彼女が俺を暗殺しようとしている /大平しおり



彼女が俺を暗殺しようとしている (電撃文庫)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年9月刊。
高校入学直後に出会った女の子に一目惚れ。彼女も自分を好きだという。
しかし彼女の手にはカッターナイフ。そうして次から次に襲いくる命の危機。
いったい何が起こっているのか。彼女の殺意はどこに向かうのか。
そういうサスペンスな青春小説でした。デッド・オア・ラブな話って好き。
コワモテゆえに誤解されやすい主人公の語り口も元気がよく、読んでいて楽しかったです。
ただ、オチは途中で察してしまうし、終盤の展開が一部ちょっと雑だったことも惜しいかなぁ。

☆あらすじ☆
待ちに待った初デートの日、俺は——彼女の愛は殺意だと知った。
「あのね。私とつきあってくれる?」
美少女に告白された。ヤンキーに絡まれがちな日常から抜け出すため、元お嬢様校である杏子ヶ丘学園高等部に進学した俺は、ついに初彼女をゲットしたのだ。
これで夢にまでみた幸せな高校生活が送れる、そう思っていたのに——
「ハルくんのことが好きだから。永遠に自分のものでいてほしいって、思うでしょ?」
なぜ、俺は初デートで彼女に殺されかけているのだろう?
衝撃の結末から目が離せない。これは、不器用なふたりの愛と殺意の物語。

以下、ネタバレありの感想です。

 

元お嬢様学校に入学したコワモテ少年・日並陽
なぜか昔から不良と誤解されやすい陽だったが、心機一転、男子の少ない学校で平和に過ごしたいと意気込んでいた。
そんな彼の前に現れたのは同級生の綿貫弥宵
かつて陽に助けられたことがあるという弥宵の告白を受け、陽は初めての彼女を手に入れることに。
しかし初デートで弥宵は陽を殺そうとカッターを振りかざして―― というストーリー。

 

透明感のある儚げな美少女が、「あなたは私と運命で結ばれているの。誰にも渡したくない。永遠に自分のものでいてほしい。心配しないで、私達だけは死んでも会えるから。だから死んでも関係ないでしょう?」とかうっとり言いながらナイフ構えて迫ってきたら、・・・・・・どうしよう、興奮しません??

殺したいほど愛してる。愛してるから殺したい。

そういうのって正直めちゃエモい。
もちろんフィクションに限るけれど(こう書かないとリアルで求めてるんだろとか言われかねないので予防線)、すべて壊し尽くしそうな愛情の闇って、なんというか、見てはいけないものを見るようで、背徳感にゾクゾクとする。
倫理的に絶対に許されない愛し方だからこそ、その愛の末路が気になって仕方なくなるんです。

 

というわけで本作のヒロインである弥宵ちゃんは、そういう感じの女の子。
本当にそういう女の子なのかについては、割と序盤から「ん?」と引っかかる箇所があり、その違和感は話が進むにつれてどんどん大きくなっていくのだけど。
うーん、これ、割と手垢がついたネタなので早い段階でオチを察した人は多そう。
弥宵の神出鬼没っぷりとクラス内での不自然な佇まいを見れば、まぁ、ね・・・・・・

 

その上で本作独自の面白さについて考えると、良かった点と微妙な点が半々といったところでしょうか。

 

良かった点は主人公のキャラと彼にまつわる伏線の数々。
初彼女がサイコパスなヤンデレだと気付いて絶望する陽。
希望いっぱいの高校入学から一転、疑惑と殺意と混乱の渦に巻き込まれていく陽には同情が止まりませんでした。
今までどんな人生を送っていたらここまで他人に信用されない人間になってしまうのか。
そう思わずにいられない状態なのだけど、実はそこに色々と秘密があり、その伏線回収がとても面白かったです。
「奇行が多い」という理由で家族に信用されないのも、幼馴染が全然話を聞いてくれないのも、警察が疑いの目で監視してくるのも、唯一の男友達がなぜか彼の考えに懐疑的だったことも、すべて理由があってのこと。
これらの謎が終盤でするりと紐解かれていくのは気持ちが良かったです。

 

陽くん自身も良キャラなんですよね。
理不尽な状況でもツッコミを忘れない語り口は楽しかったし、弥宵に振り回され複雑に変遷する恋心も彼の切実さが滲み出ていて良かった。
というか、あれだけ殺意を向けられたら百年の恋だって冷めるのは普通だろうに。
そんな自分に一抹の罪悪感を覚えるあたり、根っからのお人好しだよなぁ。
これはまぁ色々とやばい人に懐かれるだろうな・・・という謎の説得力がありました。

 

微妙な点は終盤で明らかになる真犯人のこと。
それ自体は良いんですよ。初登場時から存在感のある子だったし、展開に納得はできた。
でもなぁ〜〜〜
もうちょっと彼女の掘り下げがどうにかならなかったのでしょうか?
愛情=殺意の部分は弥宵が観覧車の中で語っていたことがそのまま当てはまるってことなのかな?仮にそうだとしてもフォローが足りてない気がした。
最初から愛が殺意に直結していたにしても、もしくは、愛が途中で殺意に変じてしまったのだとしても、彼女自身の中でどういう心の動きがあったのか詳しく知りたかったです。

 

ただ、そういうのは「エゴイズム」であり「相手は記号」「愛も記号」という結論なので、物語上、掘り下げる必要のない部分なのかもしれません。
その愛に語るべき何かはないのね・・・・・・

 

そんな真犯人の歪んだ愛に対して、「生きていてほしい」という愛は健全かつ美しくて尊い想い。
すべてが明らかになれば、弥宵の健気さに胸を打たれます。印象が180度反転した。
出会いから別れが決まっていたという切ないけれど、互いを想う二人の姿が眩しく感じるラストでした。

殺し愛を期待して手に取り、殺し愛だ〜ってニヤニヤしながら読んでいたのになぁ。
私の歪んだ嗜好がうっかり浄化されそうになったじゃないか。

 

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