戦うパン屋と機械じかけの看板娘10 /SOW



戦うパン屋と機械じかけの看板娘 10 (HJ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年11月刊。
「戦後」を描いた物語であり、「伝説」に秘められた歴史の真実を描いた物語であり、なにより「パン屋と看板娘」の物語であった本シリーズ。ついに最終巻です。
かなりの伏線が残っていたはずなのに、終わってみれば全てスッキリと回収されました。
物語の深層に隠されていたものは残らず明るみに出て、クライマックスを怒涛の勢いで駆け抜ける。でも急ぎ足な感じはなくて、美しくフィニッシュを決めたような印象です。
面白い作品だったなぁ。最後まで読めてよかったです。
SOW先生、完結おめでとうございます。

☆あらすじ☆
皆に祝福され、結婚式を挙げたルートとスヴェン。しかし、人と機械では生きる時間が違いすぎた。だから、スヴェンは人間になることを決意し、人化の方法を知るマイッツァーを探すのだが、彼は保安部の手によって誘拐された後だった。マイッツァーの救出に動いたルートたちは、否応にも聖女が画策する次なる大戦の火種に飛び込むことになり――
今はもう英雄でもなく兵器でもない、普通のパン屋店主と看板娘が贈る街角パン屋繁盛記、感動のフィナーレ!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

ついに明かされる「聖女と悪魔」の伝承の真実。
かつて世界を支配した古代帝国に何が怒ったのか。
聖女とは何か。悪魔とは何か。羊飼いとは何か。
そして、スヴェンは一体何者なのかーー

 

1巻のラストで意味深に置かれた伏線は、この最終巻で一挙に回収されました。
1冊でどこまで綺麗にまとめられるのかと思っていたのですが、杞憂でしたね。
無理なく、無駄なく、破綻もなく。構成美すら感じました。

 

そんな最終巻ですが、個人的に面白かったのは本作があくまで「パン屋の物語」に徹したことでした。
戦争勃発の危機とか、歴史の真相解明とか、もはや「パン屋の物語」のおまけなんじゃないかな。過言?
ルートとスヴェンは自分たちの幸せのために、必要だからロケット発射台に向かい、目的のために障害と戦い、そして必要なものを得て帰還したわけです。

それ以上でもそれ以下でもない。

最終的に聖女の思惑通りに大戦が勃発したので、一瞬「えっ!失敗!?」と思ったのだけど、そうだそうだ、彼らには戦争回避の責任なんてないんです。だから結果的に戦争が起こっても、関係ないんです。自分の大事な人達が犠牲にならなくてよかったぁ・・・で済むお話なのです。

 

なんというか、世界規模の謎やら駆け引きやらが横行し、その中心近いところにいるにも関わらず、ルートとスヴェンがあくまで「パン屋と看板娘」で在り続けたことがすごく良いなぁと思って。
この大きな物語のなかで、二人が小さな存在で在り続けたことは、実はとってもすごいことなのでは?と思うんです。

 

ラストがまた良いんですよね。
結局、第二次大戦は起こって、人がたくさん死んで、国も滅んで。
そんな動乱の時代に巻き込まれ、それが過ぎ去ったあとでも、ルートとスヴェンは以前と変わらずパンを焼き、元気に売り続けていた。
その揺るぎないスタンスは、とても尊いものに思えました。
この物語には強いひとがたくさん登場したけれど、あくまで市井でパンを焼き続けた彼らの姿にこそ「強さ」を感じるというか・・・・・・うーん、語彙力がないので説明が難しいな!笑
あ、でも、このあたりはB☆W限定の特典SS「あるパン屋の女将の独白」を読んで感じたことなので、本編の感想と言って良いのかは微妙なところなのですが。このSS、本編にこそ載せるべきだったのでは?

 

何はともあれ、物語は無事に完結。
消化不良になる部分もなく、綺麗に終わっていると思います。楽しいシリーズでした。

SOW先生の次回作もワクワクしながら待っています!

 

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