宝石商リチャード氏の謎鑑定9 邂逅の珊瑚 /辻村七子



宝石商リチャード氏の謎鑑定 邂逅の珊瑚 (集英社オレンジ文庫)

評価:★★★★☆
2019年8月刊。
アニメ化決定おめでとうございます!超びっくりした!!
あわせてコミカライズもスタートするらしく、シリーズは今まさに絶好調ですね。
どんどん売れてほしい。そしてぜひ「螺旋時空のラビリンス」を劇場アニメ化してください。

さて、肝心の本編は、なんというか、嵐の前の準備回という感じ。
新章に入ってから、本当に丁寧に「愛」について掘り下げていきますね。
誰かに対する途方もなく巨大な感情を、どんな言葉で形にすればいいのか。
こんな関係なんですよ、と説明することの難しさにめまいがします。
色々と動き出した第9巻。いよいよ次は2桁に突入ですね。楽しみです。

☆あらすじ☆
この世界にはさまざまな愛が溢れている。
滞在していたスリランカの戒厳令発令をうけ、日本に一時帰国していた正義だったが、帰国前にある人物から連絡を受けていた。その人物の要望もあり、正義は日本滞在もそこそこに、ヴィンセントに会うため香港へと飛んだ。かつてリチャードを裏切っていたはずなのに、なぜか正義を助けてくれるヴィンセントの真意とは?そしてリチャードと再会した正義は・・・・・・?

以下、ネタバレありの感想です。

 

クリスマスケーキもお釈迦さまのお茶もハラル・カレーも全部おいしいのだから、対立なんてないにこしたことはないだろうに、何故そんなことになる。

宗教対立に対する正義の素朴な疑問が「そういう問題じゃない」と思いつつも実感をもって「なんか分かる」となるのは、私も宗教に大した思い入れのない人間だからなのでしょう。

美味しいもの、美しいもの、面白いもの。そういうものだけで世界が溢れて幸福になればいいのに。
でも世界はそうならない。

だからこそ、なのかな。
どうあっても逃げられない複雑で移ろいゆく世界で生きるために、シンプルで不変な心の支えを欲するのかも。

シャウル師匠の宗教哲学、とても素敵でした。
そうやって割り切る境地に至るのがまた難しそうではあるけれど。

 

さて、不安定になったスリランカを脱出した正義は、日本に帰ってきて一息つくも、あっという間に香港へ。
なんとタイムリーな・・・・・・いや、偶然なのだろうけれど。

なんだか正義が根無し草っぽくなってきましたね。
日本に帰ってきて懐かしさを覚えると同時に「異邦人」となった自分に混乱する姿に、正義の成長と変化を感じます。
これもう役人になるとか無理では・・・・・・英語と日本語で人格が切り替わるとか言ってるけど、英語版の自分の方が断然息しやすそうじゃん・・・・・・

と思ったのだけど、英語版の自分は一から自分で築いてきた人格だから、感情や思考の調整がききやすいと。なるほどなぁ。
「シンパシーの膜」も面白い概念でした。

 

そんな個人的な雑感は置いといて。

 

今回もまた様々な「愛」の形に思いを馳せる内容でした。
色々な愛の形があって、その伝え方があり、受け取り方があり、誰かと誰かの関係を説明する言葉も無数にある。
言葉で簡単に説明できないような関係だってある。

なかでも、正義と谷本さんの会話が印象に残っていて。
あのシーンとても好きです。
振った振られたとかいう話ではなくて、「友達」として自分たちがこれからどういう関係を続けていこうと思っているのかを、真摯に話し合っている。
正義の片思いからはじまった関係は、恋愛には結びつかなかったけれど、今はもっと大きくて優しい感情を二人で共有できている。
良い関係だな、と素直に思います。「恋人ではない特別に好きな人」っていうの、たぶん本人たちにしか理解できない距離感だと思う。それがまた特別感があって良いなって思いました。

 

でもあそこ少し身辺整理っぽいですよね。正義の恋がはっきりと終わったな〜。
これはやはり終盤のリチャードとの会話に繋げるためだったのでしょうか。

 

「ひょっとして、付き合っていないつもりだったのですか?私とあなたが」
ひぇっ、という風のような音が、喉の奥で聞こえた。

 

ひぇっ・・・・・・

 

あのシーン、正義がぐるぐるぐるぐると目まぐるしく思考を巡らせているんですが、ごめん、よくわからない・・・!
私の貧弱すぎる読解力と、狭すぎる価値観が露呈して辛い。
ラストの二人のやりとりに、で!付き合うの!?違うの!?と問い詰めたくなるんだけど、これはそういう話じゃなくて・・・・・・リチャードを守ろうとする正義の愛情の発露で・・・・・・たぶん・・・・・・わからん・・・・・・結婚嫌がって泣いたり慰めるためにデコチューしたり・・・・・・わからん・・・・・・

 

ただ、正義が世界の何よりもリチャードを大切に想っていて、幸せにしようと必死になっているのは分かる。
きっと誰かを思う気持ちを理解するのは、それだけで十分なのでしょう。
無理に二人の関係を枠に押し込めようとするから混乱するのだ。
(と、毎回そう思うんだけどリチャードと正義って恋愛方向への匂わせが多くて余計に混乱するのだよ・・・!)

 

さて、ラストでついに動き出したオクタヴィア。
彼女が何者なのか、ようやく語られる様子にワクワクします。
そして、リチャード&正義の反撃はなるのか?次巻も楽しみです。

 

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「宝石商リチャード氏の謎鑑定9 邂逅の珊瑚 /辻村七子」への2件のフィードバック

  1. 初めまして。紫桜と申します。
    「付き合う」のくだり…私も同じような感想を持ちました。自分が言いたかった事が書いてあって思わず嬉しくなってコメントしてしまいました。

    1. 紫桜さん、コメントありがとうございます。はじめまして!

      「付き合う」のくだり、感想に共感いただけて嬉しいです〜(^o^)
      あの場面は混乱とエモの極みでした。
      なんかよくわかんないけど尊い・・・とか思ってました(笑)

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