What We Want /オキシタケヒコ



What We Want【Kindle】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年11月刊。
「創元SF短編賞アンソロジー 原色の想像力2」(2012年3月刊)に収録された短編を単独で電子書籍化したもの。

著者いわく、『ガールミーツエイリアンのどつき漫才スペオペ』です。

・・・・・・・・・確かにそうなんだけど、そうなんだけど!

それでこういう話を書いちゃうの!?

序盤から勢いよく飛び出すオリジナル固有名詞の数々に面食らうものの、その言葉が生まれた背景と込められた感情を理解した瞬間の「ああ、そういうこと・・・」とストンと心に落ちる感覚が気持ち良すぎる作品でした。

ところで、オキシタケヒコ先生といえばガガガ文庫にて超傑作SF鬼退治「筺底のエルピス」シリーズを刊行中の、私にとっての神の一柱なんですが。
エルピスはまだかないつかな・・・と一日千秋の思いで待ち続けている信者としては、ここでオキシ成分(!)を摂取できたことが嬉しくてたまりません。
ぜひ「プロメテウスの晩餐」や他の短編も電子化してほしい。

☆あらすじ☆
《汎銀河通商網》とファーストコンタクトを果たした人類は、あっという間にアメリカ合衆国を巻き上げられた。二十年後、ただ一人地球に生還したアメリカ人スミレは、商人として異星人トリプレイティとともに宇宙の荒波に漕ぎ出してゆく……
第2回創元SF短編賞最終候補作を単独電子化。「プロメテウスの晩餐」で第3回創元SF短編賞優秀賞受賞、『筺底のエルピス』で注目を集める著者の真骨頂たる、コメディにして本格スペースオペラ!

以下、ネタバレありの感想です。

 

未知との遭遇を果たした地球人類。
本作はその数十年後の宇宙で、商人のスミレと、彼女の遠征任務に同行するトリプレイティのふたり旅を描いた物語です。

 

もうね、初っ端からすごい勢いで謎の言葉が飛び交うんですよ。
遠操体、ソルド、最大外貨獲得個体、保護税レートにレベイブ器官・・・・・・文脈から意味が取れるまでは結構苦心して読み進めていました(私の貧弱な読解力のせいでもある)

 

そして、読めば読むほど霧が晴れていくように物語の世界観が見えてくる。

 

ついに宇宙人と遭遇した人類に、何が起こったのか。
スミレは何者なのか。彼女は何を望むのか。
そして時折不調をみせるトリプレイティに何が起こっているのか。

 

書籍換算しても100ページにも満たないだろう短い物語のなかに、まぁ詰まってる詰まってる、濃厚な世界観と複雑怪奇な人間ドラマが!
おそるおそる読んでいた序盤が嘘のように、中盤以降は読むペースが跳ね上がっていました。なにこれめっちゃ面白い!

 

この物語に出てくる全ての言葉には、そのひとつひとつに由来と意味がある。
同時に、それらの言葉に対する様々な想いが存在する。

 

個人的に秀逸だと感じたのは「ソルド」でした。
アメリカが云々の時点で察しておくべきだった。あー!あー!!ってなりました。
これは序盤のスミレの反応も納得だわ!

 

そんなスペオペ世界の中を、テンポ良い掛け合いを繰り広げながら旅していくスミレとトリプレイティ。
関西弁の女商人に振り回される異星人が可愛くてニコニコしながら読んでいたのだけど、彼が抱える問題が明らかになった瞬間にはゾクッとしました。
そういえば序盤でも「アイデンティティ」の話をしてたわ。なるほど・・・・・・
それに対するスミレの言葉が良いんですよね。自分の身ひとつで宇宙を渡り歩いた彼女にしか言えない言葉だ。
そして、スミレ自身も恐らく何度も自問したであろうことが伝わる、痛ましくも優しい言葉だと思いました。

 

で、最後はしっかり「ガールと異星人がどつき漫才」をして〆。
うーん素晴らしい構成だ!
どつき漫才をしている姿にこんなに感動するとは思わなかった!
トリプレイティがなんのストレスもなく関西弁を生き生きとスミレに投げ返す姿がね・・・!

 

こんな短い短編でここまで楽しませていただけるとは。
冒頭でオキシ先生が「安っぽさまで含め、駄菓子の飴のように楽しんでもらえたら幸いである」と書かれていらっしゃいますが、これが駄菓子!?
駄菓子は美味い・・・!

What We Want

What We Want

オキシ タケヒコ
発売日: 2012/03/23
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