椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録(1)欺けるダンテスカの恋 (ウィングス・ノヴェル)/【BOOK☆WALKER】
評価:★★★★☆
2019年4月刊。
霊感の強い女子高生と、椅子を偏愛する変人オーナー。
そんな二人が巻き込まれていく、椅子とポルターガイストと嘘と愛憎の物語です。
糸森さん、こういうホラーテイストの作品もいけるんですね。意外に怖くてドキドキした・・・!
椅子に関わる奇妙な心霊現象の真相も、そのなかで語られる様々な椅子の薀蓄も、とても面白かったです。
情緒不安定な変人に振り回されるJK主人公も可愛くて良かった。
ナンバリングが振ってあるので続きますよね?楽しみです。
☆あらすじ☆
霊感体質の女子高生・杏は呼ばれるように入ったアンティーク椅子工房「TSUKURA」で霊を祓い、請われてバイトを始めることになった。たまのアレさえ出なければ良い職場で、極悪人顔揃いの職人たちはみんな心優しく親切だ。そして店のオーナーの、死にたがりで人類嫌いで変人美貌のヴィクトールに、杏は不意にときめいたりもしている。そんな時、杏がある椅子に座ってから店にはポルターガイストが頻発するようになり……?
椅子談義も楽しい、ふんわりオカルト&ほんのりラブ開幕!!
以下、ネタバレありの感想です。
女子高生・高田杏は、とある心霊現象に関わったことを機に、アンティーク椅子工房TSUKURAでアルバイトをすることになる。
職人たちは顔は怖いものの優しい人ばかりだが、オーナー兼椅子職人のヴィクトールは「人類嫌い」を公言していてなかなか距離が掴めない。
そんなTSUKURAで杏に求められる役割は、店番と接客と、多発するポルターガイストに対抗する「お守り」だった―― というストーリー。
アンティーク家具を扱うから心霊現象が起こりやすいってマジかよ怖すぎる・・・!
様々な人の手に渡ってきた家具はそれだけ情念を溜め込んでそうですもんね。付喪神的な。いやそれとは違うか。人の念を受け取り安い?的な感じ??
今回、杏たちを悩ませるアンティーク椅子は「ダンテスカ」。
恋に見を燃やしたダンテの名を冠するその古い椅子は、とある家族の愛憎とすれ違いの物語を杏たちのもとに招き入れることになるのです。
ダンテスカ、普通に知らなかったのでググりました。
めちゃくちゃクラシックで立派・・・!でも確かにこれでピアノを弾くのはキツイだろうな〜
こういう古い椅子ってあまり興味なかったのだけど、椅子に愛情をたっぷり注いだヴィクトールの語り口と、それを優しく豊かな感性で受け入れる杏の反応が楽しくて、とてもワクワクしながら読めました。あと勉強になった。
ルネサンスに至るまでの文化史の話が分かりやすかったのも良かったなぁ。ヴィクトールは確かに先生向きですね。椅子限定だけども。
そんな椅子の薀蓄にワクワクする一方、気になって仕方ないのが度々起こる心霊現象の真相。
杏もヴィクトールもめちゃくちゃ怯えてるから(ヴィクトールは自分が寝落ちするまで杏に電話させてたとか笑うでしょ)、ビビリな私もビクビクしながら読む羽目になってしまったじゃないですか。どうしてくれる。ちなみに読み終わった現在時刻は23時です。どうしてくれる。
この話、松本家が抱える問題ばかりに目を向けていたら最後の最後で予想外の落とし穴が待ってるんですよ。
おじいちゃんおばあちゃんの激しすぎる愛憎劇と純愛にときめいている場合ではなかった。
雪路くんの話、そこにつながるのかよ!ゾッとした!!
雪路くんの話もだけど、さりげない伏線設置とその回収がとても上手い作品だと思います。構成が緻密なんだ。
それに大きく貢献しているのが杏の特殊体質。
伏線が回収される度に杏の「霊感体質」がどれだけ異常なことなのかが分かり、さらに背筋が寒くなるのです。
ここまで現実とそうでないものの区別がつかないのは不味いのではなかろうか。
それに本人も自覚したシーンでは、彼女の混乱につられて私まで目眩を覚えてしまいました。
何が現実で何が心霊現象なのか。
たった今、目にして、耳にしたものは、本当に実在する何かなのか。
ああ、人の認識はなんて曖昧なのでしょうか。怖すぎる。
TSUKURAで働くことで更に酷くなっているんだっけ。彼女の今後がとても心配です・・・・・・ていうかこれで学校生活は大丈夫なの?
