龍のいとし子 /戌島百花



龍のいとし子 (富士見L文庫)【Amazon】【BOOK☆WALKER】

評価:★★★☆☆
2019年8月刊。
ああ、これ、評価に迷う・・・!
設定も展開も好きだし、異種恋愛譚としての美しさもあったし、序盤からアクセル全開なテンポの良さも大変良かったです。
ただ、あまりにも感情面の進みが早い。
妖怪に命を狙われる逃避行のなか、高い場所から為す術もなく落ちていくように、急速に少年に惹かれていく主人公の恋。
心情描写は丁寧なんだけど、あまりにも変化が早すぎて「えっ、もう!?」という気持ちがあって。
なんかこう、あと100ページほしかった感。
一方で、お相手の想いの方は満点あげたいレベルだし(だから評価に迷う)、物語全体を流れる切なくも優しい雰囲気が素敵な作品でした。

☆あらすじ☆
美しき人外と少女の、禁忌の恋の物語——。
平凡な大学生の柚葉の前に、突然、清冽な美貌の男子高校生が現れる。「貴女を、守りに来ました」そう言って異形に襲われた柚葉を助け、二人の逃避行が始まる——美しき人外と少女の禁断の恋愛ファンタジー。

以下、ネタバレありの感想です。

 

疎遠だった父の葬儀の日、女子大生・宮松柚葉の前に現れたのは、父の弟子を名乗る少年・織本周だった。
「貴女を守りに来ました」と言う周の言葉を証明するように、突如として見えるようになった妖怪に襲われた柚葉。
拝み屋だった父を恨む妖怪たちに命を狙われる柚葉は、妖怪を見ることができる「目」を再び封じるため、周と共に慌ただしく旅立つことになるのです。

 

この序盤から急転直下な展開、とてもドキドキしたし、物語の世界に一気に引き込まれました。
とにかくダラダラしないんですよね。常に全力で駆け抜けるように話が進む。
それを「性急すぎる」と思うか、「テンポが良い」と思うかは微妙なところなんですが・・・・・・私はどちらの気持ちもありました。

 

見鬼の才を取り戻した柚葉が平穏な暮らしと周への恋を秤にかけ、恋を選ぶ物語としては、正直だいぶ駆け足だと思いました。
出会ってすぐに惹かれて100ページくらいで恋を自覚して、そこから坂道を転がり落ちるように最後まで自分の恋路を突き進む柚葉。
ドラマチックだし情熱的だと思うけど、早い。早すぎて若干ついていけない。
両親を亡くした孤独や妖怪の襲撃という吊り橋効果っぽさもあるからかなぁ?
そういうの嫌いじゃないんだけど、積み重ねが感じられないから盲目的にも見えてしまって。

 

とは言え、柚葉と周の恋に積み重ねがないというわけでは全くないのです。

 

幼い頃の出会いから始まり、ずっと柚葉を見守り続けてきた周。
不可視で不可触の関係でありながら、一途に柚葉を見つめ続けた周の想いはとても素敵でした。
再び繋がりを断ち切ろうとする周の恋はあまりにも美しい。人と人外が恋をすることの葛藤に苛まれる姿も切なくて。

周の恋は、人に恋した龍の苦しさがひたひたと降り積もるように描かれていたと思います。こういうの好き。

 

柚葉の恋も、スピード感が気になっただけで、その恋自体は良いんですよね。
周の過去を知ってますます想いが加速するのも分かるし。

 

思えば、自分の想いを切り離して柚葉の幸せを考えようとする周と、周への恋さえあれば幸せだと言い切る柚葉の、対照的な恋の在り方も印象的な話なんですよね。
ああ、そういう観点に立てば、じっくりと時間を積み重ねた恋心と、刹那に生まれて勢いよく育つ恋心という対比も成り立つのか。

 

むーん、色々と書いてみたけれど、総合すると評価が難しいなぁ。
ハッピーエンドなのに物哀しさを残すラストシーンとか、めちゃめちゃ好きなんですよ。
必ず残される側になる周の寂しさと、それでも今を幸せに生きようとする姿が胸を締め付けるから・・・・・・

でもやっぱり「早いなぁ」という最初の引っ掛かりが拭えず。

もう少しだけ長い尺で読んでみたい作品でした。

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