妖姫ノ夜 月下ニ契リテ幽世ヲ駆ケル /渡瀬草一廊



妖姫ノ夜 月下ニ契リテ幽世ヲ駆ケル (電撃文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年9月刊。
面白かった!
大正×妖怪×○○という伝奇ロマンな新シリーズ。
下宿先の不思議な稼業に関わることになった少年が、妖怪たちのトラブルに巻き込まれていくお話です。
思い込みの激しい蛇のお姫様や細マッチョな女鬼など、登場する妖怪がとにかく個性的で生き生きとしている。
そんな彼らが住む世界は妖しい魅力に満ちていて心がときめきました。
また、主人公の存在感が妖怪に負けないくらい鮮烈。
この少年、本当に何なんだ・・・?と妖怪も動揺するレベルの活躍っぷりが痛快でした。

☆あらすじ☆
妖の姫君と体術無双の少年が織り成す、大正伝奇ロマン!
大正十三年、春。少年、椚雪緒は、上京した先の夜鳴川邸にて美しき白蛇に出会う。
彼女は父である八頭八尾の大蛇、「十六夜」の決めた縁談から逃れるため、妖相手に商売をする「化猫堂」へ助力を求めに来たと云う。
化猫堂の店主、夜鳴川夜霧と猫のミタマ様に連れられて、雪緒は妖達の住まう「常夜之町」へ乗り込むが、そこは人の世の常識が通じぬ異境だった——!
関東大震災後の横浜を舞台に、人と妖の縁を紡ぐ大正伝奇ロマン。

以下、ネタバレありの感想です。

 

田舎から上京し、関東大震災後の横浜にやってきた少年・椚雪緒
夜鳴川夜霧という資産家のもとで用心棒を兼ねて下宿することになった雪緒だが、ある日、白い大蛇の姫君が助けを求めて現れたことで夜鳴川が妖怪たちを相手に商売していることを知る。
事情を打ち明けられ、夜鳴川の仕事を手伝うことになった雪緒は、白蛇の姫君が持ち込んだ問題に関わることになるが―― というストーリー。

 

物語の舞台となるのは大正時代の横浜、と繋がった妖怪たちの住む世界「常夜之町」
震災直後で荒れた横浜の描写はそれなりにあるけれど、話のメインとなるのは「常夜之町」の方ですね。
この常夜之町がとても魅力的。和風テイストの異世界って好きなんだよなぁ。
妖怪が住み、貨幣経済ではなく物々交換(片方は物ではなく加護だけど)で成り立つ不思議な空間を、路面電車なんていう近代的な乗り物で移動するという、ちぐはぐなところにロマンを感じます。
馴染みがあるようでいて見知らぬ世界っていうのが良い。

 

さて、そんな世界で商売の手伝いをすることになった雪緒。
といっても今回はモノを売るのではなく、白蛇の姫が持ち込んだ縁談騒動と、彼女の父である大物妖怪「十六夜」の乱心を解決することに終始するんですけど。
そこで印象的なのは妖怪世界の意外な世知辛さ。
一商売人としてお得意さんたちを刺激しないように、かと言って、自身に不利益が及ばないように立ち回る夜鳴川の苦労がしのばれます。
そんな彼を手伝うことになる雪緒のほうは、なんというか、泰然自若というか、本当に動じないのだけど。

 

雪緒って、ころころと印象が変わっていく主人公でした。
寡黙で聡明な少年に見えて、女の子を無自覚にタラシ込んじゃう天然ジゴロ。
礼儀正しく、柔軟で、体術も得意。お猫様を主として受け入れるほど素直で、誰にでも優しい態度で接していく。
ラストで「麒麟児」と呼ばれているのも分かるほど隙がない少年なのです。
でもそれがなんだか面白くて。
感情の動きは大きくない主人公なのに、妖怪もドン引きするような活躍ばかり見せるものだから、なんだかびっくり箱を覗くような気分になっていました。次は何が出てくるんだろうとこわごわ期待しちゃう感じ。
そんな感じだから正体が忍者と聞いてめっちゃ納得しました。忍者なら仕方ない忍者なら妖怪にも勝てる。うんうん。
彼の活躍ぶりを裏付ける、なんだかすごく説得力のある出自でした。でもそれだけじゃないっぽい?

 

そんな雪緒が出会っていく人々もまた面白いキャラクターの人物ばかり。

ダントツで変なのは夜鳴川さん。
彼のミタマ様至上主義っぷりに「ははーん、さてはミタマ様って化猫か何かでしょ!」と最後まで疑っていたのに。まさか何もないとは。
え、マジでただの猫なの?ということは夜鳴川さんも本当にただの先進的な猫様の奴隷だったの??
この人もまた時代を間違えて生まれてしまったのか。
今の時代だったらSNSを駆使してミタマ様の偉大な愛らしさを思う存分に布教できただろうに。惜しかったですね。

 

個人的に一番お気に入りなのは蜂月さん。
この面倒見の良さと義理固さは、跡継ぎの器があると思うんだけどなぁ。
誰の記憶にも上手く残れないというのは寂しそうですよね。だから雪緒を気にかけてくれるんだろうなぁ。
雪緒と蜂月の掛け合いがなにげに好きでした。ボケとツッコミの塩梅が良かった。

 

そして蛇状態でも可愛かったヒロイン・宵姫
でも蛇の女の子は怖いって知ってる。
討ち入り時にどんどん雪緒の扱いが変わっていき、最終的に夫になっていたけど(そこまでの関係は築いてなかったよね!?)、彼女も清姫レベルのヤンデレに育つのでしょうか。どちらにせよこれはもう逃げられない。怖い。
てかそういう子だって分かっているのに飄々と受け入れている雪緒はやはり器が違う・・・!

