銀狼の姫神子 天にあらがえ、ひとたびの恋 /西嶋ひかり



銀狼の姫神子 天にあらがえ、ひとたびの恋 (角川ビーンズ文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年11月刊。
第17回角川ビーンズ小説大賞「優秀賞」受賞作。
面白かった!
神の力を使い、人の世を瘴気から守る不老不死の姫宮。
姫宮の力と権威に目をつけた権力者たちの争いに巻き込まれるなかで、彼女は惹かれてはならない唯一の存在と出会ってしまうのです。
姉への愛憎をこじらせ、孤独に苦しみながらも気高くあろうとする主人公。
そんな彼女の心を乱すのは、神をも恐れぬ悪名高き王。
二人の駆け引きと恋の行方にハラハラしつつ、神話が息づくような世界観に心惹かれました。
これは良い和風ファンタジーだ。綺麗に終わってるけれどシリーズ化するのかな?今後の展開に注目したい新作でした。

☆あらすじ☆
世を守る姫宮として、15才の姿見で永遠の時を生きる真珠。役目から解放され命を失うのは運命の相手“銀狼”に出逢うとき。ある日、冷徹な若き国主・透輝が宮を訪れると、彼を銀狼と感じた真珠は取引をもちかけて?

以下、ネタバレありの感想です。

 

15歳の少女の姿で150年もの間「天狼の姫」として不岐国の安寧を守ってきた姫宮・真珠

姫宮の力は神のそれであり、彼女の体は不老不死である。
しかし、「銀狼」と呼ばれる王に夫としての承認を与えて力を委ねれば、姫宮の力は失われ、ただの人となる。

そうして代替わりした先代姫宮のことを今なお愛し、恨み、想い続ける真珠。
姉と慕った彼女がいない世界で、真珠はただ粛々と役目を果たしていきます。
姉への愛に殉じるために、死んだように生きねばならない。
そう自分に言い聞かせながら。

 

そんな彼女の静寂を破ったのが、不可侵の関係であったはずの不岐の新国王・透輝
弟の謀反に真珠が関わっているのではと疑う透輝に対し、真珠は偽りの婚姻話を持ちかけ、これで混乱を鎮めてさっさと出ていけと言い放つのです。

 

この偽装結婚を持ちかけるシーンで真珠のことが一気に好きになりました。
自分の意思にのみ従うと言い切る強さ。王であろうと無礼は許さぬという誇り高さ。
「立ってしまった波風には全力で乗っかっていくことに決めているのさ」という挑発的なセリフも最高です(鼻で笑い飛ばすオプション付き)
乱世でサーフィンする巫女とか格好良すぎでしょ。さすが150歳超えヒロイン。

 

それでいて、真珠の心のなかにはずっと割り切れない未練と孤独がある。
自分を置いて「銀狼」を選んだ姉を想い、ついに現れた自分の「銀狼」に姉の面影をみて動揺する真珠。
愛した人に選ばれなかった少女は与えられた役割にすがるしかなく、自嘲するような複雑な思いを抱えつつも、それだけが拠りどころでもありーー
それは真珠の実年齢にそぐわぬ幼さとして現れていて、好戦的で老獪な一面とのギャップがとても激しいんです。
巫女としての神秘性を損なわず少女の不安定さも描かれていて、そこが私にはとても魅力的なヒロインに感じられました。

 

真珠の不安定な精神性は、彼女と透輝の恋をドラマチックに盛り上げていきます。
恋をするだけで力を失われるって、天狼の乙女判定はユニコーンよりも厳しい。
神の力をふるいつつも、弱体化によって何度もピンチに陥る真珠。
透輝に惹かれる気持ちを必死で抑えるため、心中も平穏には程遠い。
真珠の身柄を狙う思惑が錯綜する一方で、真珠自身の想いや運命は迷走していき、物語がどういう形に落ち着くのか最後まで目が離せませんでした。

 

そんな真珠を混乱の渦に放り込んだ透輝。
なんというか、似たもの同士なんですよね。
たった一人の自分を認めてくれる、たった一人の誰かに愛されたいと願う。
孤独な人生を歩んできた二人だから、強烈に惹かれ合うのも仕方ないと思ってしまうんです。そこが素敵だった。
しかし終章の透輝を見ていると、この人も真珠が死んだら食べちゃいそうですよね。
姫宮と銀狼の恋って毎回そんな猟奇的で狂気を感じる純愛になるの?正直好きですよそういうの!

 

まぁ孤独といっても、真珠と違って透輝にはずっと傍に瑠璃がいたわけですが。
透輝と瑠璃の気安い主従関係、とても好きでした。
飄々としてるくせに忠義者の瑠璃が格好良かったんだけど、なかなか苛烈な主に振り回される苦労人ですよね。
真珠が目覚めてよかったね、と心から思った。

 

壮大な世界観を広げつつも、1冊で綺麗にまとめた良作でした。
ラストの真珠の状態的にシリーズ化できるのか分からないけれど、新人賞受賞作だし続きは出るのかな?
「そもそも瘴気とはなにか」から始まる左海蘭の疑問の答えを私も知りたいので、続刊が出たら嬉しいです。

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