地獄に祈れ。天に堕ちろ。 /九岡望



地獄に祈れ。天に堕ちろ。 (電撃文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年11月刊。
面白かったー!
ガシッと心を掴んでスカッとさせるクライム・アクション。
亡者の街と化した「東凶」を舞台に繰り広げられる、ハードボイルドなゾンビものです。
血と硝煙、武装した神父、空に吹っ飛ぶ車、マッドサイエンティストにヤク中美少女、月はふたつで白くて赤く、天使と悪魔で天国か地獄か閻魔のみぞ知る。
イカれた世界をハイになって暴走すれば、突然プツンと心が折れて暗い過去を巡ったり。
傷ついて傷ついて、そしてまた立ち上がって走り出す。そんな感じの緩急激しい疾走感がありました。
コミュニケーションは皮肉と罵声。それでも頼りになる正反対で似た者同士な野郎2人組がとても格好良かったです。

☆あらすじ☆
冥界の荒事屋とイカれた聖職者の、デス&クライムアクション!
イカしたDJが今回のお話を大紹介ダ!
ミソギ、死者。嫌いなものは聖職者。犯罪亡者をぶっ飛ばし、地獄の閻魔に引き渡す荒事屋にして……シスコン(妹)!
アッシュ、聖職者。嫌いなものは死者。聖なる銃をぶっ放し、死者を殺しまくる某機関の最終兵器にして……シスコン(姉)!!
こんなチョイとオカしな二人が、何の因果か亡者の街『東凶』で、「魂」に効くヤバーいおくすりを大捜索! 聖職者嫌いの死者と死者嫌いの神父が!? ハッ、まったく上手くいく気がしてこないね!
しっかーし! 困ったことにこいつら実力は折り紙付き。おいおい頼むから『東凶』を壊滅させちまったりすんなよ!?
電撃小説大賞《大賞》受賞作家・九岡望が贈る、ダークヒーロー・アクション!

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、霊和十一年、日本の幽離都市・「東凶屠」
死者が地上をうろつくようになって10年になる東凶では、亡者にキく麻薬「As」が流行していた。

 

そして、「上」の取り決めにより協力してAsの秘密を追うことになったのが、物語の中心人物たる2人の男。

ひとりは、妹を守るために地獄から舞い戻って閻魔の代わりに亡者たちを取り立てる「死神」ミソギ
もうひとりは、姉の教えた「正しさ」のために亡者を殺しまくる武装神父「人喰いカラス」アッシュ

・・・・・・いや、シスコン(妹)×シスコン(姉)のバディって!と笑うのだけど、このシスコン野郎どもの喧嘩腰なバディアクションがめちゃくちゃ楽しい作品でした。

 

ミソギとアッシュって、何もかもが正反対の二人なんですよね。そして似た者同士でもある。

妹を生かすために閻魔の使い走りとなり、自らも生き返ろうと懸命に働くミソギ。
死んだ姉の影を求めて神の兵器となり、生きる意味を見失いながら動いているアッシュ。

生きたい死者と死んでる生者なんだよなぁ。
他にも大から小まで真逆なところだらけなんだけど、唯一「家族を愛している」という揺るぎない共通点ゆえに似た者同士にも見える。
馴れ合わないのに、切り離せない距離感。それがまた絶妙に格好いい空気を生み出していたように感じました。ハードボイルドだ・・・・・・

 

とはいえ、違うところだらけの二人が、そうそう仲良くなれるわけもなく。
喧嘩腰で軽口を応酬し、互いに互いを嫌い抜き、それでもまぁ実力だけは認めてやらなくもねーよ、みたいな可愛くない態度が可愛すぎるコンビでした。

 

いやぁ〜〜〜本当に良かった。私、険悪バディって大好きなんですよね。仲良しコンビも好きだけど。
険悪バディって、普段は足並み揃わないくせに大ピンチに限って息ピッタリな奇跡のコンビプレーを決めてくれるのがお約束じゃないですか。そこに痺れちゃうんだ。ギャップがね。良いよね。
本作で言うならラストの武器交換が最の高。
ああいうの大好き好き好き。アッシュがあそこで初めてミソギの名前を呼ぶのもポイント高い。めっちゃテンションあがりました。

 

