一乗寺探偵事務所の広辞くんと千世子さん /山咲黒



一乗寺探偵事務所の広辞くんと千世子さん (メゾン文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年10月刊。
ビーズログ文庫で活躍されている山咲黒さんのライト文芸作品。
とても面白かったです。
広辞苑を諳んじる探偵夫と、事務や家事で彼をサポートする愛妻。
探偵事務所に持ち込まれる様々な謎に挑みつつ、物語は仲良し夫婦に隠された秘密に迫っていくのです。
二度読み必至とはまさにこれ。
最初はキュンとしたセリフが、二度目にはガ・・・ッと心臓を掴まれる気分に。なんだこの夫婦ー!

☆あらすじ☆
浮気調査に人捜し、その他どんな不思議な依頼でも承り中の一乗寺探偵事務所。所長不在の中でも、依頼解決のために仲良し夫婦が奮闘中! コミュニケーションには難ありだけど、膨大な知識を生かして調査員として活躍する広辞くんと、ご飯をこよなく愛する千世子さん。最高のパートナー同士のはずが、なにやら広辞くんには隠し事がある様子。時を同じくして、頻繁に掛かってくるようになった間違い電話。それらに隠された真実とは……!? 日常系ミステリ!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

所長不在の一乗寺探偵社を調査員として切り盛りする日浅広辞くんと、その妻・千世子さん
いつも一緒にいる二人は、浮気調査や老婦人の悩み事解決など、日々、探偵事務所に持ち込まれる依頼に立ち向かっていた。
お仕事でもプライベートでも仲良しな日浅夫婦。
何かと言えば脳内の広辞苑を参照する広辞くんに適宜ツッコミ入れつつ、のんびりした気性の千世子さんは愛にあふれた幸せな毎日を送っていた。

 

ただ、なにか心に引っかかることがある。

 

広辞くんはどうも千世子さんに隠し事をしているらしい。
千世子さんは異常な眠気と、度々時間が飛ぶような感覚に襲われている。

 

幸せいっぱいの探偵夫婦で、互いへの愛は疑いようもないほどなのに、どうにも二人の関係はミステリアス。
この夫婦に一体どんな秘密が隠されているのか気になって仕方がなく、ページを捲る手は止まりませんでした。

 

正直言うと、千世子さんは監視ないし監禁されているんじゃないか?とか少し疑っていたんですよね。特に序盤は。
広辞くんは感情が薄い系のキャラクターではあるけれど、千世子さんを心から愛しているのは伝わるし、でもなにか、こう、愛が歪んじゃってるんじゃないかな?とか思ったりして。

 

だって千世子さんが眠気に襲われているタイミングで、広辞くんはいつも何かをしているんですよ。
睡眠薬でも盛ってるのかと疑ってしまうのも仕方なくありません?
千世子さんが好きすぎて、どこにも行かないでほしくて、自分の目が届かないときは家で眠らせてるのかと思ったんだよ・・・!(ヤンデレ好き並感)

 

でも違った。

 

これはそんな歪んだ愛の話ではなくて、どうしようもない不幸に襲われた優しい夫婦の物語だったのです。

 

広辞くんごめん。疑って本当にごめん。

「千世子さんがいないと僕は生きていけないな」の一言の重みが、初読時と再読時で全然違うよ・・・!めちゃめちゃ泣ける・・・!
「だから僕を置いてどこにも行かないでほしいな」というのはヤンデレのおねだりではなく、広辞くんの途方もなく切ない祈りだったんですね・・・・・・

 

優しい夫を愛している千世子さんに何が起こっているのか。
優しい妻を愛している広辞くんは何を隠しているのか。

 

その全てが明らかになると、もう一度最初から読み直し、夫婦がそれぞれ何を語っているのか確認したい衝動にかられました。
今思うと、「ご飯大好き食いしん坊」という千世子さんのキャラクターが一番歪んでいて、同時にそれが希望でもあったんですね。
千世子さんのキャラ設定最高だったなぁ。作中最も儚い人なのに、あんな生命力にあふれたキャラにしてるところが絶妙でした。

 

事情が明らかになる終盤からラストに至るまで緊張しすぎて死にそうだったけれど、おかげで読後は開放感と多幸感に満たされました。
とても面白かったです。

 

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