世界は愛を救わない /海老名龍人



世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫 え 1-2-1)【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年9月刊。
ある目的のために、ちょっとした能力を使って「世界征服」を目指す幼馴染3人組の物語。
恋愛観のお話ですね。
迷走する少年少女の心の変化と、そのきっかけを与える特殊能力の使い方が面白くて良かったと思います。
ただ、うーん、序盤が一番面白かった感じはある。ネタがバレバレだからかな・・・・・・

☆あらすじ☆
壇上貫地と石野美香、そして僕、阿久津吾郎は、幼なじみで文芸部に所属していて――ちょっと特殊な力を持っている。超能力と呼ぶにはおこがましく、マジックと呼ぶにはつたない、その程度の特殊能力だ。ゲームで言うバグのようなその力を、僕らは“グリッチ”と呼んでいる。その力を使って、僕らは世界征服を目指している。冗談に聞こえるかもしれないが本気だ。僕たちが抱えているそれぞれの事情を考えると、世界を征服しないと救われないのだから――。
新たな愛の形を描いたちょっと不思議な新感覚ラブコメが登場!

以下、ネタバレありの感想です。

 

日常では普通しない特殊な動作をトリガーとする、ちょっとしたバグ技のような特殊能力「グリッチ」
その能力を使って自分たちの望みを叶えるために「世界征服」を目指す幼馴染の吾郎、美香、貫地の3人組は、ようやく彼らの望みに繋がるグリッチの持ち主・開田環子を見つけ出す。
開田の協力を得ようと奔走する3人組。
一方で、開田は彼らが抱える事情を知っていくことになる―― というストーリー。

 

受け入れられない恋に悩む高校生のお話でした。
グリッチとか出てくるけれど、基本的にはどうやって自分の感情に向き合っていくのか、という真面目なテーマの青春小説だと思います。

 

開田の能力はそれを考えるきっかけであり、彼らにとってある種の救いをもたらす「ズル」でもある。
その「ズル」を実際に使うのか否か、という葛藤は面白かったです。
その葛藤そのものが、自分の心と向き合うことに繋がっているので。

 

結局、貫地以外は「ズル」せずに自分の意思で恋と向き合ったのだけど、個人的には貫地にもズルしてほしくなかったなぁ。
小児性愛だから問題を起こす前にサクッと終わらせたというのは分かるけど、せっかくなら「子ども」が好きなのか「その子」が好きなのかをきちんと掘り下げてほしかったんですよね。どちらにしろ許されないとしても、そこを考えることに意味はあると思う。
まぁ、それは吾郎が向き合うべき問題だったから貫地では省略されたんでしょうけど。

 

このあたり、性的指向あるいは性的嗜好の異なる3人を描くには少しキャパオーバーだった印象を受けました。
ページ数的に一人ひとりを丁寧に掘り下げる余裕はないからなぁ。
余裕がない割に3人がどんな相手を好きなのかという話はもったいぶるんですよね。あれはちょっと微妙でした。
「松本先輩」の叙述トリックとか使い古されているからすぐ分かるしなぁ。
そこはサクッと明かして、美香がどんな恋をしているのか掘り下げてくれたほうが私は楽しめた気がします。

 

美香の恋もそうだけど、吾郎にしても貫地にしても「許されない相手を好きになった」という現在の気持ちは描くけれど「なぜその人を好きになったのか」という原点の話については描写があっさりしてるんですよね。勿体ない。私的にはそこが大事なので。
彼らにとってどれだけ大切な恋なのか教えてくれないと、彼らの苦悩の深さを理解しきれないし、それで「世界征服だ」とか大げさなことを言われてもピンとこないんですよね・・・・・・

 

そういう引っ掛かりはあったものの、それぞれの「恋の結末」自体は良かったと思います。
貫地だけは不満だけど、吾郎の失恋も美香の失恋も二人がこれからも前を向いて生きるために必要な通過儀礼だったと思える。
たくさん苦しんで、「ズル」を使うべきかも悩んで、それでも自分の恋を自分の意思で昇華できた二人。
彼らが次に進めてよかったな、と素直に思えるラストでした。

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