 

どっぷりと大正ファンタジーを楽しめる良い作品でした。
続刊を楽しみに待ちたいと思います。十六夜の他の息子たちも登場しないかなー?

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「妖姫ノ夜 月下ニ契リテ幽世ヲ駆ケル /渡瀬草一廊」への2件のフィードバック

  1. コメント失礼します、真白優樹です。些細な事ですがヒロインの名前は宵月ではなく宵姫でございます。月が名前に付くのは蜂月さん始めとする男性陣です。

    みかこさんならきっとこのラノベを楽しまれると思っていました(握手を求める)。 本当、雪緒君ってとんでもない主人公ですよね。澄ました顔で想像を簡単に飛び越えていくといいますか。妖達が振り回されたり呆れたりするのもある意味納得かもしれません。彼の正体は一体何なのか。個人的な予想ですが、金平糖の効き目が凄まじいのを見ると、何か強力な妖の転生した姿な気がします。

    そんな彼の周りを囲む一癖あり過ぎる男性陣。まさかミタマ様が只の猫だとは思わなかったので驚きました。果たして如何にして夜鳴川さんと彼は出会ったのやら。蜂月さんもあんな感じでしたが頼りになる大人でしたね。今後、婿入り問題関連等で力になってくれそうな気がします。・・・まぁ雪緒君なら彼の力を借りずとも他の兄弟全員投げ飛ばしてしまいそうな気もしますが。

    そして彼を囲む宵姫様を始めとする魅力的なヒロイン達。宵姫様、可愛い上にお強い。父親の頭を潰せる程の力があるのはやはり神格持ちだからなのか。そう考えると、宵姫様に絡みつかれた雪緒君には宵姫様の何かしらの加護がかかってもおかしくない気がします。・・・まぁ雪緒君の場合、宵姫様を受け入れているというか流されてるだけな気もしますが。人並みに困惑したりしてますし。彼の場合、宵姫様との結婚が本格的に決まってもではそういう事でと受け入れる気もしますが。ただ、彼を狙って絡新婦が糸を伸ばしている気も。糸締様も雪緒君を完全にロックオンしてますし、これから化猫堂に糸締様が入り浸ってワザと珈琲で酔っ払って雪緒君に迫り宵姫様大激怒、な展開もあってほしいものです。宵姫様は独占欲が強そうですし。あと忍者の火玻璃さんも辱めた責任を取れ、みたいな感じで来たら収拾がつかない気も・・・。そうでなくとも雪緒君の忍びとしての技に憧れたりするかもしれませんし。

    次巻もあってほしいと切に願う真白優樹でした。

    1. 真白優樹さん、コメントありがとうございます。

      >些細な事ですがヒロインの名前は宵月ではなく宵姫でございます。

      ああーっ、あんなに覚えやすい名付けなのに間違えるとは、お恥ずかしい!
      ご指摘ありがとうございます。速やかに訂正します!

      >みかこさんならきっとこのラノベを楽しまれると思っていました(握手を求める)。

      (グッと握手)
      雪緒くん、とても魅力的な主人公ですよね。
      ああいう底が見えない感じで、ちょっと得体が知れないマイペース少年、かなり好きなタイプの主人公でした。
      忍者の末裔とはいえ、妖怪用の薬が覿面に効いていたこととか、どうにも何かまだ秘密を隠していそうですよね。本人に自覚はなさそうですが。
      転生はありそう!もしくは先祖返りとか!楽しみですね〜〜

      >そんな彼の周りを囲む一癖あり過ぎる男性陣。

      ですよね。ミタマ様がただのお猫様っていうオチ、驚きますよね(笑)
      夜鳴川さんの心酔具合で、何か裏があると思ったのに・・・!ただの下僕・・・!
      蜂月さん、苦労症のお兄ちゃんな感じが良い感じに気安くて良キャラでしたよね。妖怪世界の知識に疎い雪緒くんの頼もしいアドバイザーになってほしいなって期待しています!

      >そして彼を囲む宵姫様を始めとする魅力的なヒロイン達。

      宵姫さまの加護・・・・・・それなんて呪い・・・・・・あっ
      雪緒くん、あれは流されやすいのか、それともそれくらいで彼の心は揺らがないから全部受け入れるという包容力ゆえなのか。良いカップルになりそうではありますが!笑
      糸締さま、雪緒くんと宵姫さまを二人揃って娶ろうとしてるっていうの、めちゃくちゃ意味不明すぎて笑ってしまいましたもん。まだまだ絡んできそうですよね。楽しみ。
      雪緒くんは今後も色んな妖怪たちをタラシ込んでいきそうなので、宵姫さまの嫉妬は止まることがないんですよ!きっと!笑

      本当に面白かったのでシリーズ化してほしいですよねぇ。
      一緒に楽しみに待ちましょうね!

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