吸血鬼に天国はない2 /周藤蓮



吸血鬼に天国はない(2) (電撃文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★★
2019年12月刊。
怪物に恋をした男の運命は、滑稽に空回り、必死に走って、一体どこへ向かうのか。
人と、人でないもの。それらが共に生きるために必要なことを確認する第2巻でした。
人外恋愛は種族間の断絶が深ければ深いほど盛り上がる私がいます。
人外とそう簡単に分かりあえると思う?って無邪気に刺してくる話だと更に良い。
その点、今回は最っっっ高でした・・・!
シーモアの苦悩も、ルーミーの絶望も、二人が選んだ結末も、全てが好きです。本当によかった。

☆あらすじ☆
生き延びた先に待つのは、恋と地獄。そして姿を現す『吸血鬼狩り』。
「「ハッピーニューイヤー」」
降りしきる雪とともに訪れた新年。吸血鬼ルーミーを因縁と陰謀の中から救い出し、日常へと回帰したシーモア。騒々しい運び屋仕事の中で、二人はぎこちなくも幸福な日々を送っていた。
だがそんな日常も長くは続かない。
マフィアに追われ、逃げ込んできた双子のバーズアイ姉妹。人を傷つけないと誓ったことによって、徐々に迫り来るルーミーの飢えの限界。
緩やかに、しかし確かに平穏の終わりが近づく中で、シーモアたちの前に姿を表す最悪の敵『吸血鬼狩り』。
選び取った幸福の中で、シーモアは更なる決断を求められることになる。
人と人ならざるものの恋物語、第二弾。

以下、ネタバレありの感想です。

 

妥協で生きていける世の中は、何一つとして妥協がない世の中よりはきっと救われている。

結局、最初に示されたこの一文が、今回のお話の全てだったわけですね。

 

吸血鬼であるルーミーの手を取り、彼女との穏やかな日々を送るシーモア。
でも「吸血鬼」が「人間」と何の代償もなく共に暮らしていけるものなの?という、彼らが目をそらしてきた欺瞞を鋭く暴き立てる第2巻。

 

もうね、世の中には吸血鬼ラブロマンスなんて山のようにあるわけですよ。
吸血行為と称してイチャイチャする人間・吸血鬼カップルもたくさん見てきました(私そういうの好きだしね!)

 

でもシーモアとルーミーはそうならなかった。

 

吸血鬼ルーミーにとって吸血とは人の生命を吸い取る行為。
そこに「ちょっとだけ血をもらう」なんて生ぬるい段階は存在しないのです。

シーモアにあるのは、全く与えないか、全てを与えるのかの2択のみで。
ルーミーにあるのは、自分を曲げて醜く生きるか、肯定した自分を抱えて美しく死ぬかの2択だけ。

人と吸血鬼が共に生きるのはかくも難しい。その現実を残酷に突きつけてくるのです。
正直、あまりにも無情すぎて、、、ゾクゾクと昂ぶり、「その先」を期待する心が止まらなくなりました。

 

だって見たいじゃん!?
あれだけ甘く優しい選択をして今の暮らしを手に入れた二人が、「ルーミーが人を殺し続けない限り、シーモアと共に生きることはできない」という醜悪な現実を前に、今度はどんな選択をするのか見たいじゃん!?
興奮するなというのが無理あるよ!

 

で、突然飛び込んできた凸凹姉妹やイカれた吸血鬼狩りに遭遇して日常を引っ掻き回される一方で、シーモアは悩みに悩むわけです。
表面上はハードボイルドな仕事人を決め込んでいるけど、中身はココア好きのロマンチスト。
そんなシーモアが何を選ぶのかを、私はハラハラニヤニヤしながら見守るわけです。
ココアみたいに温かくて甘くて優しいシーモア。彼は、再び直面したルーミーの怪物性にどう向き合うんだろうって。

 

シーモアが運命を選択するまでの道のりは、本当に滑稽で、みっともなくて、笑っちゃうくらい不器用でした。

「僕は君を縛った。でもそれは間違いだった。だからもう許すから、その決断を誰にも責めさせないから、君は自由になって、人を――」

このセリフ、ルーミーの「思い上がらないでください」って言葉が端的に真理を貫いているけれど、でもさぁ、このどうしようもなさが最高じゃない??
怪物に恋をし、怪物を肯定したシーモアは、その全ての罪と責任をひとりで背負おうとしたんですよ。勝手にね。ヒロイックにね。
それはまるで恋に殉じるみたいだ。さすがロマンチスト。そういうところが狂おしいほど好きですよ。
目の前にいる相手のことを、何も見えていない愚かしさすら愛おしい。

 

でもそんなシーモアが失敗を積み重ねて、土壇場でひねり出した「言い訳」は更に良かったんです。
愛を伝えるのでもなく、愛を乞うのでもなく、ルーミーの恋を決めつける。
すごいですよこれ。どんな顔して言えるんだ、こんなセリフ。

怪物の考え方なんてまるで理解できずに失敗したくせに、これからのルーミーの心を決めつけて宣言する。
甘っちょろくて、身勝手で、ロマンチックな考え方ですよね。
シーモアらしさが振り切れていて、正直とても興奮しました

 

信念を曲げてでも生きる理由に、恋を設定した。そう二人で言い訳するわけでしょう?
純粋なまま生きることはできないから、言い訳しながら醜悪な生を分かち合うんでしょう?
それはなんだか、恋人というより共犯者みたいですね。

 

まぁ、人でないルーミーが、人のように「恋」できるのかは分からないんですけど。
彼女の「人間が好き」という言葉は「シーモアが好き」とイコールなんだろうけど、それがすぐに恋愛的な「好き」と言えるのかは微妙なところ。
最後の流れを踏まえても、ルーミーが本当に恋愛感情を理解できているのか、まだ私は信じきれていません。「言い訳」を受け入れただけだからね。(あと周藤作品を読むと疑り深くなるのは仕方なくない?)
でも言い訳を重ねていくうちに、本物が生まれたりすることもあるのでしょう。それもまたロマンチック。

 

共依存のバーズアイ姉妹のこととか、虚構を追い求めて技を磨いてきた男の話とか、色々なことがあったのに感想はシーモアとルーミーの話で埋まってしまいました。
でも最後の会社立ち上げのくだりは感動したし、バーズアイ姉妹の活躍は今後も期待できそう。楽しみです。

 

そして最後の一文。
人でない怪物と、人の怪物。友人のような不思議な関係を築いた二人の再会はどんな形になるのでしょうか。恐ろしいなぁ・・・!

 

余談。
周藤蓮さんの描く男と女の関係、とても好きです。
男の甘くて優しいエゴに女は付き合うんだけど、でもそれがどんな虚構の上にあるのかを突きつけてくるのも女。
女がみせる残酷な現実と向き合ったとき、男は女のために無様に一途に走るんです。何かを変えるために。
男の純情と女の二面性の描き方がすごくツボ。たぶんこれからも作家買いするだろうなぁ。この作風、めちゃめちゃ好きだ。

 

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