そんな杏の、ちょっと気になる相手であるヴィクトール。
人類嫌いを公言する正真正銘の変な人なのですが、この人類嫌いって表現がなんかすごく可愛くて好きです。
「人間嫌い」って表現するよりも人間という種族まるごと嫌いだっていう感情の壮大さが伝わる気がする。
大げさすぎて逆にムキになってる感じが、大人げなくて可愛いくないですか?
人類が嫌いだと言いつつ、人を模した椅子を愛し、人の話に対して深く思考し、真面目に向き合うヴィクトール。
とても変人で、とても気難しく、とても面倒くさく、とても可愛いヒーローだと思います。
あと、心霊現象と現実のバランスを取る役目にあるところも良いんですよね。
心霊現象によって現実と幻の境目がブレるなかで、彼だけが現実を見据えて推理を展開する探偵なんですよ。
作中一番の変人なのに誰よりも現実的かつ理性的なポジションにいるというのが、とてもとても好き。
ヴィクトールについては未だ謎が多く、どんな過去を経てこんな人間ができあがったのか気になるところ。
杏が怯えていた、ヴィクトールお気に入りの椅子の正体も気になるなぁ。
あれはきっと良くないものなんですよね。ダンテスカよりもやばそう。
杏とヴィクトールの関係がどうなっていくのかも楽しみです。
雪路くんと三角関係になったりするのかなー?
ヤンデレ幽霊がさらっと気持ちをバラしてたけど、マジで雪路くんは片思いな感じなの?そういう雰囲気はあったけれど。
気になる!雪路くんの出番、もっと増やしてくださいな!
というか二人でお守り買いに行った話を読みたいのですが!!
みかこさんの感想がきっかけで読んでみたのですが、とても面白かったです!(夜中の1時ぐらいに読んだので同時にとても怖かったですけど!(なぜ1時に読んだし))
ダンテスカ気になって調べたんですけど、好きなのは好きなんですがあれでピアノは弾けないでしょ……。ってなりましたね笑
観賞用にするにはいいと思いますが実際座ったら疲れそう。
ストーリーもそうなんですがキャラクターも魅力的で、特にヴィクトールが好きです。
変人だけど作中での役割は現実的な解説役というのがいいですよね。実際ヴィクトールの話は面白くスっと入ってきたので。
あと、こういう現実的な解説キャラってどんな出来事が起こっても割とビビらないことが多いと思ってるんですけど、ヴィクトールは普通にビビり倒してたのが面白かったですね笑 親近感が笑
糸森先生の作品は初めて読んだのですが、雪路くんの話の繋げ方とか、構成がすごくキレイで面白かったです!
ほかの作品も読んでみようかな……?
スズナリンゴさん、コメントありがとうございます。
わーい!!読んでもらえて嬉しいです!!!
夜中に読むにはちょっと内容がアレでしたよね(笑)
私もダンテスカを調べたのですが、アーム部分とか絶対に邪魔だよね??とひたすら思ってました。あれは飾る用の椅子・・・・・・
>ストーリーもそうなんですがキャラクターも魅力的で、特にヴィクトールが好きです。
ヴィクトールいいですよね〜!
ホラーシーンではぷるぷるしてる怖がりさんなのに、解説が始まると現実主義丸出しにスンっと冷静になるギャップがすごく楽しかったです。
なんのかんの言いつつ怖いものは怖いよね、と共感できるイケメンでした(笑)
>糸森先生の作品は初めて読んだのですが、雪路くんの話の繋げ方とか、構成がすごくキレイで面白かったです!
糸森環さんは主に少女小説ジャンルで活躍されている方で、個人的には神のごとく崇めている作家さんです笑)
糸森さんの少女小説はかなりクセの強いファンタジーが多いんですよ。
濃厚な世界観とおかしなキャラクターが満載で、割と読み手を選ぶのですが、私は大好きです。
特に「F―エフ―」、「恋と悪魔と黙示録」、「花神遊戯伝」、「階段坂の魔法使い」は最高です・・・!
ライト文芸も出されていて、そちらは少女小説に比べると糸森環節が控えめですね。
最近だと「ばけもの和紙庵の花嫁さん」などがあります。
「ヴィクトール」はライト文芸と少女小説の中間くらいの作風でした。
個人的には最近の糸森さんの作品の中ではダントツに好きです。この本から糸森環作品に触れたのは大正解ですよ(๑•̀ㅂ•́)و✧
でも他の作品も面白いので、ぜひぜひお試しください〜!(^o^)