Cocoon 修羅の目覚め /夏原エヰジ



Cocoon 修羅の目覚め【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★★☆
2019年8月刊。
吉原一の花魁にして、江戸の街に現れる「鬼」を討伐する組織の長。
男たちを惑わす美しさと、鬼に対抗できる強さを両立させた、とても格好いい女主人公でした。
華やかでありながら男女の愛憎が渦巻く吉原の世界も耽美的。
表紙にピンときた和風FT好きの方なら、読んで損はないと思います。
しかもシリーズ化決定済みで第5巻まで出るらしい。今後も期待できそうな新作です。

☆あらすじ☆
戦う花魁。シリーズ、開幕! 第13回小説現代長編新人賞奨励賞受賞。
天明期の江戸・吉原。大見世である「黒羽屋」の最高級遊女・花魁として名を馳せる主人公の瑠璃は、江戸に跋扈する鬼を滅する闇組織・黒雲の頭領という裏の顔を持っていた。彼女は妖刀・飛雷を操り、恨みを強く抱いて死んだ者がなる「鬼」を退治するのを任務としていたのだ。
遊女の身でありながら自由な立場と権力を有するその強い力に惹かれ、様々な妖が瑠璃の下に集まることもしばしば。
黒羽屋で若い衆として働きながら瑠璃を支える黒雲のメンバーに裕福な太客たち、仲の良い朋輩にも恵まれている瑠璃だが、己が持つ尋常ならざる力と鬼に対する嗜虐的な思考に苦悩もしていた。
そんなある時、親友でもある朋輩が失踪した。

以下、ネタバレありの感想です。

 

物語の舞台となるのは、天明期の江戸・吉原。
大見世「黒羽屋」の花魁・瑠璃は、吉原一の売れっ妓であり、また、江戸の夜に忍び寄る「鬼」に対抗する組織「黒雲」の頭という顔を持つ美女。
花魁としても黒雲としても忙しく働く日々を送っていた瑠璃は、親友の遊女・津笠の失踪をきっかけに、己に隠された秘密を知ることになるのです。

 

まずカバーイラストがとても良い。
ジャケ買いだったのだけど、内容もピッタリ合ってて大満足でした。
美しく着飾った花魁が日本刀を振り回す姿には倒錯的な色気を感じます。
いや、鬼退治するときは黒の着流し男装スタイルだから、あの重そうな花魁姿で戦うわけじゃないんだけども。

 

花魁でありながら、鬼退治のプロでもある瑠璃。
傾城と讃えられるほどの美しさを持ち、匂い立つような色気で男を惑わす一方で、素顔の瑠璃は勝気でサバサバとした気質。

瑠璃って、「苦界の女」に想像するような暗さがないんですよね。
それは彼女に闇がないという意味ではなくて、なんだろう、他の遊女たちと同じ場所に立っていない感じというか。
他に収入源がある黒雲の長だということや、色々とワガママが通る吉原の「お姫さま」だとか、賑やかしな妖の友達がたくさんいるとか、そういう環境的な要素もあるのだけど、それだけじゃなくて。

浮世離れしている、というのが一番しっくりきます。魂が吉原に囚われていない。
だから遊郭のなかで快活に笑えるし、清らかなほど真っ直ぐな気性でいられるのかなって思うんです。

そういう印象を割と早い段階で抱いていたので、ラストで明かされる瑠璃の正体にとても納得できました。

 

個人的には、「遊女主人公ってどうかなー?主人公が絶望の淵にいるような話だと読むの辛そうだなぁ・・・」と身構えていたので、瑠璃のキャラクターのおかげで物語が楽しみやすくて助かりました(笑)

 

ただ、そういう例外的な遊女は瑠璃だけ。
美しく咲き誇り、用が済めば簡単に打ち捨てられる吉原の女たち。
冒頭の「吉原の桜」の話がとても象徴的でした。
見た目に華やかであればあるほど、そこに潜む闇も深く、その陰影にこそ心が惹かれてしまうのかもしれない。

 

浮世離れした瑠璃であっても逃げられず、むしろ瑠璃だからこそ逃げられなかった吉原の闇。
それは、瑠璃が叶うならば避けたかった戦いをも生んでしまうのです。

花魁と鬼退治ってめちゃくちゃ相性が良いんだな、とラストバトルを読んで改めて思ったり。

美しい袷姿に前帯を締め、髪を綺麗に結い上げた、哀しい鬼。
対するは、血で染まった白無垢を纏う誰よりも美しい花魁。

とても切ない話だし、状況はかなり酷いし、決死のバトルは白熱してるんだけど、それを全部ひっくるめて幻想的なんです。なんかもうドキドキしてしまった。

 

その戦いの末路はどうしようもなく、誰からも愛された遊女は全てを踏みにじられてしまったけれど。
それでも瑠璃に救えたものがある、と分かるラストシーンに泣けてきました。
裏切りと嫉妬が渦巻く地獄みたいな話だったけれど、瑠璃と津笠の友情だけは真実だったのだと、そう思えることがとても嬉しい。

 

さて、本作はなんと第5巻までの刊行が既に決定しているとのこと。
このご時世に、かなり自信があるのか??
いや確かにめっちゃ面白かったけれど!

 

今回で瑠璃の正体は分かったけれど、彼女に隠された秘密はまだあるようだし、今後どんな展開をしていくのか楽しみです。
お内儀の秘密とかも気になる。
花魁物語としても鬼退治ものとしてもガッツリ楽しめそうですし、続きをワクワクしながら待ちたいと思います。

 

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