ルクトニア領繚乱記 猫かぶり殿下は護衛の少女を溺愛中 /さくら青嵐



ルクトニア領繚乱記 猫かぶり殿下は護衛の少女を溺愛中 (角川ビーンズ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年12月刊。
第17回角川ビーンズ小説大賞奨励賞受賞作。
女装した領主の息子と男装した少女護衛が、領地の貧民街に繰り出して人々の生活を知る中で、とある陰謀に巻き込まれていく物語。
心も身体も未熟な主従の成長物語であり、また、幼馴染の切ないすれ違いを描いたラブロマンスです。

幼い頃から当たり前にあった場所が、「当たり前」ではなくなることへの焦燥と喪失感。
成長するなかで突きつけられる問題に揺れるヒロインの心がとても丁寧に描かれていたと思います。
幼馴染の恋物語としてはかなり好きなタイプのお話でした。

ただ、成長物語としては発展途上という感じだし、ここから更に面白くなるはず。
特に女装ヒーローの方は、あと一歩頑張ってほしくなったので、次巻以降の彼の成長には期待しています。

☆あらすじ☆
「おれの側から離れるなんて許さない」すべてをかけて、命運を掴み取る!
オリビアが護衛するアルフレッドは、表は真面目な領主の息子、裏では女装で屋敷を抜け出す猫かぶり!
そんな彼に連れられ、男装したオリビアも『夜の街(ナイト)』へ。
そこでノアと名乗る怪しい奇術師に出会い、二人で一座を調べることに。
しかし襲撃を受けたオリビアは、護衛対象(アルフレッド)に守られる形で己の力不足を突きつけられて……!?
「おれの側から離れるなんて赦さない」
女装殿下の独占欲が大暴走!? 第17回小説大賞奨励賞・受賞作!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

王位継承権を放棄してルクトニア領に封じられた前王ユリウスの息子・アルフレッドと、その護衛である少女オリビア
アルフレッドは「金の髪のアリー」として、オリビアは「漆黒のオリバー」として。
それぞれ変装して領内の貧民街「夜の街」へと赴く二人は、そこで貧しい人々のために何ができるのか必死に考え続ける日々を送っていた。

そんな折、二人は領地にやってきた「魔術師と猟犬」という怪しげな一座の存在を知ることになります。
自分たちだけで一座の秘密を探ろうとする二人。しかしそれは、彼らの関係を大きく変化させることになるのです。

 

幼馴染主従の恋と成長物語であり、女装ヒーローと男装ヒロインの冒険活劇でもある本作。
主人公オリビアの葛藤と挫折、そして再起までの物語を軸として1冊で綺麗にまとめてある作品だと思います。
特にオリビアの成長物語としてはかなり完成度が高いのではないかと。

 

10代後半に入り、それまで気にならなかった男女の性差を実感するようになったオリビア。
それは「護衛」としてアルフレッドの隣にいることが当たり前だったオリビアには悩ましい問題で、アルフレッドを守れない自分の存在意義について、彼女は自問自答を繰り返していくのです。

 

オリビアの中で、「護衛としての自分」と「少女としての自分」が何度も揺れ動くんですよね。
少女として心が揺れる度に、足元でがちゃりと鳴る拍車の音を聞く。そんな描写が印象に残っています。
拍車の音って実際に聞いたことがないのでわからないんだけど、きっと「騎士」としてのオリビアには馴染み深いものなのでしょう。

アルフレッドに対して「幼馴染の少女」として恋い焦がれながら、同時に「騎士としての自分」を意識してしまう。
しかし「騎士としての自分」はアルフレッドを守れない。その力がない。

それを思い知る度に、オリビアは彼の隣にいる理由を見失っていくのです。
オリビアの葛藤と悲しみはとても丁寧に描かれていき、彼女の切ない思いがどのように昇華されるのか、期待半分不安半分な気持ちで読み進めていました。

 

幼馴染という関係ゆえに起こる問題も良かった。
意識するまでもなくずっと好きだけれど、意識していないからこそ、その気持ちが隣にいる理由にならない。
「好きだから隣にいたい」というシンプルな答えがオリビアにはひどく遠く、隣にいてはいけない理由ばかり目についてしまうんですよ。
理由なんていらなかったからこそ、理由がないことに不安を感じる。
それって、幼い頃から隣にいることが当たり前だった幼馴染主従だからこその心境なんだろうなって思うんです。

 

そんなオリビアの苦しみは、アルフレッドのまっすぐな想いと大人たちの優しさによって、ゆっくりと解きほぐされていきます。
特に「出立」のシーンはカタルシスばっちりでした。
個人的には「少年主人を守る少女護衛」というカップリングが大好きなので、ただの幼馴染ではなく、ちゃんと「護衛」として戻ってくれたことにホッとしました。
細身で可憐な女の子が、身軽さとテクニックで敵を薙ぎ倒していく。
一皮むけたオリビアの活躍ぶりは爽快で、終盤の戦闘シーンは大満足でした。

 

さて、成長をみせたオリビアに対して、アルフレッドはまだまだ未熟な感じなんですよね。
「魔術師と猟犬」のことを父親たちに相談しなかったこととか、終盤で単身乗り込んだこととか、この人は自分の立場をわかってるんだろうか?と疑問に思うことがしばしばあり・・・・・・
オリビアの葛藤も、一体どこまでちゃんと理解しているのやら。
「あなたを守れない」って落ち込む護衛に「自分の身は自分で守れる」って言ったら駄目でしょ!っていうのは、外野だから思うことなんだろうか。
まぁ報告連絡相談がなってない点については、ラストで直属の保護者がついたので今後は気を揉まれることが少なくなりそうですが。たぶん。大丈夫だよね?

 

とは言え、未熟な主従はこれからも少しずつ様々なことを学んで成長していくのでしょう。
その様子がぜひ読みたいです。
「魔術師と猟犬」の件についても、まだなにか隠されてる雰囲気でしたしね。
王都の闇ってなんだろう?そんな大袈裟な表現で嫉妬まみれのバカ王子だけを指したりしないよね?他に何があるのか・・・・・・

 

というわけでシリーズ化に期待します。

 

ところでユリウス・アレクシア夫妻の話はどこで読めます?

勘違いしていたのですが、受賞作がユリウス・アレクシア夫妻の話なんですね。こちらは子供世代の話だそうで。知らんかった!カクヨム読みます!!

 

ルクトニア領繚乱記 猫かぶり殿下は護衛の少女を溺愛中 (角川ビーンズ文庫)

ルクトニア領繚乱記 猫かぶり殿下は護衛の少女を溺愛中 (角川ビーンズ文庫)

さくら 青嵐
726円(12/05 20:33時点)
発売日: 2019/12/01
Amazonの情報を掲載しています

 

スポンサーリンク
 
0

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。