medium 霊媒探偵 城塚翡翠 /相沢沙胡



medium 霊媒探偵城塚翡翠【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年9月刊。
美しい霊媒と推理作家の青年が、様々な殺人事件の謎を解き明かす連作ミステリー。
証拠能力皆無のオカルトパワーで弾きだされた犯人を、誰もが納得できるよう論理的に追い詰めることができるのか。
黒い帯に金の文字で「すべてが、伏線。」と書かれたシンプルな帯に惹かれて買ってみたのだけど、なるほど確かにその通りでした。
特に最終話の面白さがピカイチだと思います。

☆あらすじ☆
「死者の提示する謎を、先生が解き明かしてください――」
推理作家として難事件を解決してきた香月史郎【こうげつしろう】は、心に傷を負った女性、城塚翡翠【じょうづかひすい】と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。

以下、ネタバレありの感想です。
本作は特にネタバレ要注意作品です。未読の方は踏まないように気をつけてくださいね。

 

最終話が面白かったと冒頭で書いたものの、正直に言うと、最終話以外はあまり楽しめませんでした。

 

霊障に悩む知人の付添という形で霊媒の女・城塚翡翠と出会った推理作家の香月史郎
翡翠の霊能力が本物だと確信した香月は、様々な事件に遭遇するなかで、翡翠が霊視する「犯人の正体」という正解に導くためのロジックを構築していくことに。

 

霊視などというオカルト能力は証拠として使えないが、彼女の力はホンモノなので提示された「犯人」に間違いはない。
香月にすべきことは、いかにオカルトを挟まないロジカルな推理で警察を納得させるかという点に尽きるのです。

 

これがね、全然ワクワクしなくて・・・・・・

 

結論ありきだから仕方ないにしても、香月のロジックは辻褄合わせ感がとても気になる。
なんだかとても都合の良い翡翠のヒントから、うーんうーんと悩んで捻り出した推理も微妙にスッキリしなくてモヤる。
すごく目が滑るんです。説明がうまく頭に入ってこない・・・・・・いや、これは私の読解力のせいかもしれないけれど!焦

 

でも香月本人もなんだか感情の起伏が薄くて心理描写ものっぺりしている。
そんな香月に好感度マシマシになっていく翡翠も、可愛いと思う以前に少しピエロっぽい。

 

うーん、これはダメかな・・・・・・リタイアしたいかも・・・・・・と、途中まで割と真剣に考えていました。

 

そういうわけで終盤までダラダラと読んでいたのだけど、そんな私が一気に姿勢を正したのが最終話。

 

「わたしが、ほんものの霊媒だって、ずっと信じていらしたんですか――?」

 

この一言にゾワゾワし、ぶわりと高揚感に包まれました。
そこからの翡翠の話はとても面白くて読みやすいものでした。これぞまさしく理路整然とした論理的思考・・・!
ダラダラと説明して終わったかに見えた3つの事件を、本物の探偵が華麗にスッキリ解き明かしてみせるのです。
偽物との落差が激しすぎて、ちょっと香月を不憫に感じるほどの違いがあった。

 

各事件で都合よく挟み込まれたオカルトなヒントも全てが伏線であり、無駄はひとつない。
こんなに気持ち良い解決編が待っているとは。
最終話までの積もり積もったストレスと消化不良を全部解消してくれました。

 

ついでにキャラクターへの違和感までも指摘されているので、なんというか、本当に作者の思惑に踊らされてたんだなぁって(笑)

 

キャラクターといえば連続殺人鬼の正体にはガッカリしたのだけど(個人的に好きじゃないオチなので)、それも含めてエピローグでみせる翡翠のキャラの良さを引き立てていたと思います。
まぁアレは別の意味であざといのかもしれないけれど、でも「そうか、そうか、虚勢をはっていたのね・・・」と思うとキュンとすると言うか。

 

・・・・・・いや待てこの気持ちも計算されていそうだな?(疑心暗鬼)

 

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「medium 霊媒探偵 城塚翡翠 /相沢沙胡」への4件のフィードバック

  1. 奇術とか登場人物にキモイと言わせる女の子描写とか、著者さんらしさがつまった作品でしたけど、何より全てが繋がる決着が鮮烈でしたね。それもまた著者さんらしさの集大成だったようにも思いましたけど。

    その後のエピローグのひとつひとつの描写がまたいろいろ想起させて、いろいろ言ってたけどほんとのところはどうだったの…?とかいろいろ妄想してしまうというか(苦笑)特異な存在って誰もついていけないから孤独ですからね…従者はいるけど相棒って凡人じゃ務まらなそう。

    1. よっちさん、コメントありがとうございます。

      最後に全てが繋がる決着、本当にすごかったです!
      気になるところを一つ残らず回収しつくす鮮やかなお手並みでした。

      妄想しちゃいますよね(笑)
      悪女のごとく振る舞って自分を奮い立たせてたんだろうなぁって思わせるあたり、女性キャラの造形が秀逸すぎる。

      ワトソン役はもう現れないのでしょうか。寂しいですね・・・・・・
      友人兼サポーターっぽいポジションの子はいるので、彼女のキャラを格上げすれば女性二人組で続編をつくるのはいけそうですが。。。

  2. 著者さんの作品は全部読んでますけど、思うにこの著者さん的な至高の形は、たぶん鮮烈たるヒロインとそれを支える気弱な男の成長なんだと思うんですよ。真ちゃんもいいキャラしているとは思いますけど、あのポジションだからこその味だとも感じるので動かさないんじゃないかなあ。

    普通だと毎回新ヒロインが登場する物語も多いですけど、この作品なら毎巻ごとに新ワトソン候補を登場させればいいんじゃないですかね。それに心揺れてしまう詐欺師キャラなのに実は惚れっぽかった霊媒探偵とか…(でもそれじゃちょっとアレか 苦笑)

    あと、あのアナグラム作家に情報流してて立場なくなった刑事さんがそれ役にハマるのか分かりませんけど、彼も何らかの形で再登場しそうなくらいには存在感ありましたね。

    1. >鮮烈たるヒロインとそれを支える気弱な男の成長

      なるほど・・・!
      確かにそれはあるかも。真ちゃんとの関係だとポンコツ感が強くなって、それだと翡翠さんの魅力がフルに発揮されない気がしますね。

      新たなワトソン役がほしいところですが、バディの探偵もので相方がコロコロ変わるのは微妙な気持ちになるかも・・・!
      うーん悩ましい。シリーズが続くなら本命ワトソンくんを出してそのまま続けてほしい気もします。
      刑事さんも上手くキャラ立ちさせればいけそうですが、ポカやっちゃった人を拾い上げるのは難しそうな気もしますね(笑)

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