蟲愛づる姫君の婚姻 /宮野美嘉



蟲愛づる姫君の婚姻 (小学館文庫キャラブン!)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年6月刊。
ルルル文庫時代の宮野さんじゃないですか!ってくらい「宮野美嘉の少女小説」感が顕著にでている中華ファンタジー。
つまり毒気に満ちた感情で繋がる男女の物語。

蠱毒をあやつる大国の姫君が、辺境の新興国にお嫁入り。
そこで彼女を待つのは、嘘と毒に囲まれる刺激的な日々だった―― というお話です。

物理的にも精神的にも毒だらけ。
誰も彼もが裏の顔をもち、心に闇を抱えていて、そこが狂おしいほど魅力的。

とても面白かったです。
恋情など生ぬるいと言わんばかりの歪んだ執着を書かせたら、宮野さんは本当にぴかいちですね!

☆あらすじ☆
変わり者の姫の結婚相手は隣国の国王で!?
この世には〈蠱毒(こどく)〉というものがある。壺に百の毒蟲(どくむし)を入れて互いに殺し合わせ、最後に生き残った一匹が猛毒を持つ〈蠱〉となるのだ。それを古来〈蠱術〉といい、操る術者を〈蠱師〉という。
大陸でもっとも強大な斎帝国の第十七皇女・李玲琳は、気味の悪い蟲(むし)と、その蟲から生成される蠱毒をこよなく愛し、周囲からひそかに「毒の姫」とあだ名される風変わりな姫だ。ある日、最愛の姉である斎国の女帝・彩蘭の指示で魁国の王・楊鍠牙のもとへ嫁ぐ。ところが、結婚生活は前途多難。
まず、せっかく大国から迎えた若く美しい花嫁が、華やかな衣裳やきらめく宝石よりも蟲が大好きで蠱毒をつくりまくる蠱師だと判明してしまい、魁国の者たちはドン引き。鍠牙の命が何者かに狙われている――という噂が立つと、毒殺犯の容疑をかけられた玲琳の立場はますます危ういものになって……。
運命は自分で切り開く。最強毒姫の冒険!

以下、ネタバレありの感想です。

 

斎帝国の末の姫・玲琳は、最愛の姉である女帝・彩蘭の命により、新興国である魁の王・楊鍠牙と政略結婚をすること。
蠱毒を操る蠱師であり、蟲を溺愛し、姉以外の人間にまるで興味をもたない玲琳。
そんな玲琳を鍠牙は笑顔で迎え入れるが、玲琳は即座に彼の嘘を看破。
険悪さでヒリヒリするような距離感から、夫婦生活をスタートさせることになるのです。

 

毒をテーマとする作品だけあって、あれもこれも毒だらけ。
様々な蠱毒が登場し、その中毒事件が多発するのだけど、本作の描く「毒」はそれだけじゃなくて。
毒を持つ蟲たちを愛する玲琳。毒のある本音を心に秘める鍠牙。
玲琳に付き従う葉歌も、玲琳が慕う彩蘭も、みんなみんな毒っけの強い人ばかりなのです。

 

歪んだ執着。ねじまがった性根。全てを闇に沈めるような病んだ心。
それらを恍惚と愛する、奇妙な性癖をもったヒロイン。

いやぁ、楽しいね。楽しいですよ。
自覚的に、あるいは無自覚に、みんな仲良く変人揃い。
主要登場人物にマトモな人っていましたっけ?だがそれが良い。

 

どこか壊れた人たちばかりなのに、嫌悪を抱くどころか魅力を感じさせるのも流石。
特に、蠱師でありながら薬師でもある玲琳の、頑丈なまでに筋が通った生き方は格好良かったです。

「認めるわ。お前の言うことは正しい。私とお前は同じよ。私もお前も、この世は自分のために存在すると思っている。世界の中心はこの私。何が大事で、何が要らないか・・・・・・この世に存在する全てのものの、価値を定めるのもこの私。だから私もお前も、その結果与えられる全ての事象に、自分で責めを負うのよ」

気ままに、マイペースに生きている玲琳。
けれど、このセリフが象徴するように。彼女は自分の決定に自分で責任を負う少女なんです。
屋根の上で半べそかいていたシーンが印象的でした。自分勝手だけど無責任じゃないからこそ、その生き様に惹かれてしまうのです。

 

一方、そんな玲琳の夫となった鍠牙といえば、これまたクセの強すぎるヒーロー。
二人の間に愛情はまだないけれど、そんなものでは到底足りないと言わんばかりの強烈な執着心にクラクラします。
玲琳も、鍠牙も、利己的な心から相手を求めている。
それだけでも楽しいけれど、きっとここからもっと楽しいことが待っているはず。愉しい、ことが。

 

ワクワクしてきました。2巻を続けて読みます。

 

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