前略、顔のない騎士と恋を始めます。 /春臣あかり



前略、顔のない騎士と恋を始めます。 (ビーズログ文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年10月刊。
第1回ビーズログ小説大賞受賞作。
えっ、新人さんですか?
なんだかベテランのような安定感のある作風で、途中で引っかかるところもなく、気づけば楽しく読み終えていました。これは安心と信頼の少女小説・・・!
魔術師の仮面をつくる仮面造形師の少女が、魔術院の採用試験に合格するために奮闘するファンタジー。
試験に挑む中でワケありの仮面騎士を必死に追いかける主人公は素直に好感の持てる頑張り屋さんだったし、タイトルにある「恋」の始まりもじっくりと丁寧に描かれていきます。
キャッチーな要素があるわけではないのだけど、滋味のある良作という感じ。
1冊でそれなりに綺麗に話をまとめてありますが、シリーズ化に繋がりそうなラストでした。伏線も少し残っているし。
続きを楽しみに待ちたいと思います。

☆あらすじ☆
どんな過去(ルビ:キズ)があろうとも、“惹かれる想い”は止まらない!! 仮面作りを通して描かれるクラシカルお仕事ラブロマン!
「選ばれた十二席(ヘルヘニル・ツヴェルフ)」の一人になる——。
その夢を抱き【仮面造形師】の試験を受けに王都へとやってきたイルゼは、そこで漆黒の仮面をつけた寡黙な騎士ヴィンセントと出会う。
“顔のない騎士”と揶揄され、素顔に醜い傷と凄惨な過去を負う彼に、たまらなく惹かれていくイルゼ。
だが仮面を作らせてほしいと頼むも「お前とは関わりたくない」と一刀両断され!?

以下、ネタバレありの感想です。

 

王宮にある魔術院の採用試験を受けるため、田舎から王都へ出てきた仮面造形師の少女イルゼ
その試験内容は、自分と同じ適性を持つ魔術師とコンビを組み、魔術師が魔術を行使するために必要な「仮面」を造ること。
しかし希少な「白」の適性を持つイルゼには、コンビとなるべき魔術師が存在しなかった。
このままでは試験を受けることすらできないと焦るイルゼだが、偶然にも何度か自分を助けてくれた騎士ヴィンセントが元魔術師で属性も白であることを知り、なんとか彼に協力を願うのだが―― というストーリー。

 

まず基本となる世界観や設定が良い。
魔術師が魔術を行使する際に必要な「仮面」。
この作品で登場する「仮面」は魔法使いの杖のようなもので、それがなければ魔術を使えないというアイテムなのです。
そして、その仮面を造り出すのがイルゼたち「仮面造形師」
名前の通り仮面造りに取り組むシーンもあるのだけど、仮面に術式を書き込む姿とかは魔法使いっぽい感じ。
魔術師と職人を足して2で割ったような設定だと思います。こういうの好き。

 

そんな仮面造形師と魔術師がコンビを組むという設定も良かった。
仮面造形師には必要に応じて仮面の術式を書き込んだり書き換えたりする役割があり、仮面を作ったらハイおしまいという訳じゃないのが良い塩梅です。
活躍の場面が色々と想像できるから、今後のイルゼの物語も面白いものになりそう。

 

物語を駆け抜ける登場人物たちも十分な魅力を備えていたと思います。
特にイルゼは好きなタイプの主人公だったなぁ。あとがきで書かれていたように、勝手に引いてしまう騎士をガンガン押して押して押して粘り勝つ子でした。
それは別に極度のポジティブ思考とか空気が読めないとかではなく、自分にできることを必死にやろうとしているだけ。そこがまた直向きで良いなって思いました。

 

一方のヴィンセントは寡黙キャラの傷あり男(色んな意味で)。
負い目があるせいで色々と迷走していたけれど、最終的には腹が据わったようで何より。
むしろ彼が面白くなるのはこれからですよね?
手紙の送り主の正体は訓練された少女小説読みなら一瞬で察したと思うけれど、その設定が生き生きと輝き始めるのはこれからですよね??
個人的にとても好きなシチュエーションです。
ヴィンセントは生真面目でちょっと根が暗いタイプなので、これは更に面白いことになりそうだとワクワクが止まりません。

 

登場人物といえば、ヴィンセントとコルセスの幼馴染コンビが何気に好きでした。
「俺の顔、何か付いているか」に対するコルセスの受け答えが冒頭と終盤で少し変わるんだけど、その少しの変化に彼らの絆を感じ取ってしまう。コルセスはヴィンセントの仮面のことを本当に何とも思ってないんだなぁって。
そのくせ彼のことを陰ながら心配していたわけですよね。なんて良い友達なのか。

 

さて、イルゼの父の死の真相が明らかになり、ヴィンセントが抱えていた問題も解消。
イルゼの進路も決まり、物語は綺麗に収まるべきところに収まったわけですが、・・・・・・あれ?回収されてない伏線があるような??

イルゼの父は、なぜイルゼに自身がツヴェルフであることを秘密にしていたのか。
イルゼの「精霊が見える」という特異体質は、なぜ誰にも言ってはならないのか。
イルゼの父は、イルゼを何から守ろうとしていたのか。

このへんの謎は続編で明らかになるのかな?期待したいところです。

 

地力を感じる新人さんの登場が本当に嬉しい。続きを楽しみに待っています。

 

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