聖女の、妹 〜尽くし系王子様と私のへんてこライフ〜 /六つ花えいこ



聖女の、妹 ~尽くし系王子様と私のへんてこライフ~ (アリアンローズ)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2017年3月刊。
『どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。』が面白かったとブログに書いたら、こちらもどうぞとオススメされたので読んでみました。
こちらも面白かったです!

姉を失った心の傷を抱える女子大生と、彼女の部屋に飛び込んできた異世界の王子様。
二人の奇妙な同棲生活を描く、1DKの異世界交流で魔王討伐な日常物語です。

逆異世界召喚ラブコメとしても楽しませてくれるくせに、人の心の弱さやズルさの描き方が絶妙に上手くて何度も心を刺されました。
減らず口を叩きまくる主人公も、一見従順にみえる年下王子様も、どちらも良キャラすぎる。
話が進むにつれてどんどん切なくなるんだけど、同じくらいニヤニヤしちゃった!楽しかったです。

☆あらすじ☆
ある日ごくフツーの大学生・翠の前に、奇抜な服装の美少年が現れた!
アルフォンスと名乗った彼は、なんと異世界の王子様。魔王を倒す力を求め、聖女を探しにやってきたという。
「貴女様が聖女様であらせられますか?」「はぁ? ただの女子大生デスケド」
行く宛のないアルフォンスに押し切られ、料理・洗濯・掃除をこなすことを条件に、期間限定の同居を許した翠。彼が元の世界に戻るためには『魔王の倒し方』を手に入れるしかない。そんなものあるはずが……と頭を抱えた矢先、発売されたばかりのゲームの主人公が「アルフォンス」だと知って――!?
ずぼら女子と尽くし系王子様のへんてこ同居ライフ・コメディが登場!

以下、ネタバレありの感想です。

 

この作品を読む前に、小説家になろうの方で『聖女の、その後』(https://ncode.syosetu.com/n5475bq/)を読みました。
こちらが本作の前日譚。突然の異世界召喚により「聖女」に祀り上げられた、悲運な女性の物語です。

 

で、本作はこの「聖女」の妹・早乙女翠を主人公とした、現代日本が舞台の物語。
序盤から飛び込んできた「白骨遺体」というワードにギョッとしたんですが、それはさておき。

 

「異世界に召喚された主人公」の、残された家族の物語はとても辛いものでした。
突然消えた家族を探し求め、今までの生活が激変し、どれだけの年月が経とうとも、たとえ死体が見つかろうとも、その喪失の傷から上手く立ち直れない遺族たち。
姉を心から愛していた翠もまた、姉を失った心の傷を膿ませたまま、日々を過ごしていてーー

 

そんな翠が一人暮らしをする部屋に、「あなたの姉に救ってもらった異世界からきました」と飛び込んできたのが年下の王子・アルフォンスなのです。
そらまぁキレるよ。点火された翠の激昂は恐ろしいほどだったけれど、彼女の叫びは痛々しいほどの悲しみに包まれているんです。
「加害者」がいないせいで、誰にもぶつけることができずにいた憎悪が爆発した感じ。
あのシーンは掴みとして最高でした。あらすじの雰囲気を信じて「へんてこラブコメ」だと思って読んだら痛い目にあいそうっていうのが、あのシーンでバシッッと伝わってきたので。

 

この物語って、たしかに異世界人と女子大生の同居ラブコメではあるのだけど、そこで描かれる「喪失と再生」は決して笑い話ではないんですよね。

失ったものを取り戻すことはできないし、今を生きる人間は前に進まなければいけない。
でもそんなのって簡単な話じゃないよね。苦しみが深ければ深いほど、きっかけを見つけることは難しくなる。まずそんな元気がでないから。

しかし、いえ、だからこそ。
唐突に始まったアルフォンスとの賑やかな生活は、喪失感を抱え続ける翠が再生するためのチャンスになるわけです。

 

翠とアルフォンスのへんてこ同居ライフは、家事を教えたり一緒にゲームしたりと楽しそうな時もあれば、心の弱い部分をえぐり出して傷つけ合うような緊張感を見せる時もあって、なかなかに波乱万丈でした。

翠は優しいけれど、かなり口が悪い人間でもあるので、正直よくアルフォンスがキレないよなって思ったり。
普段の皮肉も激昂したときの剥き出しの感情も、背景にある心の傷がちらちら見えるから余計に重いんだよなぁ。。。

そして、自分でもどうしようもないソレを、翠はアルフォンスにだけぶつけてしまうんです。
なんて弱くてずるい・・・と思いつつ、そういう人間らしさが共感を呼び、どうにも目を離すことができない主人公でした。

甘えん坊め!とかも思うんだけど、よく考えれば、翠は誰にも素で甘えられない環境にあったんですよね。
姉が失踪して以来、家族はみんな大変で、兄への甘えは妹の義務で、後ろめたい恋すら抱えていて。
ようやく現れた「ペット」に心の弱さを全部さらけだすのは、まぁ仕方ないのかなって。ペットだもんね。「ペット」扱い自体が甘えだけどね(そういう役目をかぶせることで、アルフォンスに接するための様々な言い訳にしてるんだよなぁ)

 

で、そういう彼女の弱さや甘えを、アルフォンスはひとつひとつ受け止めるんです。
そんなアルフォンスの心にあるのは、打算だったり、負い目だったり、優しさだったり、愛だったり・・・・・・
本編でもアルフォンスの少年らしさとスパダリが共存した存在感は抜群だったのだけど、本編終了後のアルフォンス視点は更に最高でした。
色々抱えてたのねって。あと、翠のことこっそり魔女みたいだとか思ってたのねって(笑)

 

ままならない心を試すように投げ込む翠と、心の奥底を隠しながら柔らかく受け止めるアルフォンス。
不器用な女と「ペット」に甘んじる男は、歪な関係のなかで、少しずつ、本当に少しずつ心を通わせていきます。
季節が流れ、日々が移ろうなかで、ゆっくりと、時に劇的に変化する二人の関係。
それがとても丁寧に描かれていて、じっくり味わうように読みました。すごく面白かったです。

それにしてもゲームに悪戦苦闘する様は姉弟みたいだったのに、最後はまぁなんともびっくり!
黒髪イケメン大好物なのでありがとうございます。
そして冒頭を読み直して更にびっくり!こういう仕掛けは大好きですよ!

 

とても楽しかったです。他の作品も読んでみようっと!

 

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「聖女の、妹 〜尽くし系王子様と私のへんてこライフ〜 /六つ花えいこ」への2件のフィードバック

  1. きゃああー!読んでくださったんですね!最後はまぁなんともびっくりですよね! その手があったかと思うと同時にアルフォンスの積年過ぎる想いに翠はもう逃げられないなぁとしみじみ……。
    あとはこのノリで「壺」に行っていただければ!きっと!楽しんでいただけるはず!ヒロイン壺だけど!

    1. ゆりさん、コメントありがとうございます。

      読みました読みました読みましたー!!
      最後まで読んで、ふらーっと冒頭を読み直して「あっ!これか!!!!!」って驚愕しました!
      アルフォンス、あんな一方的な約束でじっと待ち続けていたなんて、一途というか、執念というか、キミ最高だね!って感じでしたよね(笑)

      壺もいってみます!ヒロイン壺!?どゆこと!?楽しみです!!

      とりあえずは「妹」をご紹介いただき、本当にありがとうございました(^o^)

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