そんなアッシュとミソギをハラハラとみつめるヒロイン・フィリスも良かった。
「姉」と嘘をついてアッシュを監視するという、アッシュのことを知れば知るほど危険しかない任務に放り込まれた新米シスター。
彼女の柔らかな正義感と、イカれた街では哀れなほど真っ当な感性は結構な癒やしでした。
「死」にあふれかえった街で、生きていることを一番体現している子でしたしね(あ、いや、ひとり生きていることを謳歌しているギャルもいるにはいるな)

 

フィリスとアッシュの絡みもよかったなぁ。
最初は「姉」として過保護に溺愛されててヒェ・・・怖・・・とか思ってただけに、ようやく名乗れたシーンにちょっと感動してしまった。
ところで私はカプ厨なんですぐ恋愛フラグを探そうとするんですが、むむむ、野郎同士の素直じゃない絆が強すぎて難しいな・・・・・・強いて言うならアッシュか・・・?
てか、フィリスはシスコン二人に同じことを言われて撃沈されているので、どこかでシスコン二人にリベンジを果たしてほしいですね!目にもの見せてやってくれ!

 

東凶じゅうを巻き込んだ麻薬騒動は、世界崩壊の危機という怒涛の窮地を乗り超え、苦い後味を残しつつも見事にクリア。
それでいて、いかにも続きそうなラストだったのでシリーズ化に期待したいところです。
楽しみに待ってます!

 

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「地獄に祈れ。天に堕ちろ。 /九岡望」への2件のフィードバック

  1.  どこかで作者さんの名前聞いたことあるなーと思ったらエスケヱプ・スピヰドの作者さんだったんですね!
     なるほどそりゃ面白いわけだ……

     表紙のシスターに惹かれて買ったはずが、読んだ感想は「こういうイカれた男同士のバディアクション大好物です……ありがとうございます……」でした(笑)
     ラノベだと珍しいジャンル(だと勝手に認識している)なので読めて嬉しかったです(男女のバディアクションならよく見ますしそれも好きですけどね(ここでもオススメされてた小泉花音は自重しない面白かったです))

     世界観や設定はちょっと、いやかなりイカれ気味なんですが展開はバディアクションものの王道で、バランスが絶妙なので引っかかりなく読むことができ、ラストの武器交換は自分も超熱くなりました! 
     この辺りはさすが九岡先生と言いますか

     この小説を買う理由にもなったシスターのフィリスも良いキャラしてました
     全てがイカれた東凶屠では寧ろ真っ当な方が変わって見えるのいい……表紙で見たときの第一印象通り可愛かったです

     ラスト、これやっぱり続きますよね?!
     早く続きが読みたいです……!

    1. スズナリンゴさん、コメントありがとうございます。

      そうなんです!エスケの九岡さんなんですよ!!新作嬉しかったです〜

      >「こういうイカれた男同士のバディアクション大好物です……ありがとうございます……」

      わかりみしかない・・・。
      男同士のバディアクション、私もラノベでは少ないジャンルだと思っていたんですが、もしかしたら「錆喰いビスコ」のヒットで企画が通りやすくなったのかも?とか憶測してみたり。
      少年漫画的で胸アツで読むと楽しいですよね!増えるといいな〜
      もちろん男女バディも!「小泉花音は自重しない」は良い男女バディアクションでしたよね!

      >ラストの武器交換は自分も超熱くなりました! 

      世界観のイカれ具合と主役2人のイカれ具合がすごいので、ぐちゃぐちゃになりそうですけど、それをこれだけ疾走感もって読ませてくれるのはさすがですよね。
      ラストの武器交換があまりにも最高すぎて、わかっていらっしゃる・・・わかっていらっしゃる・・・とめっちゃ頷いてました笑

      >小説を買う理由にもなったシスターのフィリスも良いキャラしてました

      表紙のフィリスの神々しさ、終盤ではかなり本人の雰囲気と合っていきましたよね!
      イカれた世界に舞い降りて、野郎ふたりを心配げに見守る聖女って感じ。抜けきれない新人っぽさがとても可愛かったし、真っ当さに惹かれるヒロインでしたよね。

      > ラスト、これやっぱり続きますよね?!

      続きますよ!絶対!信じて待ちましょっ(^^)

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