廃墟の片隅で春の詩を歌え 愚かなるドードー /仲村つばき



【電子オリジナル】廃墟の片隅で春の詩を歌え 愚かなるドードー (集英社コバルト文庫)【Kindle】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年10月刊。
面白かった!
とても読み応えのある良質なヒストリカル・ロマンでした。
革命により幽閉され、王政復古と共に再び公の場に引きずり出された悲劇の王女。
幼少期を孤独に過ごし、自我を押しつぶされ、愚鈍で無関心な存在に成り果てた少女。
安寧とは程遠い母国の現状を前に、「何もするな」と言われた彼女は何を思うのか。
姉たちの思惑に巻き込まれる末姫の波乱の運命を描いた物語です。
哀しくも美しく描かれる主人公の変化に注目してほしい。
まだまだ物語は始まったばかりです。
シリーズ化前提の様子。続きも楽しみです!

☆あらすじ☆
幽閉された亡国の王女・アデールにもたらされる、数奇な運命!
革命により王政が倒れた国、イルバス。国王夫妻と王子らは処刑され、生き残った三人の王女たちもそれぞれ幽閉されていた。末王女のアデールは、特に過酷な辺境の地・リルベクに立つ「廃墟の塔」に閉じ込められ、希望のない日々を送っている。だがある日、謎の青年エタンが廃墟の塔に姿を現した。他国に亡命した姉王女・ジルダの命を受けここに来た、というエタン。亡国の王女を待ちうける未来とは? 凍り付いたアデールの運命が、音を立て動き出す――!

以下、ネタバレありの感想です。

 

革命により家族の命を奪われ、辺境にある廃墟の塔に7年もの間幽閉されていた王女アデール
しかし、同じく生き残り、王政復古を目論んでいた第一王女ジルダにより塔から連れ出されたアデールは、様々な思惑が渦を巻く王宮へと舞い戻ることになるのです。

 

幼少期は姉と母によって丁寧に心を潰され、幽閉されてからは心を凍らせることを覚え、そうして「無関心な平和主義者」と揶揄される存在へ育ったアデール。
あまりにも辛い半生を送ってきたアデールにとって、変化は恐れるべきものであり、選択は他者によってなされるもの。
実の姉に「駒」として扱われるアデールの姿を歯がゆく思う一方で、彼女の資質が垣間見える瞬間にハッとすることもあって。

 

「現在のアデール」の優柔不断さを描きつつも、孤独から解放されたことで徐々に「本来のアデール」に戻っていく主人公の変化を描く本作。
王位をめぐり対立する姉たち、先の見えない不安な国家情勢、そして政略結婚によって用意された夫とのギクシャクとした関係。
様々なストレスに襲われ、無力な自分を噛み締めつつも、アデールは現状どうにかしようと苦しみます。
そんな彼女の複雑な心境と、少しずつ沸き起こる変化が、とても繊細に描かれている作品だと思いました。
情感豊かな筆致は素晴らしく読み応えがあり、アデールの心を美しくも切なく伝える表現の数々は、思わずうっとりと浸りたくなるほどでした。

 

さて、塔から連れ出されたアデールを待っていたのは、新女王として即位した長姉ジルダと、秘密結婚によって王統を継げる男児を産んだ次姉ミリアムの対立。
革命を覆して王制を取り戻したイルバスは、二人の王女によって再び2つに引き裂かれようとしているのです。

 

しかし、王位を巡って激しく衝突する二人の姉の最大の関心は、無害で愚鈍なはずの末妹アデールにあるようにも見える。
王位を狙う姉たちにとって、本当に恐れるべきは誰なのでしょうか。
優しい姉の顔をして丁寧に妹の心を折っていくジルダの所業は震えるほどに怖いけれど、そうまでしてアデールを潰さなければならない何かを感じていたということ。
それは、時折顔をのぞかせるアデールの資質に関わりがあるようで、三姉妹の関係がどうなっていくのか目が離せなくなるのです。

 

果たしてアデールは愚かなるドードーなのか、それとも聡明なカナリアになるのか。
誰かによって操られて踊る駒でしかないのか、それとも「本物の王女」として自分の足で歩くのか。

 

全てを奪われる恐怖によって、蒙昧なままでは何も守れないことに気づいたアデール。
彼女は、国と大切な人を守るために、今度こそ自らの意思で「選択」をすることになるのでしょう。
それが三姉妹にどんな運命を呼ぶことになるのかは、まだ分からないけれど。
王女としての自覚を取り戻したアデールが、今後どんな道を歩むのかとても楽しみです。

 

そんな彼女の横にいる男性が誰になるのかも気になるところ。
もちろん私は幼馴染で一途でぶきっちょすぎる夫グレンを推したいところですが。
散々拒否してたアデールも、最後はグレンとちゃんと向き合っていくことを決めたようだし。

 

でもなー。エタンが気になるんですよねー。
アデールを鳥かごから出すのはいつだってエタンだから。
彼が塔からアデールを連れ出し、彼女に知識と教養を与え、彼女に道を指し示した。
あまりにも存在が大きすぎるんですよね。これはグレンが焦るのも仕方ない。

 

ただし、鳥かごから出されたアデールはもう自由の身。
操り糸を振り払い、グレンと共に歩むため、そして国を守るために。
彼女は常春の国・ニカヤを目指すのです。
そこでアデールが何を見つけるのか、私はとても楽しみです。

 

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