プロペラオペラ /犬村小六



プロペラオペラ (ガガガ文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年9月刊。
面白かった!
飛空士シリーズの犬村小六先生による、新たな恋と空戦の物語。
空に浮かぶ巨大艦隊同士が激突する迫力の空戦と、国を背負う幼馴染2人のツンデレな恋模様を楽しめる新作です。
太平洋戦争時の日本がモデルになっているところは『とある飛空士への夜想曲』を思い出すのだけど、あちらよりも物語に閉塞感は(現時点で)(そこまで)ないし、キャラが若々しく、コメディ色強め。
大言壮語を吐きつつ比類なき才能を発揮する主人公の活躍も痛快で、最後まで高揚感をもって楽しむことができました。
とはいえ、人がたくさん死ぬ「戦争」の物語ではあるし、先行きは暗いんですけどね・・・・・・
犬村作品には毎度心を○されるので続きを読むのが怖いけれど、それ以上に楽しみで仕方ありません。2巻も期待!

☆あらすじ☆
美少女艦長+天才参謀、天空の艦隊決戦へ!
極東の島国・日之雄。その皇家第一王女イザヤ18歳。
彼女はしかし同時に、重雷装飛行駆逐艦「井吹」の艦長である。イザヤのためなら命を投げ出す乗組員達は、全員彼女の大ファン!
そんな「井吹」に、突然イザヤの部下として乗り込んできたのは、主人公クロト。皇族傍系黒之家の息子であったクロトはイザヤとは幼なじみであったが、ある日、イザヤに対し最っ低の事件を起こして皇籍剥奪となり、家族もろとも敵国ガメリア合衆国へと逃亡したのであった。そのクロトが(どのつら下げて)なぜ今ここに!?
クロトは言い切る、「俺はガメリアを牛耳る怪物から日之雄を守るために帰ってきた」!おりしも我が国日之雄は、カネと武力で日之雄を我が物とせんとするガメリアと開戦に踏み切った。イザヤとクロトは「井吹」を駆り、超大国ガメリアの世界最強飛行艦隊に対し決戦を挑む!!
自信満々、超傲慢、頭が切れるのに加えてバカがつく努力家クロトの大驀進人生の絢爛舞台、ファン待望の犬村小六真骨頂「空戦ファンタジー戦記」が堂々開幕!!!

以下、ネタバレありの感想です。

 

日之雄皇王家直属艦「井吹」の艦長にして、皇家第一王女白之宮イザヤ
彼女が率いる井吹に新たに配属されたのは、子ども時代に「おれが皇王になるために結婚しろ」という最低最悪のプロポーズをした後、大逆の徒として王籍を剥奪された元宮家の嫡男・黒之クロトだった――

 

という、序盤のフックの強さに笑ってしまいました。
なんでわざわざプロポーズの真意をバラしてるんだ?バカなのか?と動揺したし、こんな自業自得な貴種流離譚のプロローグとか笑うしかないでしょ。

 

しかしそこから始まるのはドン底まで落ちたプリンスが海外で成り上がる物語。

みすぼらしい孤児が成長し、大国・ガメリア合衆国の金融街を席巻するのです。
自分の頭だけで偏見をねじ伏せ、信頼を勝ち取り、やがて大金を手にして大成功を収め―――

・・・・・・と思ったらあっという間に裏切られて身ぐるみ剥がされてる!?

 

10歳から流転し始めたクロトの人生。
あまりにも波乱万丈すぎて、肝心の空戦が始まる前に既に楽しくなっていました。
これ全部クロトに戦う理由が生まれるまでの序章でしかないのだけど。だからこそ期待が高まるというか。絶対この先も面白くなるでしょって。

 

クロト自身が魅力的なキャラクターなのも良かった。
傲慢だし偉そうだしやたら大口を叩く生意気な少年なのだけど、その実、生来の才能にあぐらをかかずに不断の努力を旨とする男でもある。
そして、思い出のイザヤを懐かしんで孤独を慰めていたり、イザヤを守るために戦う決意を決めるような一途なところもあって・・・・・・
もぉ〜〜、これはズルいわ。好きになっちゃう主人公ですよ。冒頭のクソプロポーズ以降、ひたすら株を上げ続ける男でした。

 

