君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 /神田夏生



君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君 (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2020年1月刊。
幼馴染×タイムリープ&ループの青春ファンタジー。
これは良かった。
ぶっちゃけ青春とループの組み合わせって少し食傷気味だったのだけど、やっぱり設定としては面白いんだなと再認識しました。
ていうかね、ハッピーエンドを手に入れるために血を吐くような執念をみせる主人公とか、大好きに決まってる!
終わらせる方が楽になれると分かっていても、惨めなほど足掻いてしまう愛とか最高じゃん・・・!

☆あらすじ☆
私が、そうちゃんを幸せにする! だから——私を助けにきて。
「私は、そうちゃんに、幸せになってほしいの。だから、私じゃ駄目」
高校一年の夏。ようやく自覚した恋心を告げた日、最愛の幼馴染はそう答えた。自分は3年後には植物状態になる運命だ。だから俺には自分以外の誰かと幸せになってほしいのだと。
運命を変えるため、タイムリープというチャンスを手に入れた俺。けれど、それは失敗の度に彼女にすべての痛みの記憶が蘇るという、あまりに残酷な試練で。
何度も苦い結末を繰り返す中、それでも諦められない切ない恋の行方は——。
ごめんな、一陽。お前が隣にいてくれるなら、俺は何度だってお前を助けるよ。

以下、ネタバレありの感想です。

 

仲の良い幼馴染・天ヶ瀬一陽の様子がおかしくなり、なぜか自分以外の彼女をつくらせようとする。
そんな一陽の奇行を訝しむなかで、彼女への恋を自覚した主人公・晴丘蒼
蒼が一陽に想いを告げたとき、彼は一陽が隠していた悲劇の未来を知り、それを覆すための過酷な試練に挑むことになるのです。

 

幸せな未来にたどり着くため、繰り返されるトライ&エラー。
前半が仲良し幼なじみの可愛さ満点で描かれるぶん、後半から始まる容赦ないバッドエンド連発に震えました。
高低差がすごすぎない?一陽も言ってたけど、どんなジェットコースターだよ・・・・・・

 

でも幸せな頃の二人が丁寧に描かれているからこそ、あの時間を取り戻し、その先に続く幸せを手に入れたいと願う蒼の気持ちが痛いほど伝わってくるんです。
蒼が好きな一陽の笑顔、日常の象徴だったはずなのに、どうしてこんな遠いものになってしまうのか。

 

一陽が死ぬわけじゃなくて植物状態っていうのも、絶妙すぎる鬼畜設定ですよね。
「残された蒼の苦悩」を隣ではっきり感じ続ける一陽の恐怖と絶望が底なし沼のよう。
蒼が他の子を好きになるように仕向ける、という一陽にとっては酷な選択も、たしかにこんな未来よりはマシかもね、と思ってしまう。
自分を好きでい続けてくれることの方が辛いという心境の説得力が凄まじくて泣きそうでした。

 

想い合っているのに、互いに願う方向がすれ違ってしまった蒼と一陽。
仲良し幼なじみだから、試練の最中(つまり一陽が植物状態になっている間)もお互いに何を考えているのか通じ合っているんだけど、それがまた余計に辛いんです。
おまえ、本当はもう、死にたいだろ。って蒼が察した瞬間とかゾワワワワワワッッと鳥肌がたちました。
やめてー!やめて!!辛いのは分かるけど諦めないで!!!って絶叫した。

 

でも私が祈るまでもなく、蒼は絶対に諦めなかった。
助けを求められたわけじゃない。痛くて辛い思いをさせているのも分かっている。
他の人に目を向ければ、一陽を諦めてしまえば、ふたりとも心だけは救われるのかもしれない。
そう何度も自問するんです。決して盲目的に突進を繰り返したわけじゃなくて、どこか冷静に「何をハッピーエンドと呼ぶのか」を考えている場面が何度も出てくる。
それでも何度考えても結論は同じで、だからこそ蒼の選択は重く深いものになっていくんです。それが良い。本当に良かった。

 

泣き喚こうが、血反吐を吐こうが、一陽を諦める未来だけは選ぶことができない。
その愛情のエゴイズムに心が高揚したし、彼の執念に報いるように一陽が「助けて」と言った瞬間は喝采をあげるしかなかった。最高です。きみたちは最高のカップルです!!泣

 

そこからは一気に状況のネタバラシに入っていくんだけど、この真相もまた良かった。

この試練が始まる時、神的な超常存在?が蒼にルール説明をするくだりで正直少し微妙だなって思ってたんですよ。
なんかこう、あまりにも設定がゲーム的で、作品の雰囲気を壊している気がして。

でもそういう引っ掛かりが最後にきちんと回収され、消化されたラストでした。大満足。
このオチ以外だったらここまで楽しめなかったかも。

 

とても良い青春ループものでした。神田さんの次回作も楽しみです。

 

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