竜宮輝夜記3 天よ望めよ、恋の久遠 /糸森環



竜宮輝夜記 天よ望めよ、恋の久遠 (角川ビーンズ文庫)【BOOK☆WALKER】

前巻の感想はこちらから


評価:★★★★☆
2019年9月刊。
四竜に愛でられる元奴隷階級の巫女が、天と地に分かれた世界で自分の役目を見定める和風ファンタジー第3弾。
最終巻です。駆け足気味だったけれど綺麗に終わっていると思います。
恋愛要素に関して言えば、前回がハーレムエンドで今回が個別ルート突入といった感じ。
どうなることかとハラハラしたけれど、最後まで楽しめました。面白かったです。

☆あらすじ☆
人が、竜が、世界の在り方が変わっても。心を捧げるのは貴方だけ
竜を統べる姫・斎花である紗良が、星宮より流罪を宣告される。それは竜が守護する世界の在り方を変える事件の始まりだった。人の思惑が竜たちの心を傷つけて行く中、紗良は最後に誰の手を取るのか——和風恋絵巻!

以下、ネタバレありの感想です。

 

突如、星宮によって身に覚えのない罪で流刑に処された紗良。
しかし追放先は故郷である山月府。
気がかりだった故郷の様子を確認できると楽観的に考える紗良だったが、同時に、この流刑は神に呪われた他国の使者と神を軽視する自国の貴人たちが持ち込んだ凶事からの避難であることも理解しており―― という急転直下な展開から始まる最終巻。

 

竜だけを見つめることを使命とし、決して他所見をしないことを誓う「斎花」たる紗良。
その誓いの難しさと重さを、これ以上ないほど突きつけるストーリーでした。

 

竜だけを見て、他の全てに目を塞いでいればいいのか。
それとも、竜を守るためにも、権謀術数はびこる宮中の勢力争いに目を向けなければならないのか。

人と竜の架け橋ともなりうる存在だけに、様々な思惑に巻き込まれ、翻弄されてしまうんですよね。
そんな紗良を竜たちはじぃっと見つめる。
竜珠として溺愛して構い倒すけれど、その裏で、彼らは神の始点から紗良の心根を見極めようとする。
優しいけれど、その優しさに甘えてしまうと失望されてしまいそうな緊張感。
紗良は竜たちに甘やかされるけれど、竜たちに甘えてはいけないんですよ。
彼女はあくまで甘やかす側の存在。
荒ぶる神をなだめすかしてご機嫌をとりつつ、その安寧を祈り続けなければならない巫女なのです。

 

そうやって紗良は自分の役目を必死に見定めようとするけれど、一方で、自分たちが何をしようとしているのか理解できていないのが天上に住まう貴人たち。
星宮の苦労人っぷりが偲ばれます・・・・・・いや本当にこのひとはすごい。もう少し早く生まれていれば、と惜しまれるのも分かる。
紗良は巫女として竜側に立つけれど、星宮は帝として竜と人の間に立つ。そのバランスのとり方は紗良より難しいはず。
そうして必死に駆けまわった結果は、彼にとって良いものだったのかどうか。
まぁいずれ天と地がひとつになる日がきても、星宮であれば上手いこと仕組みを整えられそうです。
じゃないと今度こそ人は天から見放されてしまうのだろうな・・・・・・

 

ある意味バッドエンドみたいなラストでしたが(結局、いずれ榔月府は落ちるし、竜たちはバラバラになるし・・・)、なんというか、神話時代の終わりの始まりを見るような、途方も無い読後感でした。
ここまで神様たちに甘やかされたくせに恩を忘れた人間は自分たちで頑張って生きていくしかないんだよ。
星宮の在位期間が猶予されるといっても数十年らしいし、それで榔月府の人々が山月府の環境に身体を適応できるかは不明だけど、まぁダメならダメで諸悪の根源が一掃されるだけだしね(無慈悲)(だが自業自得)(とは言え無辜の人々には生き抜いてほしい)

 

そんな感じで割と容赦ない結末を迎えたものの、紗良の恋についてはハッピーエンド。
なんだか3巻で急速に由衣王ルートに入りましたね。いや、最初から由衣王がメインヒーロー的に描かれてはいたけれど。
竜と人が恋できるのかについては人に恋する由衣王はちょっと変わってるね、くらいのノリで流されたので少し残念。
まぁ色々と巻きで話が進んでいったので仕方ないのでしょう。

 

そもそも、これは紗良と由衣王の恋の物語というより、紗良と四竜の愛を描いた物語なのかも。
他の竜の気持ちは「恋」ではないけれど「愛」ではあるから。愛でる的な。
四竜との絡みは最後までとても楽しかったです。心の声がバレたシーンはめっちゃ笑った。

 

糸森さんの創り出す世界観が本当に好きだと実感できる、読んでいて楽しい和風ファンタジーでした。
次回作も楽しみに待っています。

 

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