そんなクロトと共に戦うことになるイザヤ。
序盤の拷問シーンでまさかのドSヒロインかと思ったらそんなことはなく、王族としての使命を粛々と遂行する責任感のある美しいプリンセスでした。
いや、あの拷問シーンほんと何だったんだ。クロトの敏感肌設定くっそ笑ったけど普通逆でしょう!?なぜ色っぽく喘いでるのが野郎なのか・・・・・・・・・・・・なるほどご褒美!(錯乱)

 

イザヤとクロトの微妙な距離感もすごく楽しかったです。
ツンデレ×ツンデレの幼馴染とか大好物ですありがとうございます。
素直にならずとも互いへの思慕の感情がきゅんきゅん伝わってくるから、むしろ素直にならないでほしいまである。

 

二人の関係で特に象徴的だったのが、ボロボロになった「井吹」の残り時間も僅かというところで、決死の覚悟をもって挑んだ空戦のクライマックス。

敵艦に空雷が炸裂し、戦いの終焉を告げるアリアが鳴り響く。
それを見つめるイザヤの口から紡がれるのは、クロトへの甘い感傷。

戦場を彩る恋心のきらめきはあまりにも美しく、幻想的で、場違いなほど甘酸っぱくて。
なんかもうトキメキが止まりませんでした。すごい素敵だった。
その背後には血肉と化した兵たちの死体もゴロゴロ転がっていて、クロトも傷だらけなのに。あの瞬間には全てを忘れた。
戦いが悲惨かつ熾烈であるほど、その中で花開く恋心が美しく際立つ。
犬村作品の真骨頂といえるクライマックスだったと思います。

 

さて、恋愛パートの感想ばかりになったけれど、これは空戦の物語でもあって。
セラス粒子層に覆われた浮遊圏を、浮遊体に釣られた艦艇が浮かんでいる――
空が舞台なのに海戦のような雰囲気があり、けれど戦っているのはノスタルジーを感じるデザインの巨大な飛行船。なんかもうロマンのかたまりって感じでした。
まぁ、その船でやってることは血なまぐさい戦争なんだけども。身を削り合うような戦いの激しさは震え上がるほどだったのだけども。

 

辛くも勝利を収めたものの、巨大な国と対峙した弱小国の先行きは暗く。
頼りになる将官も早々と戦死し、残された少年少女はどうやって未来を掴むのか。

うう、怖いけれど楽しみです。クロトが何とかするって言ってるんだから何とかなるんだよ。信じてる!

 

そういえば、日之雄とガメリアの戦いの裏にあるのが、イザヤに執着する悪魔のような金融王との三角関係だというのも、物語をエンタメ的に盛り上げていて面白い展開だと思いました。
戦争ものはあまりシリアスに振られると辛すぎて心が死ぬので、エンタメとして適度な非現実感を織り交ぜつつ、軽快なラブコメも挟んでくれると嬉しいな・・・・・・

続きも楽しみです。

 

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「プロペラオペラ /犬村小六」への2件のフィードバック

  1. 不器用だけどまっすぐな幼馴染同士いいですよねー。
    でも彼女も皇家での扱いはあんなだし、戦いに勝って盛り上がったところで政治で丸め込まれて、友好の証とかでガメリアへ人身御供に差し出されそうな展開が怖い…orz

    あとクロトの分かりやすいクズな父親が、合衆国側のどうしようもなくゲスい役割で再登場しそうな予感も。てかそもそも父親がまともだったら大逆事件も起こらなかったのでは?w

    まあ著者さんの「おれを信じろ」に期待しましょう。

    1. よっちさん、コメントありがとうございます。

      幼馴染良かったですよねー!ふたりともなかなか素直にならなくて、そこがすごく可愛かったです。
      たしかにガメリアに人身御供展開ありそう・・・・・・政略結婚という名の・・・・・・ありそう・・・・・・(怯)

      クロトの父親は確実に再登場しますよね。
      しかも一番上手くいってるときに、一番嫌な場所から飛び出てきそうな感じがしますね!!あのままフェードアウトしてくれたら良いのに!!!

      「おれを信じろ」・・・・・・し、信じていいのだろうか・・・・・・
      今まで読んだ作品ではバッドエンドもビターエンドもハッピーエンドも経験しているので、何をもって何を信じれば良いのか・・・!
      期待しましょう笑笑

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