

ゲーム部に送られてきた1本のノベルゲーム『バッドエンドを探せ』
かつて湊が救われたゲームによって死んだとされる、一人の少女。
なぜ菖蒲は引きこもったのか。
彼女が作ったと思われるノベルゲームは、残された部員たちに何を伝えようとしているのか。

 

学校という狭い箱庭で生きる少年少女の葛藤や困惑を描きつつ、謎を通して彼らの心を開放していく物語だと思います。
「ゲームで人を殺した」というインパクト抜群な導入もいいですよね。
それが偶然なのか故意なのかという部分も二転三転し、どういうことだ?と続きが気になる良いフックでした。

 

主人公である湊の変化も面白かった。
嫌われるのが怖いから誰にでも良い顔をして、誰とも表面上の人間関係はこなせるけれど、そこに確かな信頼がないから好意は簡単に反転してしまう。
カタストロフィ理論も面白かったし、湊の考え方にいちいち共感しすぎて「私かな??」となってしまいました。ちょっとだいぶ心が痛む。
そういう臆病な少年が、自分が本当に大切にしなければならないものは何か?と考え、自分を変える一歩を踏み出す。
抑圧された自己の解放っていいですよね。スッキリするから。

 

ただ、私としては、もう一歩踏み込んでほしかったなぁと思う部分もあって。
というのも、湊は結局「どうでもいい人に嫌われても構わない」という結論に至るのだけど、なんだか私にはその結果として「背景がよくわからない悪役」が生まれたように見えて。
その考え自体は別に良いんだけど、物語の構成としてバサッと断絶をつくられると消化不良に感じるんですよね。
自殺した子はともかく、先生やクラスメイトの処理は正直微妙・・・・・・本筋じゃないから仕方ないのかもしれないけど、悪いやつをザマァしておしまい、というのは結末としてあまり好みじゃないかな、と思いました。

 

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