おとぎ草子、よろずお届け処 従となるは美しき犬神 /仲村つばき



おとぎ草子、よろずお届け処 従となるは美しき犬神 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年12月刊。
激重感情をぶつけてくる病的な男子が好きな人、読もう?

父の失踪によりあやかし専門運送会社を引き継ぐことになった女子大生が、父を探しつつ、アヤカシたちに届け物をしていくお仕事ファンタジー。
様々なおとぎ話がモチーフとなっていて、お仕事を通して自分を見つめ直す主人公の変化と成長を描くお話です。

そしてこれ主従モノなんですが、従者となる犬神くんがネガティブ方向に面倒くさい人(ぶっちゃけメンヘラ)だったので、そういうのお好きな人にはぴったりだと思います。私はお好きなので大変楽しかったです。

思わず変な勧め方してしまったけれど、あやかし系お仕事ものとしても面白かったよ!シリーズ化してほしいなぁ。

☆あらすじ☆
「今日から僕は、あなたの従者です」犬神が押しかけ従者になりまして。
父が失踪し、母は倒れ、どん底の年末を迎えた桃華。さらに父の経営する「よろずお届け処」は、あやかし相手の運送会社だった。残務処理を手伝う桃華はあやかしに襲われて、成り行きで犬神と契約することに!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

幼い頃から疎遠な父親が、仕事中に失踪した。
その上、母までも病気で倒れてしまい、暗い気分を背負い込む女子大生・工藤桃華

 

失踪したことは心配だが、自分を顧みない父への複雑な感情を持て余していた桃華。
しかし、父の会社である「よろずお届け処」が人間の世界とアヤカシの世界をつなぐアヤカシ専門の運送会社だという事実を知ったことで、桃華は父の仕事を引き継ぎながら自分の気持ちと向き合うことになるのです。

 

様々なおとぎ話をモチーフとした、あやかし系お仕事もの。
なんといっても楽しいのは、舞台となる運送会社が、アヤカシに恨まれ命を狙われる桃太郎の末裔が、アヤカシたちとの関係修復を目指したものであるということ。
桃太郎伝説の解釈と使い方が良いんですよね。
桃太郎は英雄であり、略奪者であった。それに加えて、子孫がその尻拭いに奔走しているっていう発想が楽しい。

 

そんな仕事をしていた父は、もしかしたらアヤカシに攫われたのではないか?

そう疑った桃華は、なりゆきで従者の契約を結んだ青年・犬井藤麻と共に、会社に残った仕事を片付けながら父の情報を集めていくのです。

 

アヤカシ専門運送業で扱う品は、「女郎蜘蛛の婚礼衣装」「氷花のかんざし」「のっぺらぼうの化粧道具」など実に様々。
それぞれのエピソードでは、妖怪たちが登場する怪異譚のワンシーンが思い浮かんだり、現代社会に紛れ込んだ妖怪たちの暮らしぶりが楽しかったりして、とても面白かったです。

特に雪女の話は、結末の儚さが好き。
氷が溶けることで何が起こるのか。それを「幸せ」だと言う雪女の姿に澄んだ冷たさを感じました。クールな対応なのに情を感じるところが美しいんだ・・・・・・
この話、桃華のフォローが対照的に温かいことも、話のオチとして秀逸なんですよね。

あと、のっぺらぼうの話はメイク系ユーチューバーになってる妖怪がいること自体に笑ってしまったw
私は人間なのにユーチューバー全然わかんない・・・・・・のっぺらぼうより時代に取り残されてる・・・!

 

様々なアヤカシと出会い、お届け品に込める彼らの想いに触れるなかで、自分の中にある父への感情を整理していく桃華。
彼女の成長がめざましい一方で、徐々にダークサイドに落ちていくのが従者の藤麻なのです。

 

この藤麻くん、メンヘラですよね!?
幼少期から孤独と劣等感に苛まれていて、そこを悪神に入り込まれて更にこじらせ、誰かの特別になりたいと望んできた藤麻。
藤麻は桃華に対して過剰な献身と執着を向けるし、他の従者への嫉妬にも苦しむけれど、でもその対象は別に桃華じゃなくてもいいんだろうな・・・というのは伝わってくるものがありました。なので終盤の桃華のセリフには深く同意した。
こういうのは私的にはヤンデレというよりメンヘラかなって思う。いや、ヤンデレでもあるのか。

誰でもいいから誰かの特別になることを、病的に執着する人。
その「誰でもいい」が変わる瞬間こそ美味しいんですよ・・・・・・終盤の展開、最高でした。

 

にわか主従が本当の主従になる物語としても大満足です。
桃華、内気な性格の子だけど、主としての手綱さばきがどんどん上手くなっていくんですよねー。
最後とか、嫉妬深い犬をきちんと躾けて手なづけた感じが、ね。「試食」という言葉に漂わせる特別感。あれが無自覚だったなら、末恐ろしい女子ですよ・・・!

 

独占欲の権化で情緒不安定な藤麻くんには酷な話ですが、「桃太郎」の従者が彼ひとりな訳はなく。
ご先祖様よろしく、桃華は3人の従者を得ることになります。

その三人というのが、世話焼きでメンヘラの犬、無愛想な兄貴分の雉、魔性のショタ(29)である猿―― キャラが濃い!!笑

3人それぞれ魅力的なのだけど、私は面倒くさいキャラが大好きなので、もちろん藤麻くん推しです。
というか、たぶんこれは逆ハーではなく、桃華ちゃん的にも藤麻くん√一本のお話なんだと思います。
だって他の人を選んだら大変なことになるよ。藤麻くんの情緒が。
「従者にした以上は責任をもつのよ」って言われたんだから、桃華はちゃんと責任を取らないと(捨て犬ひろった話だった?)(捨て犬ひろった話でしたね・・・)

 

藤麻くんの感想を語りはじめたら筆が進む進む。
嫉妬深くて主と奈落に落ちたい願望が強い犬神のタチの悪さ、ほんと好き・・・・・・

自分も主がほしい。自分を一番大切にしてくれる、かけがえのない存在が。そんな人ができたら、この身を犠牲にしてでも尽くす。尽くして尽くして・・・・・・。
「――焼き尽くしてしまうかもしれないね」

このくだり、めちゃめちゃ好き〜〜〜〜〜〜!

 

楽しかったです!
お仕事ものとして面白かったのに、なんかメンヘラ青年の感想ばかり書いてしまった気がする??
雉と猿も良かったよ!ということでシリーズ化に期待します。

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